表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

海へ行こうか

作者: 奈宮伊呂波

以前、千文字縛りの合作企画に提出した話です。怒られたら消します。

「友人からベランダ越しに聞かれた。

海のイメージってどんなの? と。

俺はこう答えた。入水自殺、と。いや、言いたいことはわかる。もっと他にあるだろうって感じだろ?

当時俺と友人は中学生で、俺はドラマの影響からそんな不謹慎な答えを出してしまったんだ。我ながら中二病真っ盛りってわけだ。

で、その友人の反応が面白い。あいつはなぜか『あ、確かに!』と朗らかに納得していた。いったい何が確かにだが、友人にとっては俺の答えが予想外で新鮮だったのだろう。

あいつも中二病だったってことだ。

俺はなぜそんなことを尋ねたのか友人に聞いた。友人は『海をテーマに絵を描くことになったから』と答えた。友人は美術部だったからな。何かアイデアが欲しかったんだろう。

次に気になるのは友人がどんな絵を描いたかだ。まさか入水自殺の絵を描いたんじゃないだろうな、と俺は思った。

やがて友人が完成させた絵は、広く美しい海に人が一人、首元まで浸かっている絵だった。

そう。そのまさかだ。

友人は入水自殺の絵を描いてしまった。顧問からは心配されたそうだ。何か悩んでるのか? 不安なことでもあるのか? と。

友人は笑顔で答えた。『大丈夫です!』とな。顧問はそんな友人を見てそれ以上の追求はしなかったようだ。

ただまあ、あんたらもご存知の通り、友人は悩んでいた。根拠を告げるまでもないが、あえて言うならば顧問の質問に「ない」とは答えてないからだ。

友人は魅力的な人だったから、周囲からさぞ注目されてたんだろう。そうなると、やっかむ者が出てくる。自身の充足感のために他人の足を引っ張る矮小な人間だ。そんな奴は気にしなければいいが友人は真面目で素直な性格だ。真正面からそれらを受け止めて、やがて潰れた。

サインはいくつもあった。

美術部なのに友人はいつも家で絵を書いていた。

体操服で登校していることが多かった。

新しい靴を買う頻度が高かった。

他にも多々あるが、いくら挙げても俺が馬鹿で間抜けだったという証拠にしかならない。


彼女のことが大好きだったと言うのに。


そう言えばあんたら、目が覚めた時に言ってたよな。『お前は誰だ。なぜこんなことを』って。俺が誰だか分からなくても、もう理由はわかるよな?」


 男は順番に五人へ視線を移した。抵抗する気力、体力はないようだ。彼らは全員同じ中学の生徒だった。彼女とも。

 男は微笑んで、最後に一言。


 海へ行こうか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ