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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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32/175

第31ルート(王都コミュニティバス) 王都北門〜公民館前〜ヤスデリナ四街区〜王城西入口

2023年7月12日にカクヨムで公開したものです。

 この異世界には自動車が存在しない。だから王都の中に大型路線バスが通れるほどの広い道はそう多くない。


 そこで出番なのが小回りの利くミニバスだ。埼京交通バスでも運行エリアの区や市から委託されて、高齢化の進む交通空白地帯にこのミニバスを使ったコミュニティバスを走らせている。


 異世界に飛ばされてしまったこの西新井営業所にもミニバスは数台留め置かれていて、最近はそこそこの頻度で活用されている。

 

 そのミニバスの運転席では、小柄な女性がハンドルを握っていた。

 異世界営業所に所属する三人の運転手の中で最年少の、人見ひとみこころ。

 普段から口数が少なく、お客さんとのコミュニケーションもあまり得意ではないが、運転技術と気配りに関しては先輩の沢山さわやまはこびと遠町とおまちはやてよりも優れている。無論、本人にその自覚はないが。


『次は、ヤスデリナ三街区中央交差点。家のリフォーム、リノベーションならウチにお任せ。ドドヴァーナ工務店へはこちらでお降りください』


 小型のバスでもギリギリの幅の狭い道路の丁字路。こころは華麗なハンドルさばきで簡単に曲がってみせると、ゆっくりとアクセルを踏んで丁寧に加速。この難易度の高いポイントで、ここまで車内の揺れを抑えるのは至難の業だ。誰にでも出来るものではない。


 右に曲がって、左に曲がって。途中、バス停でお客さんを乗せたり降ろしたりしながら、住宅密集地を縫うようにひたすら狭い道を行くコミュニティバス。


『次は王城裏通り。……次、停まります。バスが完全に停車するまで、席を立たないで下さい』


 終点の一つ手前、王城裏通り停留所で乗っていたお客さんは全員が下車した。

 扉を閉め、空っぽになったミニバスは終点へ向かって発車する。


『ご乗車ありがとうございました。次は終点、王城西入口。お忘れ物ございませんようご注意下さい』


 次の角を左に曲がれば終点のバス停が見えてくる。

 ウインカーを出して、十字路を左折。


 すると角を曲がってすぐの道路のど真ん中に、人が突っ立っていた。


 こころは咄嗟にブレーキペダルを踏んだ。

 運転上手な彼女にしては珍しい、急ブレーキ。

 幸い乗客はいなかったため転倒事故などには繋がらずに済んで、こころは内心ホッとする。


 にしても、この人は道の真ん中で何をやっているのです?


 棒立ちのまま停まったバスを見据えるのは、左手に分厚い聖書を抱えた修道女だった。

 随分と端正な顔立ちをしている。見た目は若く、恐らくは十代後半から二十代前半くらいだろうか。


 ふと、フロントガラス越しに修道女と目が合う。

 とても聖職者とは思えない、冷酷な眼差し。


 凍てつくような視線を受けて、こころはクラクションを押しかけていた手を離す。


 しばらくの静止状態の後、修道女がこちらに歩み寄ってきた。

 何か話があるのか、運転席の方へと近づいてくるので、こころは窓を開ける。


「ねえ、ちょっといいかしら?」


 修道女が声を掛けてきた。

 それと同時に、何故か銃口を突きつけられる。


 今のこの一瞬で、太ももに取り付けていたホルスターから拳銃を抜いて、構えた。動きに一切の無駄が無い。手慣れている。

 ならば修道服の深いスリットは銃を取り出しやすくするためか。


 表情を変えず、冷静に観察を続けるこころ。


「あなた、異世界人ね?」

「はいなのです」

「このバスとか言う乗り物も、異世界のもので間違いないかしら?」

「はいなのです」


 嘘をつく理由も無いので、こくりと頷いて認める。


「こんなにあっさりと白状してくれるなら話は早いわね。異世界人及び異世界の物品はザカリ正教においては禁忌。強制処分を執行するわ」


 修道女の指が、引き金に触れた。

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