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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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136/155

回想(回送) 暴走ロボットの正体

2025年7月9日にカクヨムで公開したものです。

 情報屋のスティールは、トンネル工事現場で起きた謎ロボットの暴走事故についての調査を今もまだ続けていた。


「絶対に何か知ってるはずなんス。ボクは諦めないっスよ」


 スティールはとある家の玄関前に陣取り、目的の人物が姿を見せるのをひたすら待っていた。

 現場近くに千年前から住まう彼女なら、何も知らないはずがないという確信があったからだ。


 しかし、一ヶ月以上前から毎日ここに通っているのに、一度も家から出て来ないとは。


「はぁ。こりゃあ筋金入りの引きこもりっスね……」


 最初の頃はインターホンを押したりドアをノックしたりしていたが、何回やっても無反応だったので今はすっかり諦めている。

 朝から晩まで玄関前に座って、用事で出て来るのを待ち続ける日々。


 いくら引きこもりでも買い物とかゴミ出しとか何かあるだろうと思うのだが、一向に外に出る素振りを見せない。


「う〜ん。今日もダメっスかねぇ」


 夜も遅くなって来たし、終バスの時間もある。

 仕方ない、そろそろ帰るっスかね。


 と、スティールが諦めて立ち上がったその時。


 ガチャンと音がして、玄関ドアが開いた。

 そして、隙間からひょっこりと顔を出した住人は、スティールの姿を見た途端に慌ててドアを閉めようとする。


「おっと。せっかく出て来たのに、また引きこもられちゃ困るっスよ」

「ひぃっ……!」


 スティールは咄嗟にドアの隙間に足を挟んでストッパーにし、強引に彼女を外に引っ張り出す。


「そう身構えなくてもいいっスよ、無言の魔女サン。ボクはただ、ちょっと話を聞きたいだけなんス」

「わ、わわわ、私が話すことなんて、な、何も……!」


 長く伸びた前髪に隠れて表情はよく見えないが、声が震えて裏返っていたり挙動不審になっていたりするあたり、明らかに緊張している様子。


 そんな極度の人見知りである彼女は、千年前の古代文明を知る数少ない魔女の一人のリティー。

 かつて王都を襲ったゴブリンの大群を一言も発さずに指一本触れることもなく、睨みつけただけで全滅させたという伝説があり、無言の魔女として歴史に名を残している。


 こんな有名人と接触できる機会などそうそう無い。

 是非ともリティー自身の話も色々と聞かせてほしいところだが、今回はあくまでロボット暴走事故の調査だ。無言の魔女へのインタビューはまた今度。


「落ち着いてください、簡単な質問に一つ答えるだけっス。答えを聞いたら、ボクはすぐ帰るっスから」

「じゃ、じゃあ早く質問言って」

「ずばり、ミアキエ坂の西の地下には何があるっスか?」


 スティールは知りたいことを単刀直入に訊いた。

 この答えさえ分かれば、事故の真相に辿り着ける。新興メディアが吹聴している馬鹿馬鹿しい陰謀論も、全部封じ込むことができる。


 期待の眼差しで真っ直ぐに見つめた先、リティーが口を開く。


「核廃棄物の最終処分場。ミカミさんがここに作った」

「っ! なら、あのロボットは地下処分場へ続くアクセス坑道を守る防衛装置だったってことっスか!?」

「うっ、うるさい! 質問は一個って約束」


 とんでもない情報を手に入れて興奮したスティールが思わず捲し立てると、リティーが機嫌を損ねた。

 前髪の下に隠れた瞳が淡く光っているのを見て、急いで踵を返す。


「ご協力、感謝するっス。お邪魔したっス〜!」


 危うくボクも無言の魔女に『黙殺』されるところだったっス。

 こうして、リティーから逃げるように全速力で撤退したスティール。


 その後、最終バスの中でスマホのメモ帳を開くと、ロボット暴走事故の調査結果についての記事を一気に書き上げた。

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