【歴史】試し斬り
【問い】 刀の試し斬りの動画を見ると、畳表を巻いたものや畳を斬ります。
昔テレビで見たり、小説で読んだりした切断場面では竹に藁を巻いた物を使用していたとあやふやですが記憶しています。
この変遷についてわかりますか
【回答】 Geminiさん
日本刀の試し斬りの対象物については、時代によって大きな変遷があります。ご記憶の「竹に藁を巻いた物」は、人を斬る機会がなくなった時代に、人体に見立てて考案された、伝統的な形式の一つです。
現在の動画で多く見られる「畳表」を斬る方法は、より現代的な代替物として普及しています。
主な変遷は以下の通りです。
1. 江戸時代まで:人体(死体)による試し斬り
・ 対象:
・ 死体(胴):主に刑死した罪人の死体が用いられました。「死人試し|(しにん
ためし)」と呼ばれ、土台に座らせたり寝かせたりして竹で固定し、特定の
部位や積み重ねた胴を斬ることで切れ味を試しました。
・ 堅物(かたもの):甲冑(鎧兜)や鉄片など硬い物を斬って刀の強靭性を試
す「堅物試し」もありました。
・ 背景: 刀剣が実戦的な武器であったため、その切れ味を直接人体で試すことが行
われていました。
・ 特徴: 斬った部位や胴の数などの結果が「截断銘(さいだんめい)」として刀の茎
(なかご)に金象嵌で刻まれることもありました。
2. 明治時代以降:人体に見立てた「巻き藁」の考案
・ 背景:
・ 1882年(明治15年)に斬罪が廃止され、人体による試し斬りができなくな
りました。
・ これに伴い、刀剣術の鍛錬や切れ味の確認のために、人体に見立てた代替物
として「巻き藁」が考案されました。
・ 伝統的な巻き藁:
・ 青竹を芯にして、その周りに稲わらや俵むしろなどを巻いて水に浸したもの
が用いられました。
・ これは、竹を「骨」、**藁を「肉」**に見立てており、人間の胴の硬さとほ
ぼ同じになるように調整されていたと伝えられています。
3. 現代:畳表や竹入り畳表への変化
・ 背景:
・ 現代では、藁(稲わら)や俵むしろの入手が難しくなり、また、藁は斬り屑
が散るという欠点もあります。
・ 現代の主流な代替物:
・ 畳表(ござ):半畳または一畳分の古畳表を巻いて水に浸したものが最も一
般的に使われています。これを俗に「巻き藁」と呼ぶことが多いです。
・ 竹入り畳表:より難易度を上げるため、あるいは伝統的な巻き藁の形式に近
づけるために、細い青竹を芯にして畳表を巻くこともあります。竹が入るこ
とで、畳表だけのものより難易度が高くなります。
まとめ
時代 主な試し斬り対象物 目的・背景
江戸時代まで 人体(死体・胴)、堅物 武器としての切れ味・強靭性の確認。
斬罪の死体が使用された。
明治以降 青竹を芯にした藁 斬罪廃止により、人体に見立てた代替物
(伝統) として考案。「骨(竹)」と「肉(藁)」
に見立てた。
現代 水に浸した畳表 藁の入手難や、取り扱いの問題から代
(主流) 替。畳表単体のものが最も一般的。
現代 青竹を芯にした畳表 難易度を上げたり、伝統的な「骨・肉」
(応用) の形式を再現するために使用される。
動画などで竹の入っていない畳表を斬っているのは、現代の利便性や入手のしやすさから主流になっている形式であるためです。一方、ご記憶の「竹に藁(または畳表)を巻いた物」は、人体の硬さを再現しようとした、伝統的かつ難易度の高い巻き藁の形式と言えます。




