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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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150/155

異121系統 トー交易路〜シャンジーク関所〜クィチ城址〜タチュイ川

2025年10月15日にカクヨムで公開したものです。

 クィチ城址の停留所に着いた時、はこびの運転するバスの異変に気付き、急いで助けに向かったオクトーバー。

 間一髪のところではこびを守ることが出来て、本当に良かった。


「この不届き者は私がどうにかするけん、はこびさんは仕事に戻ってほしいたい」

「うん、分かった。オクトーバーさんも無理はしないでね」


 こうして事件は一件落着。

 あとはこの執行人をフェブラリーに引き渡せば……。


 と、今後の流れを考えていたら。

 不意に背後に気配を感じた。


「何者たい!?」

「動くんじゃねぇですよ」


 オクトーバーが振り向こうとすると、背中に固い物が当てられる感覚。

 間違いなく拳銃の銃口だ。


 オクトーバーは現在、クシーディの背中に拳銃を突きつけているが、オクトーバーもまた全く同じことをされている。

 そして、オクトーバーを脅す人物の声には聞き覚えがあった。


 だが、オクトーバーがその人物の名前を口にするよりも先に、しっかりとその姿を見ているはこびが彼女の名前を呼ぶ。


「えっ、マルメラーダさん!? どうしてここに……!」


 驚愕した様子のはこびの声に、マルメラーダは温度の無い冷酷な態度で応じる。


「非番の日にどこで何をしていようが、マルメラーダの勝手ですよね? 異世界人のお前は口を挟むんじゃねぇです」

「でも、だって! 今、マルメラーダさんはオクトーバーさんを殺そうと……」

「それはこいつが先輩を殺そうとしたからであって、マルメラーダは先輩を守ろうとしているだけです。正当防衛ですよ」


 むしろ己の方が正義であると、悪怯れることなく主張するマルメラーダ。

 こうなったそもそもの発端が、守ろうとしている先輩クシーディが無辜の人間を殺そうとしていたからだというのに。


 そんな会話が行われている間、オクトーバーは背後のマルメラーダに気を取られていたせいで、前方の注意を疎かにしてしまっていた。


「でかしたわ、マルメラーダ」

「しまっ……!」


 完全に油断した。

 気が付いた時には、一瞬で身を反転させたクシーディに握っていた拳銃を奪われていた。


 クシーディが再び銃口をはこびに向ける。


 このままでは私の銃が、大好きなはこびさんを殺してしまう。


「だ、だめっ……! それだけは、絶対に……!」


 もう私は無能なんかじゃない、役立たずじゃない。そう、思っていたのに。

 結局、私は何も変わっていなかった。


 止めなければいけない。止めなければ後悔すると分かっているのに。

 弱気な過去の自分が出てきてしまって、行動の邪魔をする。


 狭い路線バスの中で立ち尽くしてしまうオクトーバー。


「お前は一旦どきやがれです」

「うひゃぁっ!」


 するといきなりマルメラーダに腕で押し退けられ、オクトーバーは二人掛けの椅子の上に尻餅をついてしまった。

 変な角度のまま、足を下ろして座る。


「なっ、何するたい!」


 突然何をするのかと怒りをぶつけるも、マルメラーダはこちらに目もくれない。


 マルメラーダは足早にクシーディの背後まで移動すると、そこでなぜかクシーディを羽交い締めにした。

 まさか、仲間割れ?


「あなた、何をしているの? 今は戯れ合っている場合じゃ」

「もしここで先輩がこいつを撃ってしまったら、きっと正気に戻った時に先輩がショックを受けると思うので。だから先輩のためにも、ここは絶対に撃たせません」

「……ねぇマルメラーダ、大好きな私のことを裏切るつもり?」

「違います。信じているんです。信じているからこそ、こうしているんです」


 どういうことだろうか?

 執行人同士の二人の話の内容が全く見えてこない。


「これ以上おかしな真似をするようなら、自慢の後輩であっても容赦はしないわよ?」

「ええ構いませんよぉ。今の状態の先輩になら、マルメラーダが余裕で勝っちゃうと思うのでぇ。ってことで、表出ろです」


 マルメラーダが挑発すると、クシーディはそれに乗った。

 二人はバスを降りて、戦いに向いた広い場所へと向かっていく。


「とりあえず助かって良かったけど、これって結局何だったの……?」

「う〜ん、私にもいっちょん分からん」


 執行人が異世界人を狩りに来た。

 そこまでは理解できたが、その先の展開についてはオクトーバーにも意味不明だ。


 車内に取り残されたはこびとオクトーバーは、目を見合わせて首を傾げた。

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