なっちゃんとハル
その後すぐに担任の先生がやって来て、詠君は前を向いた。
残念。もう少し話したかったな。
そんな事を思いながら時々詠君の背中を盗み見ていた。
入学初日はお昼前に帰宅出来るらしい。
母はどうせ真緒と帰るんでしょ、と言って鞄以外の荷物を持って帰ってくれた。
しばらくして真緒は二人の女の子と一緒に私の席にやって来た。
私がキョトンとしていると真緒はすぐに二人を紹介してくれた。
「柏木奈津子ちゃんと山瀬春菜ちゃんだよ。ほら、私が塾で仲良くなったって言ってたなっちゃんとハル。」
そういや聞き覚えある。
「はじめまして。えっと…私もなっちゃんとハルって呼んでいいのかな?」
「当たり前じゃん!!」
なっちゃんがニカッと笑った。
なっちゃんはショートカットで背が高い。
ボーイッシュなんだけどでも凄く美人だ。
「じゃあうちらもあーちゃんって呼ぶね。」
そう言ったのはハル。
ハルは黒髪ストレートのロングでメガネをかけている。
文学美少女って感じだ。
こうやって見たら私って本当地味だなぁ。
真緒は昔から割と派手でいわゆるギャルってヤツだ。
いつも当たり前みたいに一緒にいたけど、全然釣り合って無いんじゃ…。
軽く落ち込んでたらなっちゃんがニコニコ笑いながら話しかけてきた。
「うちらさぁ、真緒からずっとあーちゃんの話聞いてて本当に会いたかったんだよねー。本当美人だね!!ビックリしちゃった。」
え?誰が?
「堀北真希っぽいでしょ?」
「分かるー!!かなりモテたんじゃない?」
「幼稚園の時から隠れファンはかなり多かったんじゃないかな?けど高嶺の花過ぎて誰も言い寄ってこないんだよねぇ。私も親友ってだけで鼻高々ですよー。」
え?ちょっと…。
「ま、待って。誰の話…」
「あーちゃんに決まってんじゃん。」
「…えぇえええーーーーー!!!!!?????」
思わず絶叫した。
「なななな何言ってんの!?私なんて地味だし何の特徴も…。」
「あーもー、だからあーちゃんは可愛いんだってば。」
真緒はあきれ笑い。
「こんだけ美人なのに自覚無いの?私だったら自信満々になっちゃうよー。」
そう言うなっちゃんにハルもうなずいている。
「まぁまぁ。そこがあーちゃんのいいとこだとは思うんだけどさぁ。」
皆でワイワイやってるとずっと前の席で友達と話していた詠君が鞄を持って立ち上がった。
「朝陽、また明日ね。」
「あっ…うん、また明日。」
爽やかだなぁ…。
しばらくぼーっとしてしまいハッとするとニヤニヤしている3人の視線に気が付いた。
「な…何?」
「なになにー?あーちゃんが男子と挨拶なんて珍しいじゃん。」
「友達になったんだよ。」
多分…。
「キレイな顔してたねぇ。」
「まさかナンパされたの!?」
「違うよ!!どっちかって言うと私から声かけたっていうか…。」
そう言うと真緒は目をまんまるにして本気でビックリした。
「マジ!?あーちゃんが!?…ついにあーちゃんにも初恋が訪れたかぁー。」
「そんなんじゃ…」
あたふたする私を置いて3人は盛り上がってしまった。
これじゃ明日から詠君の顔見るの恥ずかしいじゃんか。