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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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129/155

(循環2)シティライナー106便 王城前〜(都市高速経由)〜ラフォク新市街BT

2025年5月21日にカクヨムで公開したものです。

 開通したばかりの高速道路を走行中。

 乗客の少年が不意に声を荒らげた。


「くそっ、どうすりゃいいんだ!」

「どうしたの、ギンガ? 具合悪いの? あっ、もしかして車酔い?」


 恋人らしきエルフの少女が心配そうに話しかけるも、彼は頭を抱えたまま唸るばかり。


 車内にやや不穏な空気が流れる中、ハンドルを握るはやてもまた妙な感覚に襲われていた。


 ウチ、何回かループしてへん?


 アニメでちょいちょい見かける、死んだらちょっと前に戻る系のやつ。

 もしかして、あの少年がそういう能力持ちなんやろか。


「あぁ、どうしてもっと前に戻れねぇんだ。こっからじゃどうすることも出来ねぇ……!」


 はやてには前回の記憶は残っていないので、この先で何が起こるのかは知らないが。

 少年の様子を見る限り、このままだと大変なことになるのは確かだろう。


 でも、高速道路上では停まることもUターンすることも出来ない。

 バスはそのままトンネルに入り、次の出口までの距離を示す看板が見えてきた。


「兄ちゃん、ここで降りてもダメなん?」


 はやてがマイクを通して問いかけると、少年は少し驚いた表情をしてから首を横に振った。


「駄目だ。地上に出た後で結局やられる」

「かといって、真っ直ぐ行ったら終わりやんな?」

「ああ」


 う〜ん、八方塞がりやなぁ……。


「ちなみに兄ちゃん、やられるって何にやられるんや? モンスター?」

「いいや。俺もよく分かんねぇけど、でっかいロボットだ」

「ろ、ロボット……!?」


 異世界ファンタジーかと思いきや、急にSF要素出てくるやん。


「助けを呼べたらいいんだが、トンネルじゃあスマホも繋がらないしな……」


 少年がスマホを手にしながら呟く。

 はやてもちらりと業務用携帯に目を向けるが、低軌道衛星を経由して通信しているのはこちらも変わらないので、どうせ圏外なはず。


 するとその時、何も操作していないのに業務用携帯の画面がぴかっと光った。

 着信音も鳴らないまま、勝手に電話が起動する。


「……もしもし? 良かった、今度は間に合いました!」

「えっ、誰やあんた?」


 聞き覚えのない女性の声。一体どこのどいつや。


「どうもはじめまして、道引みちびきつなぐと申します! 遠町とおまちさん、細かい話は後にしましょう。とにかく今は高速を降りてください!」

「わ、分かった」


 道引繋と名乗った謎の女性の指示に従い、はやてはひとまず右方向の出口へ。

 バスが一般道に出たタイミングで、繋は続けて言う。


「そしたらこの信号を右折して、大きな公園に向かってください!」


 言われるがまま信号を右に曲がりしばらく進むと、やがて公園の木々が見えてきた。


「この辺まで来れば、もう大丈夫でしょう。どこかで停まってください!」


 もはやカーナビのような繋の言葉を受けて、はやては安全な場所でバスを路肩に寄せて停車させる。

 直後、地響きと共に巨大なロボットが高速道路の方から出現した。


「まずい、早く逃げねぇと!」


 反射的に緊迫した表情で叫んだ少年に、電話の向こうの繋が落ち着かせるような優しい声で告げる。


「その必要はありません。すぐに破壊者ちゃんが来てやっつけてくれますから!」


「ん? 破壊者ちゃん?」


 また知らんヤツが出てきよったで。


 しばらくして、高く空中に浮かんだロボットの目がこちらを向く。

 まさかもう一回やり直しか? と一瞬焦ったが、それと同時にフードを被った正体不明の人物がハンマーを振りかざしながらロボットに襲いかかった。


「何を街中で暴れてくれとんじゃあ〜! お前のせいで残業が増えたらどう責任を取ってくれるのよぉ!」


 それは呆気ない幕切れだった。

 破壊者と呼ばれた謎のハンマー持ちの人物によって、建設中の高速道路から現れた巨大ロボットはあっという間にバラバラに。


 こうしてはやてはループから抜け出し、無事に乗客を終点まで送り届けることが出来たのだった。



 で、結局。

 道引繋って誰や? 破壊者ちゃんって何者や?

 そもそも元凶のあのロボットは何やねん。

 な〜んも分からんかったわ。


 ま、別にええか。

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