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困ったおじいさん

作者: みぶ真也

「みぶさんですよね、ラジオでこの話してくれませんか?」

 いきなり声をかけられたのは、京阪電車の中でだった。

 見ると、吊革を持った高齢の男性がニコニコしながら立っている。

 ちょうど“深夜のみぶ”のネタを探していたところだったので、話を聞いてみようと思い

「どんなお話ですか?」

と返事してみた。

「実は、私は元会社の役員をやっておりましてね、今は郊外のマンションで妻と二人、ゆっくり老後をすごしているんですよ。

 趣味といえばラジオを聴くくらいで、走れタコも欠かさず聴いております」

「ありがとうございます。是非、ご感想をお葉書ででもください」

「ええ、わかりました。

 朝はいつも妻と情報アサイチを聞いてるんですがね、ある朝、6時過ぎにラジオをつけた時、ドアのチャイムが鳴ったんです。

 こんなに早く誰かなと思いドアを開けると、小柄なおじいさんが立ってるんです。『ただいま』と言って、おじいさんはうちに上がろうとしました。

 慌てて止めたんですが、おじいさんは私の部屋を自分のうちだと思い込んでるようなんです。

 私が一所懸命おじいさんをさえぎって話をしようとするんですが、おじいさんは自分の家だと信じ込んでて上がろうとする。

 妻が奥から出て来て、おじいさんに見覚えがあると言うんです。下の階の金子さんのおじいさんじゃないかって。

 電話してみるとやっぱりそうで、おじいさんが勝手に出て行ったまま帰って来ないので金子さんの家では大騒動してたそうです。

 息子さんが迎えに着て、なんとか引き取って貰いました。

 それが半年位前の出来事なんですが、それから毎日、情報アサイチの時間になると金子さんのおじいさんが訪ねて来て、うちに上がろうとするんですよ。

 話はこれだけです」

「それはそれは困ったものですね。…でも、ぼくのコーナーは怪談のコーナーですので、そうしたエピソードを紹介するのには向かないかと」

「あ、言い忘れてました。実は金子さんのおじいさんは先月亡くなりましてね。それでもまだ、自分が死んだことに気づいてないみたいで、今も毎朝うちに訪ねて来るんですよ」


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