ふあんな曇り女
わたしが空を見上げるといつも灰色をしている。ねずみのような、憂鬱のかたまりのような、霧の中で平均台を歩くような不安定さに包まれる。手をつないでと言っていたツインテールの女の子は元気かな。笑うと現れるえくぼがかわいい、眉毛がふさふさの女の子。
傘を渋い赤色のものに変えた。わたしの中では魔法のアイテム。魔女でいう箒。たとえ雨が降ろうとも、この傘があればほんの少しロマンティックな気持ちで外を歩ける。都会は人が多すぎて、自分が大したことない存在だと思い知らされる。わたしがいくら歩いても足跡の残らない道。信号の赤と緑ですら、わたしのことなんてどうでもよさそう。
わたしにもちょっと前まで愛をくれる人がいた。彼からの視線をもらっていた時間があった。彼の思考にわたしがいた。愛が永遠に続かないなんて、意味を考えたこともなかったあの頃のわたしは幸せで残酷だった。
誰の脳内にもわたしがいないことが孤独だって、今更知った。かわいい服を買っても、思いっきり転がっても、あなたがわたしを見ていなければ、わたしはいないのと同じだ。
どうして人の気持ちは変わるのだろう。ずっとそこにいてくれるはずだと思っていたのに。わたしを置いて進んでしまうあなたが憎い。わたしだけがずっと忘れられないなんて、苦しい。いっそのこと、この痛みを感じなくなるくらい、もっと強い苦しみを与えられて死んでいきたい。
それでも最後は美しくいたい。あなたの記憶のなかでずっと光り続ける美しい欠片となって、灯し続けるのだ。
それが、わたしの愛だ。
読んでいただき、ありがとうございました。