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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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異120系統 イヴヤ劇場〜シモッタ沢〜メー大学前〜クィチ城址

2025年10月8日にカクヨムで公開したものです。

『ご乗車ありがとうございました。次は終点、クィチ城址。お忘れ物ございませんようご注意下さい』


 終点に到着し扉を開けてからしばらくすると、車内後方から自動音声が流れ始めた。


『車内点検を行ってください。車内点検を行ってください……』


 これは乗客の置き去りを防ぐために新たに導入された、車内の一番後ろに設置された確認ボタンを押すまで車内点検を促す音声が止まらないというシステムである。

(ちなみに、都営バスでは2025年度に入ってから乗客の置き去りが三件発生しており、再発防止に向けた取り組みの一環として2026年6月末までの全車両への設置を目指している)


「よし、よし……。うん、誰も残ってないね」


 前方の一人掛け席から後方の二人掛け席、そして一番後ろの座席まで。順番に隙間までチェックして、お客さんが全員降りたことを確認。

 天井に取り付けられたボタンを押すと、ずっと流れていた自動音声が止まった。


 さてと、運転席に戻って次の経路と通過予定時刻の確認でもしておこうかなぁ。


 そう思って私が踵を返すと、なぜか目の前に人が立っていた。


「わっ、びっくりした……! えっ?」


 驚いて大声を出した後で、疑問が浮かぶ。


 車内にはもう誰も残っていなかったはずなのに。

 しかもこんなお客さん、どこかで乗せたっけ?


 今私の前に立っているのは、修道服に身を包んだ整った顔立ちのシスターの女性だ。

 こんなに特徴的な人が乗ってきたら、普通は降ろすまで絶対に覚えているものだけれど。


「え〜っと、あの。どうされましたか?」


 何か用件でもあるのかとシスターに質問をすると、彼女は無言のまま修道服のスリットの下に手を伸ばした。

 そして、次の瞬間。


「ひっ! な、何ですか……!」


 いきなりひたいに拳銃を突きつけられた。

 状況が飲み込めず、固まってしまう。


 抵抗しなければ殺されると、心では直感しているのに。頭では理解しているのに。

 恐怖のあまり、動くことが出来ない。


 シスターが引き金に指をかける。


 もう駄目だ。私の人生は、ここで終わりだ……。

 私は諦めの境地で、静かに目を瞑った。


 だが、その時だった。


「そこまでたい!」


 突然車内にそんな言葉が響き渡って、私はゆっくりと目を開ける。


「はこびさんを手に掛けようなんて、私が許さんけん!」

「オクトーバーさん、どうして……?」


 いつの間にか後輩のオクトーバーが車内に乗り込んできていた。


 オクトーバーは私に向かって優しく微笑むと、シスターの背中に何かを突きつける。

 私の位置からは死角になっていてそれが何なのかは分からないけれど、恐らく武器の類いだろう。


「銃を捨てて、両手を上げんしゃい!」

「……あと少しだったのに」


 オクトーバーの脅しを受けて、シスターが整った顔を歪める。

 小さく舌打ちをこぼすが、それでもなかなか拳銃を手放そうとはしなかった。


「ほら、早くするけん!」


 痺れを切らして、急かすように言うオクトーバー。


「はいはい。捨てればいいんでしょう」


 ようやく、シスターがオクトーバーの指示に従う。

 私に向けられていた銃口が下がり、拳銃が床に落ちる。


「はこびさん、これでもう大丈夫やけんよ」


 床に転がった拳銃を蹴り飛ばしながら、オクトーバーが笑みを浮かべる。

 それを見て、私も少しホッとした。


「ありがとう。オクトーバーさん」


 しかし、この謎の襲撃はまだ終わっていなかった。

次回「異121系統」に続く

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