田舎の博物館
これは私がアルバイターとして働いていた20代前半の時の話だ。
アルバイトの内容は、解体工事の作業。T県K市のとある古い博物館を取り壊す事となった。
とはいっても勿論自分一人で全てやる訳ではなく、
木村先輩、山口先輩、新山先輩、石川先輩、尾崎先輩、それと・・・あと一人・・・。名前は忘れたがもう一人先輩がいた。その6人の手伝いが主だ。
「いや、しかし本当に田舎だなぁ。日も沈んで暗いんだが、辺りには灯1つない。こんな所に博物館なんてなんで建てたんだ?」
木村先輩が不機嫌そうに愚痴を吐いた。
すると石川先輩まで口を揃えて言った。
「懐中電灯1つじゃどうにもならねぇなぁ。これじゃ博物館の中は全く見えねぇし、ここで朝まで過ごすってのも何か気の毒だ。」
「おい、福田。俺ら事務所の仕事があるからよ。先に引き上げてもいだろ。あのワンボックス貸してやるから機器や材料の片付けとかやっといてくれないかな?」
新山先輩がニヤニヤしながら近づいてきた。
現場には、二台のワンボックスがある。先輩5人は片方のワンボックスに乗って事務所に帰り、俺はもう片方のワンボックスで機器を積んで事務所に戻れ。という事だ。
片付けだけなら、すぐ終わるだろ。と思うかもしれないがそうではないのだ。
機器の手入れもあるし、管理人に迷惑をかけないように散らかった材料の掃除もしなくてはいけない。
それを一人でやるとなるとやはり2時間はかかる…。
「わかりました。」
手伝いとはいえ、さすがに面倒臭いし心細いな。でも、仕方ないか…。
それに何かこの博物館、気味が悪い…。早く仕事を終わらせて事務所に戻るとしよう。