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リフレイン

作者: OZONE
掲載日:2022/01/06

「次のニュースです。先月いじめを苦に自殺した山岸康太(やまぎしこうた)くんの在籍していた東高校の教育委員会は、内部調査の結果を公表しました。聞き取り調査の結果いじめがあったと認定され・・・」


最近はよく聞くいじめの話。昔だって同じような事が起きて居た。俺だっていじめられていた。


辛くて、悔しくて。でもどうしようもなかった。


将来社長になって、あいつらを見返してやろうと勉強を頑張り、少し遠い進学校に進学した。それ以降はあいつらに会ってない。


俺は社長になんてなってなくて、ただのサラリーマン。ある程度の学歴は得られたので、風の噂で聞いたあいつらの職業に比べれば勝ち組だ。


けどやっぱ、いじめの話を聞くと思い出す。


あの惨めな日々。どうすることもできない絶望感。そして初恋のあのコ。


大好きだったが、告白は出来なかった。いじめられている俺に告白されて、あのコに迷惑をかけたくなかった。まぁ、そもそも脈の無い恋。心残りだか、後悔はない。


朝食をとりながらみるニュースでいじめの話が出るといつも同じリフレイン。惨めな気持ちと真っ暗な日常。そして救いのだったあのコの笑顔。


桃香(ももか)ちゃんどうしてるんだろう。」


食器を洗いながらそんな事を考えていた。



仕事を終え、家路につく。スクランブル交差点にある電光掲示板でも今朝やっていた自殺のニュースが流れていた。


彼が自殺してしまった当時も相当報道されていた。事実関係を確認しようとしない学校に痺れを切らし、遺族が遺書を公開。いじめ加害者の実名を全国ネットで言っちゃったものだから加害者も被害者遺族も大炎上していた。


最寄りのコンビニで夜ご飯の弁当を買い、交差点で信号が変わるのを待っていた。反対側の歩道にはセーラー服を着た少女が虚な顔で佇んでいる。


車通りが少ない交差点なのでなかなか変わらない信号に痺れを切らし、渡ろうと一歩踏み出す。すると運悪く、トラックが走ってきた。


踏み出した右足を下げ、渡るのを諦める。走れば渡れなくも無いが走るのは嫌いだった。


トラックがやってくる。通り過ぎるまであと僅か、そんな時だった。反対側側にいる少女がトラックの前にフラーっとでる。


大声をだすが、トラックのクラクションでかき消される。しかし少女は動かない。ようやく俺に気づいたのか顔がこちらを向く。


桃香ちゃん?!、いや違う似てるだけか。そう思いながら突き飛ばした少女は、びっくりした顔で泣いていた。


目の前が真っ白になり、つんざくようなクラクションの音がパッと消えた。



純平(じゅんぺい)!起きなさい!入学式から遅刻するつもり?」


()()()()()()()()()()()()


寝ぼけた頭で朝食を食べ、洗面台で歯磨きをする。口を濯ぎ、コンタクトを入れようといつもの様に容器を取ろうとする。しかし、容器はない。チラッと鏡をみるとそこには、


幼い俺がいた。


ぼーっと自分もの顔を見ていると母親に急かされて、学ランを来て、学生鞄を持ち玄関先に放り出される。


「いってらっしゃい!気をつけてね。」

「いってきます。」


そう言って家を出る他に選択肢は無かった。


学校までの通学は徒歩だ。懐かしく、歩き慣れた道を半自動で歩いていく。


意識は覚醒している筈だが、夢の中にいる様な不思議な感じだ。


そもそも俺は大人だ。仕事もしてた。そしてコンビニで夜ご飯をかった。そして、、、トラックにはねられた。


なるほど、死んだと思ったら過去に戻った訳か。それも中学生に。


なんで中学生なんだ。それも第二中学校に入学したあと。もう少し前に戻ってくれよ。それが高校時代に。


そうすればあの絶望の日々から逃げられた。


またいじめられなくて済んだ。


そう思い至り、足取りが重くなる。サボろうかな。そう思いながらも半ば思考停止で歩みをすすめる。


信号が赤になり止まる。


ふと車道を挟んだ隣の歩道をみる。そこには俺と同じ様に信号を待つ少女が一人。俺と同じ様に少女もこちらを向き、目が合う。


あぁ、そうか。だから今日なのか。


初めて君に会った日。恋に落ちた日。


そして、いじめられる原因を作った日に。



入学式を終え、自分のクラスに戻ってきた。担任の先生の話を聞きなら、チラッと隣をみる。


そこには先程の少女、桃香ちゃんが座っている。本当なら先生の話そっちのけで彼女と話していた。偶然だね!、と。


けど、今回は違う。俺の事なんか認識していない様に先生の話を聞く桃香ちゃん。それもその筈。俺はあの交差点で話しかけなかった。彼女が俺を認識しているわけ無い。


そして、俺がいじめられる事もない。



あっという間に時間は過ぎ、俺も中学生に慣れてきた。未来の話をしてしまわないように細心の注意を払っていたら、喋らない奴と認識されボッチである事を除けば全て順調に進んでいる。テストで目立つ事もなく、いじめられる事もない。だか、桃香ちゃんと仲良くなる事もない。


変わらず好きになってしまっているが、好きでいる事に交友関係を持っている必要は無い。もう一度初恋ができて、心穏やかに見守って居られる。それだけで幸せだ。


「席替えするぞー!」


5限のホームルールで先生は唐突にそう告げた。まぁ、俺は知っていたので驚きもしないが、クラスメイトは熱気に包まれる。俺は後から2番目窓側から今桃香ちゃんが座っている隣に移る。桃香ちゃんは廊下側の前から2番目。離れてしまうが、後ろか姿は見ていられる。


一つ難点があるとすれば桃香ちゃんの隣が俺をいじめていた主犯格である斗真(とうま)だと言うこと。つまり桃香ちゃんを見る為にはあいつが視界に入ってしまう。今はいじめられて居ないため、完全な冤罪である訳だが苦手意識はそう簡単に無くならなかった。


そうこうしている間に席替えが終わり、前と同じように席が決まる。そして前と違う流れが始まる。斗真と桃香ちゃんが仲良くなった。


それはまさしく以前の俺のポジション。桃香ちゃんは男子とよく喋るコじゃなかったが俺はよく喋って居た。俺から喋りかけて居たのも大きいが、彼女から喋りかけてくれる事も次第に増えていった。まさしくその様に二人の関係な進展して居た。


なのに斗真はいじめられない。


心の中にドス黒い感情が生まれた。


斗真が俺をいじめていたのはこのドス黒い感情からなのだろう。アイツは体格も良くて仲間もたくさんいる。対して俺は普通のボッチ。前の時は結構友達は居た。しかし、斗真の様にカーストトップには居ない。


まぁ、どんな環境であれ俺はいじめたりなんかしない。斗真がクズなのは分かりきっている。


そんな折、斗真が桃香ちゃんにフラれたと言う噂が流れた。


ざまぁみろ。とても清々しい気持ちになった。しかし事態は急変した。


俺にはわかる。前に斗真からいじめられていた俺にはわかる。


桃香ちゃんがいじめられ始めたと。


気づいた日の夜に対策を考えた。居ても立っても居られなかった。チラつくんだ。トラックの前に飛び出した少女の顔が。


翌日。即行動を始めた。


「おはよう。佐々木さん。」

「えっ?、、おはよう。えっと、」

「純平です。眞壁純平(まかべじゅんへい)。最初隣の席だった。」

「そういえば、そうだったね。」


まぁ唐突に挨拶をすればこうなる事はわかっていた。クラスのみんなもあまり喋らない俺が、いきなり渦中の桃香ちゃんに挨拶をして動揺して居た。


斗真一派は明らかに殺気立つ。その気配を感じて桃香ちゃんが縮こまる。この時初めて斗真は俺を認識した事だろう。あれだけ恐れて居た相手だったが、今はなんとも思わない。我ながら愛や恋の力は偉大だと感じた。そして、あの時同じ様に声をかけなかった自分が酷くて矮小に感じた。



俺が斗真一派に対抗した事を皮切りに一部の女子が追随し、桃香ちゃんへのいじめは収束して行った。そして言わずもがな


俺へのいじめがはじまった。


「おはよう!純平くん。」

「おはよう。佐々木さん。」

「桃香でいいって言ってるのに!」


桃香ちゃん。可愛すぎです。いじめを邪魔したからだと思っていたが、これが今回のいじめの原因なのかも知れない。それ程彼女の好意が伝わってきた。


そして桃香ちゃんの気持ちが伝われば伝わる程、自分で自分が許せなくなり、罰を求める様に斗真一派のいじめを享受した。



俺へのいじめが始まって一月程経った頃。


「眞壁。ちょっといい?」


桃香ちゃんの親友の美涼(みすず)ちゃんに呼ばれた。桃香ちゃんに借りるねー、と爆弾を投下し、真っ赤になった桃香ちゃんが、私のじゃないもん、、と少し悲しげに言う姿をみて胸が痛む。


教室をでて、階段のを登り屋上へと続く踊り場でこちらを向く美涼ちゃん。真面目な顔を見れば何を言いたいのかは一目瞭然だった。


「眞壁。あんたいつまで引っ張るつもり?桃香の事好きなんでしょ?だからあの時助けたんでしょ?!あんな勇気ある事できて、なんで告白出来ないわけ?!」


熱がこもり、捲し立てる様に問い詰める。桃香ちゃんの事を大切さに思っている彼女が居れば、俺が出しゃばらなくてもいじめは終息していただろう。そんな事実が己の卑しさを露わにしていく。


「好きだよ。大好きだ。」

「ならなんで!、」

「けど!、、もうわからないんだ!、、好きだから助けたのか、弱ってる佐々木さんに漬け込もうとしたのか、、。あの時どんな思いで行動してたのかわからなくなった。それに、、一度切り捨てた俺が彼女の隣に立つ資格なんかないよ。」

「切り捨てた?それ、どう言う意、」

「もうほっといてくれ。」


そう言い残して、その場を去ろうとひるがえる。するとそこには桃香ちゃんがいた。


嬉しい様な悲し様な顔で瞳いっぱいに涙を貯めて居る桃香ちゃんの横を無言で通りすぎる。


「純平くん!まって!、」


呼び止められ、一瞬立ち止まる。


「、、、ごめん。」


そう言ってまた歩き出す。後ろでうめき声と共にしゃくり上げる様に泣く桃香ちゃんの声が聞こえる。今すぐ抱きしめたい気持ちを押し殺し、その場をさった。


その日から桃香ちゃんが俺に話しかける事は無くなった。もちろん俺から声をかける事もない。時折、目があってはお互いに下を向く。そんな時間が続いた。


しかし、斗真のいじめが止む事はなかった。前はあれほど嫌だったいじめが、今では救いの様に感じられる。罰を受けている間は罪を許された様に感じられるから。



その日も漠然と日常を送っていた。最近飽きたのかいじめが終息している。そして罪悪感に押し潰されそうになっていた。


虚な目で信号が変わるのを待つ。トラックの走行音が遠くから近づいてきた。


あぁ、もう終わらせてもいいかもしれない。天から与えられた2度目の人生は最悪その物だった。心残りはない。後悔したなかった。


そして一歩、また一歩と踏み出し、クラクションの音と共に視界が白くボヤけていく。


その時、近づく足音にふと視線が動き焦点が合う。そこには俺を押し飛ばす泣いている少女。


桃香ちゃん?!


そう思った時には押し飛ばされ、視界がぐるぐると回る。


ドンっ!


焼ける様に熱い全身を動かして、音のする方を見ると、倒れた少女と自動車があった。


運ばれた病院のベットで寝ている桃香ちゃん。トラックだと思っていた車はただのK自動車で桃香ちゃんは命に別状は無いと言う話。脳しんとうで意識を失って居るだけという事らしく次期目が覚めると言っていた。


ベットの側で桃香ちゃんを見て居ると、桃香ちゃんの両親と思われる夫婦が駆け込んできた。事情を話すとビンタされた。当たり前だ。


そして名前を聞かれ、答える。


「君が眞壁純平くんだったのか。娘から良く話を聞かされたよ。今日の事は絶対に許せない。たが、あの時桃香を救ってくれてありがとう。」


そう言って桃香ちゃんの両親は頭を下げた。数秒固まって居ると、二人は頭を上げた。この場に居るのが居た堪れなくなり、去ろうとすると、服の裾が引っかかった。


見ると桃香ちゃんが掴んでいる。桃香ちゃんは目を覚ましたらしく、桃香ちゃんの両親が歓喜のあまり騒ぎ出し、看護師や先生がやってきて帰るタイミングを逃した。


念のためと検査入院が決まり、俺は帰ろうとすると桃香ちゃんに呼び止められた。なんの気を効かせたのか桃香ちゃんの両親が先に帰っていった。


病室を静寂がつつむ。


「私ね。さっきまで意識無かった間にね。夢を見てたの。入学式の日、交差点で声をかけられて話す様になって、、、」


桃香ちゃんが語ったのは1回目の中学時代の話。2回目である今の桃香ちゃんが知る由もない話。


「馬鹿げてるって言うかも知れないけど、本当にあった事の様に感じたの。」


「そう。本当の事。俺はいじめられなくなくて桃香ちゃんに話しかけるのをやめた。この気持ちを切り捨てた。そのせいで桃香ちゃんに辛い思いをさせて、漬け込んで、桃香ちゃんの気持ちを捻じ曲げた。だから俺は、」


「違う。純平くんは悪くない。いじめられなくないのはみんな同じだよ。私が同じ立場でも純平くんと同じ様にしてる。切り捨てたんじゃない。それに助けてくれたのは事実だよ。だからもっと好きになったんだもん。それにね、、、」


俺を真っ直ぐ見つめていた桃香ちゃんは一度ギュッと目を閉じる。心なしか頬が赤くなり、再び開いた瞳は一段と熱がこもって居る気がした。


「私も一目惚れなの、、。純平くんと同じ、あの日に。」

最後まで読んでくださりありがとうございます。


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