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ラプンツェルの思惑2

チュンチュン、チュンチュン


 塔の外から聞こえてくる鳥のさえずりで私、ラプンツェルは目を覚ました。


 部屋の窓から差し込む陽の光がとても眩しい。


 ああ、起きたくない。


 起きたらきっと消えてしまう、、、あの美しくて優しくなったモーガン様は、、、。


 私はそう思いつつも突き刺すような陽の光にバッチリと目が覚めてしまう。


 「覚めたくないのに。」

 

 素敵な夢を視た。


 なんと、モーガン様がこのラプンツェルの身体を痛めつけないのだ。


しかも私がモーガン様のためにしたことを跳ね除けずに素直に受け取ってくださった。


 初めて私の名前を読んでくれたし、それに私の要望を叶えてくれたのだ!


そんなモーガン様が夢か現実かでいったら夢に決まってる。


あの日から五年間ラプンツェルに暴力を奮ってたやつがいきなり優しくなるなんてあり得ない。


 ああ、でも体を別人に乗っ取られたとかならありうるかもしれない。


 だって私に優しいモーガン様なんてもう、別人だ。


それにしても何故私はあんな夢を見てしまったのだろう、、、


 モーガン様とああいう関係になるのを心の奥底で私は望んでいたのだろうか?


いや!そんなことはあり得ない!


 私は心の奥底ではモーガン様を恨んでいた!


 モーガン様を化物だと思っていた!


 だからもし、私が心の奥底で望んでいたことが夢に出てきたとしても、モーガン様と仲良くする夢ではなく、私がモーガン様を八つ裂きにして壺に詰めて海に沈める夢を見れるはずだっ!


 なのに、、、、、、


 神は残酷だ。


 私にあんな悪夢を見せるなんて。


本当に残酷だ。


 確かにこの塔に来たばかりの頃は、あのような優しいモーガン様の夢ばかりを見ていた時期がある。


 でも直ぐに悟ったはずだ。


 アレは夢であり、現実にはなりえないと。


 私は重い腰をあげ、調理部屋へ行く。


 この塔では主人のモーガン様を差し置いて食事することは許されないことだ。


 だから、いつも私はモーガン様のために食事を作り、モーガン様に差し出し、モーガン様に食事をひっくり返されてそれを片付け、モーガン様用に少し多めに作っていた食事を勿体無いからわたしが食べる。


 その繰り返し。


 今日もモーガン様に食事を持っていくため(ラプンツェルが朝ご飯を食べるため)に私は調理部屋へ入った。


この塔の調理部屋は食材が豊富だ。


 いくら私がたくさん料理しても、朝には豊富な食材が冷却室に詰まっている。


はじめのうちは、モーガン様が毎夜毎夜塔の外に出て食材を買ってきてくださっているのかと思っていたが、そうではないみたいだ。


 だってモーガン様はあの日から一度も塔の外に出ていない。


 私を乗せてこの塔に連れてきてくれた空飛ぶ箒もホコリを被って白くなっている。


3年前私は不思議に思い、夜寝ずに調理室の隅に座ってみたことがある。


そしたら、窓の外から白い大きな袋を抱え、お面をかぶった背の高い男の人が入ってきた。


男の人は冷却室の扉を開けた。

 

 ど、泥棒?


 モーガン様に伝えたほうがいいのかな?!


 その時私はそう思ったが、その男は泥棒では無かった。


その人は食材を盗むどころか、大きな白い袋の中からたくさんの食材を冷却室に置いて、早々塔の外に出ていったのだ。


私はその夜の一連の流れを見て、幼い頃の母の話を思い出した。


 『一年に一度、毎日毎日良い子にしてたらね、夜にサンタクロースがプレゼントを持ってきてくれるのよ。一年良い子だったもの。ラプンツェルのところにもきっと来てくれるわ、サンタクロースが。』

 

サンタクロース、、、


 私は記憶の中にいる母に語りかける。


あのね、お母さん。


 この高い塔の上にもサンタクロースが来てくれたよ。


 しかも一年の一度だけじゃなくて、毎夜毎夜来てくれるんだ。


 すごいでしょ、、、。


 これってラプンツェルがいい子だからかなぁ?


まぁ、そんなこんなで、この塔にいれば飢えることはほぼ無いのだ。


 「さて、今日は何を作ろう、、、。」


ラプンツェルは夢の中でモーガン様に作ったおかゆを思い浮かべた。


「おかゆ、作ろうかな、、、。」


 夢の中でモーガン様が食べてくれたことを思い出したところで、現実のモーガン様が私の作ったおかゆを食べてくれるとは限らない。


 むしろ、モーガン様がおかゆを食べずにお椀をひっくり返す可能性の方が高い。


 期待しただけ無駄だ。


 モーガン様には別のものを作って持っていこう、そう頭の中では考えているのに、私の体は思うように動かず、結局私は夢の中でモーガン様が食べてくれたおかゆとおなじものを作ってしまった。


 馬鹿だな私は。


 夢と現実での差を知って傷つくのは私自身なのに。


 私は先ほど作ったおかゆをお椀によそい、盆の上に乗せ、モーガン様の部屋の前に来た。


 自身の両足がガクガクと震え、表情が強ばっているのが分かる。


 それもこれもあの優しいモーガン様の夢を観たせいだ!


 あの夢のせいでモーガン様が私の作ったおかゆを一口ぐらい食べてくれるかもしれないと期待をしてしまっている自分がいる。


 トントン


 私は勇気を振り絞り、モーガン様の部屋のドアをノックした。


 数十秒後ぐらいにモーガン様の声が部屋の中から聞こえてきた。


 「入れ」


 「!はいっ!」


 私は元気に返事をし、笑顔を顔に貼り付けてモーガン様の部屋の中に入った。


 「モーガン様、朝食をご用意いたしまっ?!、、、・した。」


 わぁあぁ、、、、、、!!


 なんて言うことだろう!


 目の前に天使がいるっ!!!


 緑の髪に奇抜な化粧をしたいつものモーガン様ではなく、夢に出てきた美しい白い髪に白い肌の美女がっ!


え?あ?え?ええ?!


 もしかして私、まだ夢の続きを見ているのでは?


 ラプンツェルは自身の頬を思いっきりつねる。


 「痛い、、、。」


 どうやらこれは夢ではないらしい。


 モーガンは急に自身の頬をつねりだしたラプンツェルを見て顔を歪ませていた。


 しまった!モーガン様に変に思われた?!


 私は慌てて目的の言葉を発する。


 「鶏肉と卵を入れた粥を作りました。あの、、気が向いたらぜひ食べてみてください、、、!」

 

私はおかゆの入ったお椀を乗せた盆を寝台の上にそっと置いた。


 するとモーガン様が私にこう聞いてきた。

 

「鶏肉と卵の粥か、昨日の粥と同じだな。、、、昨日の残りか?」

 

「へ?昨日?え?アレって夢じゃ、、、、ええ?!」


え?


 え?


え??


 あれは夢ではなかった!!??????


私は混乱してしばらくフリーズしていたらしかった。


 モーガン様が私の顔をのぞき込んで『大丈夫か?』と聞いてきていた。


 モーガン様が私のことを心配してくださっている事実に私はクラクラとしてきた。


 ああ、女神の瞳に私が映っている、、、。


 もーがんさまのこえ、うつくしい、、、


 うふふ、きらきらきらきらき〜らきら✧*。


 あはは〜きれいなお花畑が見える〜☆


#♯✧✬✼✹✺◆●♂ゞヽ❈❈✯✲✭✬??!!!


 ラプンツェルは更に混乱し、またその場に立ち尽くす。


 ラプンツェルはモーガンに肩を捕まれ、激しく揺すられてはやっと意識を取り戻した。


 「あ、、、モーガン、、、さま。」


「何だ?」


「どうやら私、ラプンツェルは夢と現実が混同しているみたいです、、、。昨日の出来事について質問をしてもよろしいでしょうか?」


「、、、許可しよう。」


 モーガン様が私の問いをまともに返してくれる、、、


 やっぱりこれは夢なのでは?!


 いやいや、まずは質問だ。


 この機会を逃すまい。


 私はゆっくりと深く息を吸い、モーガン様に確認する。


 「昨日、私の名前を何度も呼んでくださったのは現実でしょうか、、、ラプンツェルと。」


 「、、、、、、、。」


 モーガン様は何も答えない。


 もしも違っていたらモーガン様のことだから殴ったり罵ったりして全力で否定をするはずだ。


 だからこれはモーガン様なりの肯定、、、。


 、、、、、、、、、、夢じゃなかった?


 「私の入れた風呂桶の湯に入ってくださったのは?」


「、、、、、、。」


 へぁ?!


 これも現実?!


 もしかして私が夢だと思っていたことはすべて現実だったのでは?


 ラプンツェルは自身の中の心音がドクドクと音を立てているのを感じた。


 「、、、モーガン様の髪を私が梳いたのは?」


「、、、、、、、。」


これは、、、もしかして、もしかして!


 恥ずかしいが、これは確認せずにはいられない!


 私は勇気をだしてモーガン様に問う。


 「モーガン様が私の頬にくっ、、、、、くくくくくちぃ〜づけをしてくださったのは?」

 

「?」


 ラプンツェルの問いを理解できなかったのか、モーガンはこてりと首を傾げてラプンツェルをじっと見つめて問う。


 「、、、、、、くっくくく?くちいづけ?何だそれは。頬?」


 モーガン様は私の問に意味がわからないと言うような顔をしていた。


 おそらく本当にラプンツェルの質問の意味がわからなかったのだろう。


 私は恥ずかしさと緊張のあまり、声が裏返ってしまったし、イントネーションがおかしくなってしまったため当然と言えば当然だ。


しかしこれで分かった。


 私はモーガン様に頬をキスをされていない。


 つまり最初の方の夢は夢ではなく現実であり、頬にくちづけをされたところからは私の妄想であり、夢だったのだ。

 

 私は何故モーガン様にこんなに破廉恥なことを聞いてしまったのだろうかと後悔に苛まれた。


モーガンが私の質問を理解していないようで大いに安心する。


 だって、、、、


 何故だろう、このモーガン様には嫌われたり幻滅をされたくないのだ。


「い、いえ!何でもありません!変なこと聞きました!ああ!そういえばこの粥は昨日食べたのと同じでしたね!違うものを作ってまいります!ではっ!!」


 ラプンツェルはあまりの恥ずかしさと居心地の悪さにおかゆの乗った盆を両手で抱え、早足でモーガンの部屋を出ていった。


 私は調理部屋へと行き、お粥の入ったお椀に蓋をし、冷却室に入れた。


 「はぁ〜。」


 モーガン様への質問、私の頬にくちづけをしたかをだけを聞いて終わって本当に良かった。


あの後、もし、絶対に私の夢であったこと、『ラプンツェルと共寝をしたか?』なんてなんて聞いてしまったら、、、


きっとモーガン様に私の邪な願望がバレてしまっていた!!


 危ない危ない。


 「、、、モーガン様の朝食を作らねば。」


 昨日モーガン様が本当に私の粥を食べてくださったのなら、これから私が作るものも食してくれる可能性はある。


 それにしてもモーガン様は昨日は何故、粥を食べてくださったのか、、、


 もしかして!粥がお好きなのか?


 「では、早速粥を、、、いや、でも、2日連続粥はやはり飽きてしまうのでは?」


あーもう!悩んでいても仕方がない。


 モーガン様がきっとお腹をすかして待っていてくれてる。


 簡単に、鮭ときのこの粥を作ろう。


 そうと決めたらラプンツェルは早速鮭を捌き始めた。







 

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