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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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異05系統 王都北門〜フォライディア大森林循環(右回り)〜王都北門

2023年1月11日にカクヨムで公開したものです。

 深い森の中の一本道。こんな道にもバス停はあって、乗り降りするお客さんも意外と多い。


『次は聖域入口。神の力が宿る癒しのパワースポット、フォライディアの聖域へはこちらが便利です』


 バス停が近づいてくると、ベンチに座っていた一人の少女が立ち上がった。ゆっくりと速度を落として彼女の前でぴたりと停める。


 扉を開くと、少女はびくりと肩を震わせた。それから恐る恐る車内に乗り込む。


「こんにちは。お金はここに入れたらいいの?」


 運賃箱を指差して、不安そうに問いかける少女。

 バスに不慣れなのだろうか。いや、そもそもこの乗り物自体を初めて見たのかもしれない。


「はい。そちらに入れてください」


 異様に耳の長い銀髪の少女が、コインを一枚ずつ硬貨投入口に落としていく。


 この子、めちゃくちゃ可愛いな。

 彼女は私が今まで乗せてきたお客さん史上一番の美少女だ。少なくとも東京でここまでの美少女を乗せた記憶はない。


『ピンポーン』


 精算完了の電子音が鳴る。


「これで平気?」

「はい。それでは席にお座りください」

「どこでもいいの?」

「構いませんが、優先席に座られる場合はお年寄りの方や身体の不自由な方がいらっしゃいましたら席をお譲りください」


 銀髪の少女は頷くと、運転席の真後ろの一人掛けの席に腰を下ろした。


「発車します」


 念のためにアナウンスしてから、アクセルを踏む。


『次はセレンヤードの滝。王国騎士団からのお知らせです。最近、薬草の採集中に魔物に襲われる事故が増えています。採集者の皆様はくれぐれもご注意下さい』



 その日の夜、営業所に戻った私はこの美少女の話を同僚の遠町とおまちはやてにした。そしたらはやては。


「はこび知らんの? そのお客さん多分エルフやで」

「エルフ?」

「えらい長生きな種族でな。若く見えても余裕で百歳超えてるパターンもあるさかい、シルバー割引忘れたらあかんで」


 しまった、あの子に年齢聞いてないや……。

 でも知らなかったのだからしょうがない。


 普通の人は異世界の種族とか知らないのっ! 逆に何でそんなにみんな詳しいの?

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