出会い
笹本朝陽、16歳。
この春に高校生になった。
「あーちゃん、こっちこっち!!」
私を呼ぶのは幼稚園の時からの親友、市川真緒。
彼女はクラス分けが書いてある掲示板の前で私に手を振っている。
「クラス一緒かなぁ。」
「それも重要だけど、イケメンがいるかも大事でしょ!!」
「真緒はそれだけでしょ。」
「まーねー。」
真緒は人懐っこく、誰とでもすぐに友達になれるタイプ。
だけど私はあんまり積極的じゃないから真緒と一緒じゃないと正直不安だ。
「一緒じゃん!!D組だってー。」
真緒の声で思わず安堵のため息が出る。
“一年D組”のところを見るとちゃんと真緒と私の名前があった。
それと同時に私の前に書かれてある名前が妙に気になった。
“佐枝詠”
さえだ…えいって読むのかな。
男の子かな。女の子かな。
キレイな名前だな。
入学式終わったら勇気出して聞いてみようかなぁ。
式典中、そんな事ばかり考えていた。
入学式も無事に終わり、教室に向かった。
出席番号順に並んでいるから真緒とは離れてしまった。
真緒は廊下側の後ろから2番目。
私は教室のほぼ真ん中くらいになってしまった。
だけど私の前の席には“佐枝詠”が座っている。
男の子だ。
女の子だったら聞きやすいのにな…。
だけど人見知りよりも興味の方が上回ってる。
私は勇気を出して佐枝君の肩を軽く叩いた。
「何?」
振り返った顔はやたら綺麗で、本当に綺麗で、私の緊張はMAXになってしまった。
「あ、あの…」
「何?」
今度の何?は凄く優しい。
「佐枝…君ですか?」
あ、クスッて笑った。
「そうだけど?」
「あの…えっと…さ…佐枝君の名前って…あの…何て読む…の?」
わぁん!!上手く喋れない!!
恥ずかしくて顔が赤くなる。
佐枝君はまたクスッと笑って
「さえだ、よみ。」
と答えてくれた。
「どうしてそんな事聞くの?」
そりゃそうだよね…。
「さっきクラス分けの掲示板見た時にキレイな名前だなって思って…。」
私何言ってんの?
恥ずかしい!!
「そうかな?変わった名前だとは思うけど…でもありがとう。えっと…笹本、あさひ、で合ってる?」
「う、うん。」
「良かった。間違ったらどうしようって思った。」
笑った!!
可愛い…。
「あ…あのね、」
「何?」
「詠君って呼んでもいい、かな?」
何言ってんの私ー!!
「もちろん。じゃあ俺も朝陽って呼ぶ。」
う、嬉しい!!
「これからよろしくね、朝陽。」
「うん!!」
こうして私は人生初の男の子の友達が出来たのだ。