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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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133/155

異109系統 中メグ廊〜カシューミ外堰〜ラキファ原〜クィタ聖樹

2025年6月18日にカクヨムで公開したものです。

 発車時刻まではまだ少し時間があるので、私は運転席に座って休憩をしていた。

 すると、前扉の外で手を振る人物の姿が見えた。


 乗り場が分からなかったり、目的地までの行き方を聞きたかったりで、運転手に声をかけてくるお客さんは結構いる。

 きっと今回もそんな感じだろうと思って前扉を開ける。


「どうされました? って、あれ?」

「どうもっス」


 だが、そこにいたのは困っていたお客さんではなく。

 以前に私の密着取材をした、情報屋のスティールだった。


「お久しぶりですスティールさん。今日もお仕事ですか?」

「そうなんスよ。今は暴走した謎ロボットについて調べてるんスけど、これがなかなか上手くいかなくて。本当参っちゃうっス……」


 どうやらスティールは、小松こまつさんやはやても巻き込まれたあの事故の真相に迫るため、今も取材を続けているらしい。


 どうにか助けになってあげたい気持ちもあるけれど、路線バスの運転手である私がしてあげられることなんて……。

 と考えてから、ふと先日の乗客の会話を思い出す。


「あっ。そういえばこの前、お客さんがあのロボットは騎士団の兵器だって言ってましたよ? まあ、噂話レベルって感じの話し方でしたけど」


 一応教えてあげると、スティールはなぜか渋い顔をした。

 心底不快といった様子で、大きく溜め息を吐く。


「それ、どこぞの自称ジャーナリストが流してる陰謀論っスね。報道記事に憶測や私見を書くなっていうのは常識なのに、新興メディアはそういうのお構いなしなんスよ。アイツらはきっと、過激なタイトルのこたつ記事でPVさえ稼げればいいって思ってるんス」


 スマホが急速に普及したことで、この世界にもインターネットの弊害が……。


「って、愚痴ってすまなかったっス。はこびさんに言ってもしょうがない話だったっスね」

「いえ。スティールさんもたまにはストレス発散しないと。情報屋さんのお仕事ってなんか大変そうですし」


 気にしないでくださいと微笑みかけると、スティールは申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた。


 と、そんな話をしていたら、いつの間にか発車時刻五分前になっていた。


「スティールさん、このバス乗られます? クィタ聖樹方面ですけど」

「あっ、乗るっス。現場のとこ通るっスよね?」

「はい。カシューミ外堰で降りたら一番近いかと」

「それじゃ、お願いするっス」


 スティールは運賃を支払うと、以前の密着取材の時と同じ運転席から見て左斜め後ろの、タイヤの上の一人掛けの席に座った。


『ピンポンパーン。大変お待たせ致しました。このバスは異109系統、ラキファ原経由クィタ聖樹行きです。発車までしばらくお待ち下さい』


 その後スティールは目的地でバスを降りるまで、走行中ずっと私の一挙手一投足をまじまじと観察していた。


 今回は私に密着してるわけじゃないのに。

 見られてるとすごくやりにくい……。

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