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001 リバーサイドの車窓から

始まりですの。

 ガタンゴトン、ガタンゴトン、


 真っ暗のトンネルを抜ければ、青空に挟まれたドームが視界に飛び込んでくる。

 そびえたつ岩壁と湖、そして三角形を組み合わせたクリスタルドームによって外界から遮断された巨大な城と城下町だ。


 世界最大とされる火山湖の真ん中にそれはあった。


 七色の日差しに照らされる城を、黄金色の瞳が遠く車窓から眺めていた。


「……あれが、『学園』」


 噛みしめるように、静かな声が言う。

 瞳よりも柔らかな色のブロンドをティアラのように編み込み、水中から見上げた夕日みたいな赤いドレスで着飾る少女だった。ふらふらりと遊ぶしなやかな足先に、クリスタルのヒールが揺れている。


《噴火でもしたら全部ぶっ飛んじまいそうだな》


 あざ笑うように応えるは、荒れた声。

 真っ黒の炎が偶然その形になったような、揺らめく毛並みの獣だ。

 ソレは少女の膝枕に寝そべって、柔らかな愛撫を堪能している。


 少女は口の端をわずかに緩め、そっと目を細めた。


「そうなれば大陸そのものが滅亡するようね。本来はその災害を封じるための場所だったのだと」

《へぇん。んな物騒なとこにガキどもがうようよしてるって訳だ》

「貴女好みではないかしら」

《げはは》


 笑う獣につられるように、少女もまたほおを緩めて。


《―――だが、オマエほどじゃねぇぜ》


 そして闇が世界を覆った。


《あの虹の監獄に、殺したいヤツがいるんだろ》


 紫電の瞳が少女を見下ろす。

 まるで夜のように広がった獣が日差しを遮っていた。


《オマエがこのワタシなんかを欲するほどに憎み恨み怒り妬み悔い―――復讐してぇヤツがアソコによぉ》


 獣の言葉に少女はそっと目を伏せ、顔を隠す。


「……あまり自分を卑下するものではありませんよ」

《あぁん?》

「このワタシなんか。そんな風に友人を語られることは、とても悲しいことではないかしら」


 はぐらかすように言う少女の。

 その口元は、まるで裂けるように歪んでいて。


《―――げはは。やっぱりオマエが最高だ》


 獣は笑い、満足げに膝枕に戻った。

 ゆらりとまた彼女をなでる頃には、少女はもう、ただ静かなまなざしをドームへと向けるだけ。


 少女と獣―――アルフェとベルは、そうして列車に揺れていく。


 ガタンゴトン、ガタンゴトン、

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