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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第一期中期経営計画

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回送(回想) 異世界営業所

2022年12月14日にカクヨムで公開したものです。

 とある日の早朝。

 始発担当だった私は営業所の仮眠室で目を覚ました。


 顔を洗って髪を整えて、メイクはナチュラルめに。

 制服に袖を通し制帽を被ると、鏡の前で笑顔を作った。


「今日も一日、安全運転で頑張ろう」


 よしっ、準備オッケー。


「皿沼循環、西新井駅西口6時35分発。大丈夫、間違ってないよね」


 運行予定表を片手に外に出る。

 所狭しと並んだバスの一台に歩み寄り、前扉を開けて乗り込む。


 車内を一度見回ってからエンジンをかけ、車輌や計器、機械類に異常や不具合が無いことを確かめる。


「水素充填も昨日のうちに済ませてあるし。さて、朝ご飯でも食べようっと」


 その時、目の前から眩しい光が差し込んできた。

 日の出だ。と思った直後、「グオォォォォォッ」という謎の咆哮。


 えっ、何今の声?

 見てみると、薄暗い空を照らしたのは太陽ではなく一筋の炎だ。そしてそれを吐き出しているのは飛行機、ではなくドラゴン。


「ん!?」


 私は目を疑った。

 ちょっと待った、これはどういうことだ?


「えっ、さっきなんか叫び声が聞こえた気がするんやけど……?」

「うるさくて眠れないのです……」


 他の路線の始発担当も先ほどの咆哮で目を覚ましたらしい。バスの周りに集まってくる。


 誰もが状況を理解出来ぬまま、呆然と空を見つめていると。

 建物からスーツ姿の女性、この営業所の所長が出て来て呟いた。


「あ〜。これは大変だ〜」

「所長! 大変って、私たちどうなっちゃったんですか?」


 バスを降りて、所長を問い詰める。

 すると、所長はへらへらと笑いながら言った。


「私たち、営業所ごと異世界に飛ばされちゃったみたいだね〜」



 うちの会社のバスは全て水素エンジン車で、各営業所には太陽光発電設備と雨水から水素を作る水電解装置がある。つまり、外部からのエネルギー供給が無くても半永久的にバスを運行し続けることが出来る。

 でも、だからって。


「どうして所長はこの訳分かんない状況を受け入れてるんですか!?」


 これは事業継続うんぬんの問題じゃないと思うのですが!

 納得のいかない私に、所長の車田くるまだまとめは軽いノリで答える。


「だって、受け入れなきゃどうしようもないじゃん〜」


「アニメみたいな異世界転生って本当にあるんやな」

「ファンタジーなのです」


 同僚の運転手である高速バス担当の遠町とおまちはやてと路線バス担当の人見ひとみこころも、そんな呑気な会話を交わしている。


 あれっ? これって私の反応がおかしいの……?


 しばらくして、所長がおもむろに立ち上がった。

 私は頭が混乱したまま、視線をそちらに向ける。


「はいみんな注目〜。今日からこの営業所は『埼京交通バス異世界営業所』とし、この周辺でバス事業を行っていきます〜」


 こうして私は何の因果か、異世界でローカル路線バスの運転手をすることになったのだ。

 いや本当に何で!?

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