表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

風呂桶にて読む第一話





こうして謎迷はラプンツェルが入れてくれたお風呂(風呂桶)に入るようになった訳だけど、、、


 風呂桶ってどこにあるんだ?!


 謎迷は昨日この世界に転生してきたばかりである。


 当然、この塔の構造なんてさっぱりわからん。


 いきあたりばったり歩いていては、せっかくラプンツェルが入れてくれた湯が冷めてしまうかもしれん。


 かといって、ラプンツェルに風呂桶は何処か?なんてとてもじゃないが聞けない。


 だって、怪しまれちゃうだろ?



 「はぁ」



 謎迷はため息をつく。


 すると、謎迷専用救済手帳がペラリと開いた。


 予想通りスゥーとひとりでに文章が浮かび上がってくる。


 『風呂桶がある場所を知りたいのですね?』


 うん、そうだよ。


 教えてくれるのかい?謎迷専用救済手帳?


 『はい。こちらの間取り図をご覧ください。』


 救済手帳に、スゥーと間取り図が浮かび上がった。


 おお!こりゃ便利だわ


 謎迷は、救済手帳に浮かび上がった間取り図をまじまじと眺めた。


 うん、広い。


 スゲェー広い。


 なんか、塔の上ってだけで、狭いってイメージあったけどそうでもなかったわ。


 簡単に説明すれば、スカイツリーの展望デッキぐらいの広さはあるわ。


 そしてその広い部屋を8等分で分けてあって、まぁ、ピザみたいになってるのよ。


 そのピザの真ん中をくり抜いたように円型の廊下がある。


 今、謎迷がいる部屋を右上だとしたら、時計回りに、


 モーガンの寝室→モーガンの作業部屋(怪しい)→風呂桶の部屋→調理部屋→ラプンツェルの部屋→???→???→???


 の、順番だ。



 「???って何だよ?!」



 なんで???の部屋が3つもあるんだ?


 めっっっっちゃ気になるんだけど!!



 「まぁ、今はとりあえず風呂桶の部屋に行くか。」


 

この間取り図によると、風呂桶の部屋はこのモーガンの寝室を出て、左に2つ進んだところの部屋だ。


 謎迷は、急いで謎迷専用救済手帳を片手に、廊下に出た。


 グズグズしていたら、湯が冷めてまう。



 「確か、ここだよな?」



 謎迷は風呂桶の部屋のドアを開ける。


 部屋の中には大きな、人一人分ぐらいの大きさの桶があり、隣には小さな踏み台があった。


 桶の中を覗き込むと、中には半分ほどの程よい温度の湯が入っていた。


 よし、入るか。


 いや、ちょと待てよ、着替えの服は?


 謎迷は部屋の中をぐるりと見回した。


 すると、部屋の隅にタオルとワンピース的なものが見えた。


 下着もしっかりと用意してある。


 謎迷は、ホッとし、服を脱いだ。


 チャポン


 謎迷は風呂桶の中に入った。



 「ふぁぁぁぁ。」



 いい湯だ


 気持ちいいぃ!


 パラパラパラ


 先程、謎迷が脱いだ服の上に置いた、謎迷専用救済手帳が突然ペラペラとめくれだした。


 また、謎迷に伝えたいことがあるとだろうか。


 謎迷は風呂桶からいったん出て救済手帳を片手に、風呂桶に浸かり直した。



 「うう〜寒い。なんだよ、せっかく温まってたのに。あんたが濡れちゃ困ると思って置いてきたんだぞ!」



 謎迷の言葉に反応するように、救済手帳に文章が浮かび上がってくる。


 『謎迷専用救済手帳に濡れる心配は無用です。私は普通の手帳とは違い、謎迷さんしか見ることができないし、触れることさえできません。そのため、水に濡れる心配はする必要がないのです。』


 ふーん。


 『とにかく、私のことは肌身放さず持ち歩くことを推奨します。』


 肌身放さずってさ、風呂に入るときもか?


 『はい。勿論、謎迷さんが用を足すときも眠るときもです。』


 は?


 めんどくせぇな。


 『それに、謎迷さんは、この世界の本来のストーリーを知りたくはないのですか?』


 え?


 何?


 知りたい!


 『そうこなくちゃ(´>ω<`)!

 《最強ラプンツェルの復讐劇》

第一話〜千年に一度の魔法の花〜

セラムの森の塔の上に一人の魔女が住んでいた。

その魔女の名はメイーナ・モーガンといい、なんとも不気味な姿をしていた。』


 ふーん、モーガンは、フルネームでメイーナ・モーガンというのか。


 結構かわいいじゃん!


 でも、不気味な姿って、、、


 だからラプンツェルは謎迷のことを見て、怯えてたのかな。


 今の謎迷って不気味なのか、、、


 なんか刺さるな(泣)


 『モーガンはある花を探していた。千年に一度だけ咲くという、太陽魔花たいようまかを。莫大な魔気を帯びた花であり、太陽のように自ら光を発することから太陽魔花と呼ばれる。』


 ふーん?なんか凄そうな花だな。


 『太陽魔花は、傷を癒やし、病を癒やし、寿命を伸ばし、莫大な魔力を与えてくれるという、魔花の中でもトップ級に欲しがる人々が多い魔花である。』


 へぇ、凄かったわ


 そりゃ謎迷もほしいかも


 『ある日、モーガンはセラムの森でいつものように太陽魔花を探していた。その頃、ラプンツェルという齢五つの童子はセラムの森に迷い込んでしまっていた。ラプンツェルはきれいな真っ直ぐの黒髪をしていて、瞳の色は緑色だった。』

 

おお、ラプンツェル出てきたな〜


 でもなんで黒髪に緑色の瞳なんだ?


 謎迷が見たラプンツェルは金髪金目だったぞ?


 ん?風呂桶の湯が緑色になったぞ?


 なんでだ?


 『ラプンツェルが森の中で怖くて泣いていると、空から金の雨が降ってきて、土の中からにょきにょきと1輪の花が生えてきた。その花はキラキラと自ら光り輝く太陽魔花であった。』


 おお、もう太陽魔花出てきたわ。


 って、謎迷の髪の毛、今度は真っ白になっとる?!


 モーガンって髪の毛緑色に染め粉で染めてたのか?


 『太陽魔花がとてもキレイだったため、ラプンツェルは家族へのお土産に持って帰ろうと思い、太陽魔花の茎を折った。一連の流れを空から見ていたモーガンは、ラプンツェルの前に降り立った。』


 さっそく、ラプンツェルとモーガンのご対面か。


 うーん、ちょっとのぼせてきたわ、出よ出よ。


 謎迷は救済手帳を片手に風呂桶から出た。


 ラプンツェルが用意しておいてくれたワンピースやらに着替えながら、また、謎迷救済手帳を覗き見る。


 『モーガンはラプンツェルに言った。

「その花を渡せ。渡したら見逃してやる。」

それを聞き、ラプンツェルは花を魔女に渡さなければ、いけないと感じた。だが、ラプンツェルは花を渡したくなかった。こんなに美しくきれいな花はなかなか見つからない。それに、ラプンツェルが泣いていると、この花はラプンツェルを慰めるかのようににょきにょきと生えてきた。だからこれは私の花だ!ラプンツェルは直感的にそう感じていた。』


 ふむふむ。


 太陽魔花の取り合いが始まりました〜!


 『モーガンの手がラプンツェルが持っている花に向かって伸びてきた。それを見たラプンツェルは、咄嗟に花をパクリと食べてしまった。すると、ラプンツェルの体が光だし、光が収まった頃にはラプンツェルの容姿が変わっていた。黒い髪は金髪に、緑色の瞳は金の瞳に、まつ毛すらも金色になっていた。

〜第一話《千年に一度の花》終わり〜』


 ほおほお、ラプンツェルの髪や瞳はこうして金色になった訳か。


 謎迷は《最強ラプンツェルの復讐劇》を読んでいる間に服に着替え終えていた。


 コンコンコン


 ノック音が響いた。


 ラプンツェルが戻ってきたようだ。


⸺⸺入ってどうぞ〜⸺⸺



 「入れ」

 

「は、はい!」



 元気に返事をしてラプンツェルが風呂桶の部屋に入ってきた、、、、、、と、思ったら、信じられないものを見たと言うような驚いた表情をして、謎迷のことを凝視し、



 「し、白、、、」



 と、つぶやいた。


 なんでラプンツェルはそんなに驚いてるんだ?


 染め粉が抜けて髪が白くなったから、より一層不気味になったとかか?


 謎迷が不安げにラプンツェルを見ると、ラプンツェルはポッと顔を赤らめ、



 「お、お湯を塔の上から捨てますね!」



 と言い、窓を開け、たらいで風呂桶の中の湯をすくい、窓の外に捨て始めた。


 まるで、話しかけてくれるなよと言うような勢いである。


 話したくないほど、謎迷のことが恐ろしいのかな。


 謎迷はしょんぼりとし、風呂桶の部屋を出て、モーガンの寝室に戻った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ