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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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回送(回想) 天才医師と情報屋

2025年5月28日にカクヨムで公開したものです。

 ロボットと車の残骸が散乱した、高速道路のトンネル内。

 騎士団による現場検証が終了し静寂に包まれたこの場所に、とある人物が佇んでいた。


 情報屋のスティールは、その人物に近づくと声を掛ける。


「アナタも来てたんスね。ラフォク医療センターの天才ドクターサン?」


 スティールに話しかけられて、振り向いたのは白衣姿の小柄な女性。


 見た目は女子高生のようだが、侮るなかれ。

 彼女はラフォク市の医療センターに勤務するファルコ。数々の不可解な症状や事件を解き明かしてきた天才医師である。


 ファルコは沈痛な表情のまま、小さく頷いた。


「ああ。騎士団から要請があってな」

「かなり酷い有様っスけど、少しは助けられたんスか?」


 スティールの質問に、ファルコは力無く首を横に振った。


「いいや、私が来た時点でトリアージも何も無かったよ。直接巻き込まれた被害者は全員即死だ。まあ、ガラスや車の破片なんかの二次被害の負傷者は軽傷で済んでいたがな」

「そうっスか……」


 いくら天才医師と言えども、亡くなってしまった人を生き返らせることは出来ない。

 ファルコは多くの命を助けられなかったことを悔やんでいる様子だが、この状況では仕方がない。

 だって、誰がどう足掻いてもきっと無理だったんスから。


「別に、ファルコ先生が責任を感じることは無いっスよ」

「…………」


 スティールの言葉は、果たしてファルコの耳に届いていたのか。

 彼女はただじっと、薄暗いトンネルを黙って見つめていた。



 その後、スティールがロボットの残骸を写真に収めていると。


「なぁお前。こいつは一体何なんだ? ゴーレム、じゃないよな?」


 いつもの調子を取り戻したのか、ファルコが今回の事故を引き起こした謎のロボットに興味を示した。


「流石は天才ドクター、鋭いっスね」


 これをモンスターの一種であるゴーレムではないとすぐに見抜くとは、やはり彼女は只者ではない。

 スティールはにやりと笑うと、破片に書かれた文字を指差す。


「見てみるっス。あそこに数字が書いてあるの、分かるっスか?」

「ん? どれだ?」


 ファルコはしばらく目を凝らすと、やがて小さな文字を見つけてそれを読み上げた。


「Z.C.882……。は? 待て待て、Z.C.ってザカリ暦のことだよな? 今が2025年だから、何年前の代物だよ!?」


 驚くのも当然だ。

 この数字が製造年であるとするなら、つまりこのロボットは古代文明の時代に作られたものということになる。


「それじゃああいつらは、突然蘇った古代の遺物に襲われたとでも言うのか?」


 あり得ないといった様子で事故現場を見回すファルコに、スティールも半信半疑な態度で応じる。


「詳しく調べないことには、何とも言えないっスけど。トンネル工事がきっかけで眠りから目覚めさせてしまった、ってことはあるかもっスね」

「何だよそれ、理不尽すぎるだろ。あいつらはただ、通りかかっただけだってのに……」


 まだロボットが飛び出してきたというシャッターの向こう側、掘削中のトンネルは立ち入りが禁止されているので、部外者であるスティールには限られた情報しか分からない。

 しかし、この事故には何か深い闇がある気がする。


「とりあえず、ファルコ先生はゆっくり休むっス。今回の事故の究明は天才情報屋のボクに任せるっスよ」

「ああ、すまない」


 騎士団の捜査が終わったら、事故が起きた現場の中心を見てみないと。

 情報屋として、絶対に全貌を明らかにしなければ。


 スティールは規制線のロープの前で、そう決意を固めた。

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