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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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回送(回想) 語部読のユニークスキル

2025年3月26日にカクヨムで公開したものです。

 共産連合圏、スヴェスタン共和国。

 春だというのに雪の積もる、季節など無い白銀の大地の中に、語部かたりべよみの姿はあった。


 読がひとり静かに星空を見上げていると、スマホもイヤホンも無いのに不意に耳に声が届く。


「お久しぶりです、語部さん! この間までニポーネ大陸に帰ってたはずですけど、また旅に出たんですか?」

「ニポーネは道すがらに少し立ち寄っただけ。久しぶり、道引みちびきつなぐ


 この声の主は、千年前に佐藤さとう美神みかみと共に魔王を倒した勇者の一人である道引繋。

 魔王討伐後、気が狂った美神を恐れて自らの魂を宇宙ステーションに転送し、それ以来は通信用や観測用の人工衛星群を管理運用しながらわたしたちのことを見守ってくれている、転生者の仲間だ。


 そして、この超遠距離のテレパシーは繋のユニークスキルである『プラチナバンド』。

 話したい相手が通常の念話魔法では届かない場所や状況にあっても、どんな障害も回避して確実につながる力である。


「それで、何か用?」

「あぁいえ、大したことではないのですが。これから佐藤さん、どうなると思います?」

「どう、とは?」

「メー王国は今、天川あまかわちゃんと月夜野つきよのくんによって千年前の文明レベルを取り戻そうとしています。そんな状況で、偽りの神だとバレてしまった佐藤さんが、無事でいられるのかなって……」


 なるほど。繋はどうやら今でも美神のことを心配しているらしい。

 勇者だった頃からは、あんなに変わってしまったというのに。


「わたしが口にした言葉は、全て真実になる。それでも聞きたいの?」


 読のユニークスキルは『ナレーションベース』。

 世界の原則すらも捻じ曲げ、不確定な未来をも確定させてしまう、全能の力。

 ひとたび口にしてしまえば、その発言を取り消すことはできない。


 まさしく、言霊。


 それを分かっていて、繋は改めて「教えてください」と願った。

 一つ頷き、読は答える。


「これは遥か遠い西方の国で、万物を理解し宇宙の摂理をも解き明かす観測者セリーヌから聞いた話。今後メー王国では、大きく三つの出来事が起こる」


・月夜野かけるの産業革命

・オールドメディアと新興メディアの対立

・美神とキヨスのクーデター


 未来の出来事を三つ簡潔に述べた読。


 すると、読の答えを聞いた繋は、なぜかおかしそうに笑った。


「あははっ、プロの声優さんに三本立てで言われるとなんだか日曜夕方の長寿アニメ感ありますね!」


 どうやらわたしの言い方が次回予告のように聞こえたらしい。


「そう? わたしはその作品には一度も参加したことないけど……」

「まあ細かいことはいいじゃないですか。そうだ! 三本立てついでに、最後にじゃんけんでもしておきます?」

「するのは別に、構わないけど」


 それから、読と繋は約四百キロメートル離れた距離でじゃんけんをした。


 繋がグーを出したのに対して、読が出したのはパー。

 結果は、読の勝利だった。



 地球低軌道上、宇宙ステーション。


「あ〜っ! 語部さん、じゃんけんをナレーションベースで済ませるのやめてください! しかもしれっと自分を勝たせるなんて、ずるっこです! 大人げないです!」


 無音の宇宙空間に、繋の叫びが響き渡った。

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