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春 諦められない気持ち 4

 

「フランツ先生、アロイス=マーティンと、ナラノ=ベネットです。

俺たちが今年の魔法研究係になったので、ご挨拶に来ました〜!」


 アロイスが、代表してドアの向こうにいるフランツに来訪の理由を伝えた。


「…………入れ」

 短い言葉でフランツが入室の許可をくれる。


 そして、私達を部屋に迎え入れたフランツは、アロイスには普通だったくせに、私にだけわかる嫌そうな顔を器用にしていた。



(またあの顔だ……やっぱり、期待しなくて良かった。

 今朝、フランツに『私が、……君を嫌いになるはずないだろう……』、なんて言われて、本当は私、ちょっとだけ期待しかけてたから。


 もしかしたら、フランツに嫌われずにすむのかも、なんて思っちゃってた。馬鹿だな、私。変な期待をしなくて、本当によかった)





 ――だって、期待さえしなければそんなに傷付かなくてすむもんね。





 でも、そうはわかっていても、私の胸は苦しかった。


 フランツは私のことを嫌いなんだってことは、わかっていたことだけど、それでもこうして突きつけられると、毎回辛いものがあった。


「フランツ先生、こんにちは〜。いっや〜、あいかわらず、フランツ先生の魔法研究室には変わったものが多いですねぇ!」


 呑気なアロイスの声が部屋に響く。


「……アロイス。昔からの馴染みだといっても、あまりじろじろ私の部屋を見るな。……居心地が悪い。」


「えぇ〜、つれないですよ、フランツ先生。これから、1年間仲良くする、『俺たちの仲』ですよ?そんな水臭いことは言わずにっ、ですよ〜!」


「だめだ」


「ぶぅ〜!

 フランツ先生はあいかわらずお堅いんですから、も〜っ。

 …………って、え、こわいこわいっ!――わかりましたよっ!だから、そんな怖い顔で睨まないでくださいよ〜!」


 アロイスは、肩をすくめながら両手をあげて、敗北を認めるようなポーズをとりながら、フランツの意見を渋々受け入れた。



(いいなぁ……アロイスとフランツの関係は、昔から変わってないんだなぁ……)



 私は、フランツと気心の知れたやりとりをするアロイスが羨ましかった。








 私のベネット公爵家と、アロイスのマーティン公爵家、フランツのロバーツ公爵家は、お互いに公爵家なこともあって親同士の付き合いも深い。


 特に、私の父の頼みで、私が生まれた時からフランツは兄ホワイトの家庭教師として、ベネット公爵家に頻繁に来てくれていたので、昔の私とフランツは仲が良かった。


 私が0歳の時から、兄ホワイトの家庭教師として来ていたフランツは、手のかかる幼い私のお世話も嫌がらずにしてくれていた。


 だから、フランツに恋をするまでの私は、よく家にやってきて、私にも勉強を教えてくれるフランツを、ごく自然に家族のように大切な人として思っていた。



 でも、そう言えば……その頃は、よく兄ホワイトが、


『ナリィの兄はフランツじゃなくて、僕だ!僕だけが、ナリィのお兄様なんだぞ!フランツ、僕の妹を奪うな‼︎』


と、フランツに言っていた覚えがある。




(あれは、なんでだったんだろう?)









 ――そして、アロイスと私とフランツの出会いも、私の家、ベネット公爵家だった。




 たまたま、アロイスの母エリザベス=ロバーツが、幼馴染で仲の良い私の母キャサリンにアロイスを連れて会いにきたのだ。


 その時の私は、母キャサリンから同じ公爵家で同じ年のアロイスと仲良くする様に、と言われて初めてアロイスに出会ったのがきっかけだった。


 出会った時のアロイスは今みたいなお調子者じゃなくて、素直で可愛かったのだ。だから、私とアロイスはすぐに仲が良くなった。



(……まぁ、つまり、私にできた初めての男友達っていうのは、アロイスなんだよね。

 どうして、あんなに素直で可愛かったアロイスがこんなお調子者に成長してしまったのか、まったく検討もつかないけど。)






 私とアロイスが友達になった後、アロイスの母エリザベスは、なぜか頻繁に私の母キャサリンの元に、アロイスを連れて良く会いにきてくれるようになった。


 だから、私のベネット公爵家に家庭教師としてよく来ていたフランツと、エリザベス様にベネット公爵家に連れられたアロイスは、私のベネット公爵家で出会うことになったのだった。


 アロイスと出会って初めて友達になったあと、

「男の子の友達ができたよー!」と嬉しくてはしゃぐ私に、

フランツがなんとも言えない顔で「……あぁ、よかったな」と頭を撫でてくれたのを覚えている。






 ――そうして、私とアロイスとフランツの3人は仲良くなっていったのだ。






 まぁ、でも、そのあとフランツは私を少し避けるようになっちゃったから、今ではアロイスとフランツだけが仲良しなだけなんだけどね。


(……うう、フランツとなかよくできるなんて、アロイスが羨ましいよっ‼︎)







 ――グイッ‼︎


 そんなことを考えてぼーっとしていた私は、すごい力で引き寄せられた。


「っ?!!」


「まぁまぁ、フランツ先生。とにかく、俺たちのこと、よろしくお願いしますね〜」


「っ、ちょっ!……アロイスっ‼︎」


 なんと、私の横にいたアロイスが、左手で私の腰を引き寄せていたのだ。



(〜〜っ! アロイス?! いきなり、どうしたんだよ‼︎ というか、近いよっ!)



「……ナラノ、そんな可愛い顔しちゃだめだぞ〜。俺が食っちまうぞぉ〜?」


「っ、え、え、えぇっ……」



(アロイス!一体、何してるの?!!)



 私は混乱して、どうしていいのかわからなかった。


「……可愛い、ナラノ……」


 色気のある低く身体に響く声で、アロイスは私の耳元で小さな声を囁いた。


「っ‼︎」




 顔から火が出るんじゃないか、って勢いで私の顔が赤くなるのがわかる。


 でも、突然男友達のアロイスからこんなことをされて、私の頭が処理し切れるはずもなくて、私は真っ赤な顔を隠すこともできずに固まってしまったのだった。


「ナラノ……」



 書けていないですが、アロイスの母エリザベスは、息子のお嫁さんとしてナラノを迎え入れたくて、ベネット公爵家に通い詰めていたりします。

 ナラノの母キャサリンは、ナラノさえその気なら、アロイスとナラノの関係が進んでも良いと思ってたりします。温かい目で見守っています。

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