次の目標
南の洞窟でボスを攻略してボーンに帰ってきたので、ギルドにて本日の清算をしよう。
「魔石の清算をお願いします」
「はい、お疲れ様でした。…南の洞窟でボス攻略されたのですね、おめでとうございます。例の事故でどうなることかと心配していましたが、私個人としても非常に嬉しいです。他の魔石と合わせて、700ベルになります。ちなみにこのボスの魔石は、合わせて50ベルです」
思ったより安かった。帰り道の狩りはしていないし、こんなものか。
稼ぐのであれば、ボスの魔石よりは宝箱やアイテムドロップ。安定収入は見込めない。
安定収入が欲しいのであれば、ダンジョンではない場所で、魔物の素材を売るのがベストだ。
そこで素材を手に入れて、馴染みの鍛冶屋に持ち込み自分の装備を更新する冒険者も多い。
「ありがとうございます」
700ベルを受け取る。現在の手持ちは5000ベル程だが、良い装備に更新出来るほどの金額ではない。
ダンジョンでずっと狩りをしていたが、少しダンジョン以外の狩場に出て、稼ぐのもありかもしれない。
「よう。ボスを倒せたか。何が出た?」
「リザードマンですね」
「ああ、あいつらか。なかなか手強かっただろう?パーティーなら何とでもなるが、ソロだとな。身体もでけぇから攻撃を受け止めるのも大変だっただろう?」
「えぇ、全部回避してやりました。ただ魔法を使ってくるのは予想外でした」
「その様子を見ると、アクアニードルを食らったみたいだな。脚か手をやって、油断したな?」
なんでもお見通しのようだ…。
「その通りです。先に青の脚をぶった切って、赤い方に集中していたらやられました。魔法を使ってくるとは思っていなかったですね」
「赤い方はファイアボールを打ってくるからな、そっちを食らわなかっただけ良かったんじゃねえか」
「そうですね」
ゲームだと火魔法も水魔法も同じ威力となるだろうが、現実だとそんなことはない。
炎は熱いし燃える。魔力を込めた質の高い魔法程、温度も高い。食らったら即死のケースもある。
俺のファイアボールはまだそこまでではないが、直撃したら即水魔法を自分にぶっ掛けないとまずいレベルだ。
魔力で作られたものは火でも魔力抵抗があれば何とかなる…らしいが、それは本当に高価な防具が必要だ。
それか、上位の魔物。ドラゴンは生半可な魔法は全てレジストするらしい、怖い。
「なんにせよ、おめでとう。よくやった。ゴブリンも倒せばギルドランクも文句なしにCだろうな」
「Cですか?まだEなのですが…」
「それだけ急成長してるんだ。複数属性の魔法を使い熟し、リザードマンのボスと斬り合える時点でCランク相当の実力はあるんだよ。そもそもダンジョンボスはパーティーで攻略するもんだ。実力Dくらい…それこそノーカーズかそれより少し上の奴らが、5人以上で挑むのが普通なんだよ。それをソロで初見攻略してんだ、Cは妥当だ」
「そうなんですね…」
あの隠し部屋での死闘があったからか、マニュアル化の恩恵が、そのどちらとものおかげかで、俺の成長度合いは相当なスピードらしい。飛び級だ。
「あぁ。Bはギルドの依頼をたくさん受けて、成功して、戦闘力だけでなく各方面からの信頼を手にしないと昇格できないから、暫くはCのままだろうけどな。Cランクは一人前の、それも質の高い上位の冒険者だ」
俺なんかが上位の冒険者と名乗っていっていいのだろうか。
まだ1ヶ月半程度の冒険者歴で、戦いしかできない人材であることは自覚している。
「不安か?気にすんな。高い戦闘力だけでCランクになったってことはここにいる奴らは把握してるさ。ボーンにいるならば暫くルーキーであることには変わりねぇ。ノウハウは色々俺らが叩き込んでやるよ」
「ありがとう、助かるよ」
「気にすんな、仕事のうちだ。そのうち護衛依頼とか、ギルドからの指名依頼、盗賊の討伐依頼なんかも出てくるだろうから、そこら辺をやっていくのをおすすめするぜ」
「了解だ」
ギルドランクのB,Aを積極的に狙うかは置いておいて、冒険者として生きていくならば、やってそんなは無いはずだ。
ゴブリンのボスを倒したら、一旦南の洞窟からは離れるかな。
そういえば南の洞窟以外のダンジョンって何があったっけ?
東は厄介な高ランクダンジョンで、難易度の割に収入が見込めないから不人気って聞いたけど。
「西はリパに向かう道中にある、水の洞窟だ。水属性の敵が多く、水場もあってDランクダンジョンだがかなり厄介だ。水中の敵は厄介だし、魔石を拾いにくいのがな…一応水には浮くが…。
北は死者の洞窟と言ってアンデッドが多い。道中は南の洞窟より若干魔物が強いかな、といった程度だが、稀にリッチの目撃情報もあるから油断できない。通路が狭いから少人数向きだし、魔法の対アンデッド魔法が使えるなら、キンジに向いているかもな。ボーンから近い場所にあるが、南と同じDランクだから、南の洞窟に行く奴が多いな。
東は…やめとけ。東の塔と言われてて、珍しく上に登る形態の、Bランクダンジョンだ。罠が多くて探知できる奴がいないと即お陀仏だ。俺は探知に自信があるからたまに潜るが、普通の奴は罠に精神を削られ、魔物もクセの強い奴が多いから行かないな。それもあって、上位の奴はボーンからリパに出て行くわけだ」
ふむふむ。
水の洞窟は魔法で何とかなりそうではあるが、めんどくさいことには変わりなさそうだな。やめておこう。
死者の洞窟はありじゃないかな。光魔法を覚えているのにヒーリングしか使えないのは勿体ない。アンデッド対策の魔法を覚えて行ってみよう。
東の塔も将来的にありかもしれない。罠探知がしっかり働けば問題ないはずだ。レベルが足りなくてお陀仏、ということがないように気を付けなければいけないが。
「なるほど。南の洞窟でボスのゴブリンを狩った後は、死者の洞窟にチャレンジすることに決めた。せっかく光魔法を持っているから、ここで使いこなせるように特訓しよう」
「おう、それがいい。アンデッド退治の依頼はギルドにもたまに来るしな。なかなか上位のアンデッドは曲者揃いだから、対処できるようになっておいた方がいい」
「わかった、ありがとう」
今後の方針が決まったな。
明日は南の洞窟でゴブリンを、明後日はアンデッド対策の魔法がないか蔵書を確認してみて、死者の洞窟までの道のりを確認という感じだな。
北門は行ったことっがない。ダンジョンまでの道のりと、道中の魔物の確認もしておきたいな。
翌日、予定通り南の洞窟の最下層まで行き、ボス攻略を行った。
ボスの抽選2回目でホブゴブリンを引いた。
ゴブリンの群れの数が3,40匹ほどいた。予想以上の大軍だった。
ホブゴブリンにダークカーテンをかけ、その隙にファイアブレスでゴブリンの群れをほぼ一掃。
残った敵はサンダーエンハンスをかけて全部斬り捨てた。
ホブゴブリン自体も身長が1.5m程度しかなくリザードマンより力も弱かったため、エアエッジを打った後に数度斬りあって倒せてしまった。
2分も掛かっていない。一瞬だった。
もちろん宝箱もドロップもなし、旨味の無いボス戦だった。
これで南の洞窟は卒業で良いだろう。オークは…一回外でオークリーダーとやりあったしな。それにファイアブレスで一掃して終わりな気がするし。
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現在のステータス
【技能スキル】
火魔法 Lv.4
水魔法 Lv.3
風魔法 Lv.4
土魔法 Lv.4
雷魔法 Lv.4
光魔法 Lv.3
闇魔法 Lv.3
剣術 Lv.4
隠密行動 Lv.3
鑑定 Lv.2
生命探知 Lv.3
罠探知 Lv.2
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
第六感
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
46
【装備】
ミスリル合金の剣(ダンジョン産)
鉄の軽鎧
革の帽子
革のブーツ
魔力増強のミサンガ




