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異世界ローカル路線バス  作者: 横浜あおば
第二期中期経営計画

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118/155

異99−H系統 ラフォク新市街BT〜医療センター〜王国魔法博物館〜キョクヴー寺

2025年3月5日にカクヨムで公開したものです。

 終点到着直後にバス車内で急病人が発生し、AEDで救命処置を実施するも、乗客の男性の意識は回復せず。

 その時現れたのが、医者と思しき白衣姿の女性だった。


 私と乗客が心配しながら見守る中、倒れた男性の身体を触って診察を始める女性医師。

 しばらくして顔を上げた彼女は、こちらに向かって問いかけた。


「お前ら、こいつが倒れる前の状況を覚えてるか? 分かる範囲でいい、教えてくれ」


 確かこの男性が乗り込んできたのは、『魔法魔導庁ラフォク事務所』停留所だったはず。

 その時の様子は……。


 そうだ、思い出した。


「十五分前にバスに乗車してきた時、少しだけ顔色が悪そうでした。あと、手が震えていたのかスマホの操作に手こずっていました」


 続けて、近くに座っていた乗客が答える。


「座ってる間も、ちょっと息が苦しそうだったっていうか」

「それと時折、心臓の辺りを押さえているような仕草もしていましたね」


「なるほど」


 女性医師は顎に右手を当てながら目を閉じ、何やら考え込んでいる様子。

 ここまでの情報を整理し、男性が倒れた理由を解明しようとしているのだろうか。


 やがて女性医師が目を開けると、床に倒れた男性を見遣って口を開く。


「急性マナ中毒による魔力暴走が原因のショック症状」


 どうやらそれが、この男性に対して女性医師が下した診断らしい。

 私にはその症状がどういうものなのか、さっぱり分からないけれど。


「おい誰か、こいつから魔力を吸え。そうすれば魔力暴走が止まって、蘇生するはずだ」


 女性医師の言葉に、お客さんの少女が戸惑いつつ訊く。


「えっと、普通にアブソーブマジックとかでいいの?」

「ああ。魔力が吸えるなら何でも構わん」

「じゃあ、やります」


 少女が魔法を唱える。


「あなたの力をわたしに頂戴。アブソーブマジック」


 魔法が使えない私には見えないが、男性から少女に魔力が移ったようだ。


 直後、男性の心拍が再開する。

 ひとまず一命は取り留めたといったところか。


「このバス、折り返してうちの病院に行くよな?」


 女性医師の質問に、私は「あっ、はい」と頷く。


「医療センターは経由しますが」

「なら、そのままこいつを乗せて行け。優先席に運んで、そこに寝かせるんだ」

「わ、分かりました」


 乗客の力も借りて、指示通りに男性を優先席に寝かせる。


 気が付けば、折り返しの発車時刻が迫っていた。

 協力してくれた乗客と白衣姿の女性にしっかりと感謝の意を伝えた後、私はAEDを片付けてから急ぎ運転席に戻る。


 降車場から乗り場まで移動し、前扉を開ける。

 すると乗り込んできたのは、先ほどの女性医師一人だけだった。


 彼女はスマホで運賃支払いを済ませると、優先席で横になっている男性を見てから私に向けて一言。


「こいつが助かったのは、お前の処置が良かったおかげだ」



 その後病院で治療を受けた男性は、無事に回復し退院できたとのこと。

 AEDと救急救命講習がいかに大切かを痛感する出来事だった。

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