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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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35/175

異34系統 王都南門〜王城前〜王都東門〜異世界車庫

2023年8月2日にカクヨムで公開したものです。

 営業所行きの最終便の運行を終えた私は、車庫にバスを停めると、車内に忘れ物が無いか、バスの周りに異常が無いかを確かめる。明日に備えて水素の充填をして、売上精算作業も済ませてから営業所の建物へと戻った。


「所長、お疲れ様です」

「おう、はこびちゃんお疲れ〜」


 それからアルコールチェックと終業点呼、各種報告と次回の勤務の確認をして。

 これにて私の今日の業務は全て終了だ。



 制服から私服に着替えた後、私は一度外に出た。

 車庫の隅の方に日本から一緒に転移してきてしまった飲料の自動販売機があり、そこで飲み物を買おうと思ったのだ。


 自動販売機は営業所の敷地内に設置されているとはいえ、車庫側ではなく柵の外を表にしている(つまりは元々歩道があった側)。だから飲み物を買おうと思ったら一旦敷地外に出なければならない。


 街灯もない真っ暗な道の一点を異様なほどに煌々と照らす自販機の明かり。

 その光の中に、ある人物の姿を見つけた。高速バス担当の同僚、遠町とおまちはやて。

 私は軽く右手を上げて、彼女に声を掛ける。


「はやて、お疲れ」

「お疲れはこび。何や、はこびも喉渇いたんか?」

「うん。今日暑かったからさ」


 既に飲み物の缶を手にしているはやてと会話を交わしつつ、私はお財布から出した130ゴールドをコイン投入口に入れる。迷うことなく商品を選んでボタンを押すと、ガシャンと音を立てて280ミリリットルペットボトルが一本下に落ちた。


 取り出し口の透明なフタを開けて中からそれを取り出すと、はやてが何やら言いたげな顔をする。


「何?」


 ペットボトルのキャップを外しながら問いかけてみると、はやては馬鹿にしたような口調で一言。


「りんごジュースって子供かいな」

「は? 別にいいでしょ何飲んだって」


 私が買ったのはニッポンエール長野県産りんご。

 これの何がいけないと言うのか。美味しいじゃん。


「いやいや、はこびも大人なんやからウチみたいにコーヒーとか飲んだらどうや?」

「コーヒーを飲んだら大人なの?」

「そらそやろ。違いが分かる女は立派な大人や」


 そう誇らしげに、変な主張をするはやてがチビチビと飲んでいるのはTULLY’S COFFEE BARISTA’S BLENDの220ミリリットルボトル缶。


 あれ? 違いが分かるってキャッチフレーズ、別のブランドのやつなのでは?

 あははっ。はやて、違い分かってないじゃん。


「ふ〜ん。じゃあはやてもまだまだ子供だね」

「はぁ!? 何でや?」


 意趣返しが出来て満足したところで、私は話題を転換する。


「それにしても、最近はこっちの世界の人もすっかりバスに慣れたみたいだね」


 こちらの発言に、はやてもこくりと首を縦に振る。


「せやなぁ。最初のうちは「何やこの動く箱は!」って驚かれてばっかしやったもんな」

「そうそう。あ、あとさ。バスの運転手は女性が当たり前って思われてるの、不思議な感じしない?」

「あ〜、それは確かにせやな。あっちじゃ女性運転手の方が珍しいもんな」


 異世界営業所には女性の運転手しかいないため、この世界の人たちはバスの運転手は女性が当たり前だと思っているようだが、日本ではまだまだ男性のイメージが強い。


「そういう偏見みたいなん、何て言うんやっけ? なんか横文字の。ほら。アンサンブルコンテスト、みたいな……」

「アンコンシャスバイアス?」

「そう、それや! アンコン何ちゃら!」


 アンコンシャスバイアス。無意識の偏見とも呼ばれる、自分自身では気付いていない物の見方や捉え方の偏りや歪みのこと。

 こういうのは些細な言動や何気ない行為に含まれており見過ごされがちだが、放置するのは色々と弊害があるため最近は様々な企業が研修を実施していたりもする。


 にしても。


「はやてって、吹奏楽部だったっけ?」

「え? ちゃうけど?」

「だよね。じゃあ何でアンサンブルコンテストが出てきたの?」


 アンサンブルコンテストなんて、吹奏楽とか声楽くらいでしか聞かないけど。


「ああ、それはな。吹奏楽部を題材にしたアニメで出てきたからや」

「訊いた私がバカだったよ……」


 そうだった。こいつ重度のアニメオタクだった。


「じゃ、私明日早いからもう寝る支度しないと。おやすみ〜」

「お、おう。おやすみ」


 はやてがアニメについて語り出すと非常に厄介で面倒臭いので、私は足早にこの場を立ち去ることにした。

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