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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カタツムリの火葬

作者: 島猫。

窓を閉めていても雨音が聞こえる。

昨日の夜のうちに捨てておけばよかったと後悔した。

ゴミステーションまでは少し歩かねばならない。

週に2度の可燃ゴミの回収日。鼻呼吸は控えめに、ゴミ袋の結び目を握り持ち、玄関戸を開けた。

外はザァーザァー降りのうえ、一歩進む度に肌に水滴が付着するような、そんな湿度。

傘とゴミ袋と自分。傘の下に収まりきらないゴミ袋に跳ねた雨粒が、ゴミ袋を持つ右手を濡らす。

三軒先の、ドングリの木がある曲がり角の家のブロック壁。


あぁ、またこの季節がやって来た。


ぱっと見ただけでも、カタツムリは大小合わせて7匹。

ナメクジは2匹。


昔、祖母が言っていた。

「カタツムリの殻の中には魂が入っている」と。


ナメクジは畑の野菜を食べてしまうから、家の敷地で見つけたナメクジは靴でしっかりと踏み潰していた。慣れてはいても、ぬるっとした感触に毎度ぞっとして、日向があるなら日向へ放り投げていた。幸いにして、我が家にはカタツムリは現れない。毎年この時期この場所に、雨の日の朝、現れる。

祖母は言った。

「人は死んでも霊魂は残る。死んで、体から抜け出た魂がカタツムリの殻に宿る」


右手のゴミ袋を見つめた。雨粒が袋に当たり、流れ落ちる。途中でゴミが落ちていても拾って捨てれるよう、結び目は弛い。

カタツムリを一匹ずつ、壁から剥ぎ取り、結び目の隙間から袋の中へ落とした。

ゴミステーションにゴミを捨て、両手で傘の柄を握り同じ道を戻る。

曲がり角のブロック壁のナメクジを横目に、家に戻った。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  拾われたかたつむりは焼却場で焼かれることになり、そしてその背中の殻の中には、死んだ人の魂が入っているのですね。その魂が、誰のものなのか想像すると怖くなります。  新見南吉の「でんでんむ…
[良い点] お婆ちゃんの言葉をうのみにしてカタツムリをごみ袋に入れる(多分清掃車が来る前に逃げ出している?)のは分かります、が、食べ物を粗末に(日本の何処かでカタツムリ食の文化がある地方があった筈)…
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