黒い博物台
僕は恐る恐る博物館の中へと入っていく。
やっぱり気味が悪い。早く終わらせたいが最低2時間もかかる。
そうだ!ラジオをつけよう!
・・・
今思えばここで僕は道を間違ったのかもしれない。
「速報です。先ほどK市で事故が発生した模様です。」
「K市・・・。ここだな。それは気の毒に帰ったら見物してみようかな。」
驚きと好奇を頭に浮かべる。
「えー、ワンボックスカーに中年男性5人がのっており、全員の死亡が確認されています。警察が身元の確認と事件性がないかを確認し、今後も捜査を続ける模様です。」
「ワンボックスカーに中年男性!?まさか!!で、でも先輩方は6人のはず・・・。おかしい。確実に6人ワンボックスに乗ってここを出てった。」
好奇は消え、驚きだけが頭にまとわり付く。
「次のニュースです。…ガガガ…ザザザ…次のニュースです。次のニュースです。ガガガ…次のニュースです。」
「な、何だ?」
驚きは恐怖へと変わり、僕はラジオを消した。
すると前方にすっからかんのはずの博物館に1つだけ黒い博物台があった。
近づいてみるとそれは旧日本兵が使用していた本物の水筒だった。
「そうか。確かここは戦争資料の博物館だった。でも何故これだけが・・・?」
「ザザザ・・・ミ・・・エ・・・セ・・!!!」
いきなりラジオが付き始める。
「な、何だ!?!?」
「ミ・・・ズ!!ミズ・・カエセ!!!!!」
不気味な声。
「うわああああああああああああ!!!!」
僕はラジオを床に投げつけた。
その瞬間に僕は気を失い、気付けば病院で眠っていた。
様子を見に来た管理人が救急車を呼んでくれたのです。
あとから管理人に話を聞くとお寺の人が偶然、博物館に入った所、あの黒い博物台から除霊などでは対処しきれない物凄い殺気を感じたと報告があったそうです。
それからも霊感のある人や別のお坊さん方から博物館を取り壊した方が良いという苦情が殺到しました。
絶対に触れてはいけない。と言われた為、博物台だけをどかすのは不可能。そこでやむを得なく取り壊しを決定したそうです。
すっからかんの博物館の中、あの博物台だけがポツンと佇んでいた理由はそういう事でした。
それから…先輩方はやはり全員亡くなられ、トラックからは5人の誰でもない新鮮な血がついた銃弾が発見されたそうです。
私はその後某神社でお祓いを受けましたが、あのミズカエセという声…脱水症状で死亡した旧日本兵が死後も尚、自分の水筒を探しさ迷っていると言っていました。
そしてあの博物台と水筒、今どうなっているか。それは私にもわかりません。