隠し部屋
「おはよう!今日はよろしくな!」
「よろしくだぞ!」
「おはようございます。よろしくお願いしますね」
「おはよう。ボス攻略頑張ろう、今日もよろしく」
各自朝食を取り、夜明けくらいの時刻にノーカーズと合流。早めに南の洞窟に向かう。
道中苦戦しないとはいえ、長丁場なので早めの時間帯に出発する。
「新しく風魔法と雷魔法、土魔法を使えるようになった。他言はしないでくれると助かる」
4Fでオークと対峙しているときにエアエッジやストーンウォールを使った。使える属性は全て教えることに決めた。
恐らくダンジョンボス相手に使わなくても勝てると思うのだが、サンダーエンハンスを使わないと接近戦の火力が落ちてしまうし、ストーンウォールなんかはいざという時にジョーが最適な指示をしてくれるのではないかな、という期待もある。
「は…ということは、闇以外の6属性持ちか?どうなってんだよ…」
「7属性使える大賢者様は特別ですが、それ以外だと4属性持ちが最高だった気がします。隠している人もいるとは思いますが…とんでもないことですね…」
「キンジ、すげぇぞ!1属性分けてほしいぞ!」
まぁこういう反応になるよな。騒ぎにならないでくれるといいな。
8Fまで2時間ほどで着いた。道中最短距離で、戦闘も探知して先制攻撃でサクサク倒してきたからこんなものだろう。バランが途中荷物持ちになっていた。やることないもんな。
ただここからはリザードマンの群れやホーンドラビット、スティールバットなど油断できない相手がたくさん出てくる。マッピングも不十分。罠もある。2階層とはいえ気を引き締めていこう。
「4匹リザードマンがいる。前衛3、後衛1だ」
「後衛、杖を持っているぞ」
「リザードマンウィザードですね。魔法攻撃を仕掛けてくる強敵ですね。先手を取って仕留めたいですが、前衛3匹いると厳しいですか…」
タイト、目が良すぎだろう。暗いし遠いのによく見えたな。
なんにせよリザードマンウィザードと初遭遇した。ソロで来た時もあったことがない相手だ。
近づくと、前衛に装備なしのリザードマン2匹、槍で武装したリザードマン1匹、後衛に杖持ちのリザードマンウィザードが1匹の4匹で陣形を組んでいることが分かった。
武装無しのリザードマン4匹と比べて倍以上の危険度だろう。こういうのがいるので、ダンジョンは油断ならない。
「キンジ、ストーンウォールでウィザードを分断できますか?」
「やれると思う」
「了解です。ではタイトとバランで前衛をおびき寄せた後に分断してください」
「了解」
遠距離から仕留めそこなって魔法の反撃を食らうよりは、ストーンウォールで物理的に分断した方がいいか。なるほど。
タイトとバランが走り出した。前衛の3匹が、ウィザードを守るかのようにじりじりと前に出てくる。ウィザードは魔法を詠唱中のようだ。
「ストーンウォール!」
そのリザードマンの目の前に、縦横2mほどの石壁を生成した。ここの通路は4mほどなので、どちらかから出てこようとしたところを、狙撃してやる。
その間に、武装していないリザードマン2匹は片付いていた。ジョーが矢で援護しており、サクサク倒せている。ノーカーズも成長している。
そして左側から出てこようとしたウィザードに、アイスボルトを3発撃ちこみ倒すことができた。
魔法を打たせずに勝利できた。満点だろう。
「お疲れ様です。ストーンウォール、便利ですね」
「あぁ、攻防一体の便利魔法だ」
そのまま8Fを踏破。9Fだ。ボスエリアを除いて最下層。事前の情報では8Fと魔物は変わりないようだ。
リザードマンを倒しつつ20分ほど進んだときだった。
スティールバットが数匹出たので、俺の魔法とジョーの矢で対処していた時。ジョーの矢が外れた…のだが、その矢が壁をすり抜けた。
ジョーは異変に気付いたようだが、一先ず倒すことを優先。スティールバットを殲滅した。
「…矢が壁をすり抜けましたよね?」
「あぁ、この前ソロで来たとき、俺も似たようなことがあって、その先に隠し部屋があった」
「なるほど…隠し部屋ですか。宝箱が置いてあることが多いらしいですね。罠もあるかもしれませんが、行ってみますか?それともボス攻略後にしましょうか?」
「目の前に宝があるかもしれねぇんだ!行かない選択肢はないだろう!」
難しいところだよな。上層だったら迷わず行くところなんだが、ボス直前だしなー…。
「オラもお宝は見てみたいぞ!」
「では行ってみますか。キンジもいいですよね?」
「もちろんだ」
冷静なジョーも宝の誘惑に負けたか。元は農村から一獲千金を夢見て出てきたやつらだもんな。
生命探知も今は反応していない。大丈夫だろう。
矢がすり抜けたあたりをバランが手で触れると、すり抜けた。ビックリしつつ、皆で進む。
すり抜けた矢が落ちていた。幅2mほどの狭い通路を進み、曲がり角を曲がり、また進む。
すると、先に開けた場所が見えた。運動場くらいありそうな、大広間。そのど真ん中に、宝箱が置いてあった。
「「「おおお!宝箱だ(ぞ)!」」」
ノーカーズの3人が走り出した。
「お、おい!待て!」
流石に焦った。罠だったらどうする!
…3人が宝箱の前についたところで何もなかったので、ホっとした。
この前俺が見つけたときは普通に通路の終わりにあったのだが、この宝箱は広間のど真ん中。怪しい雰囲気があるが…。宝箱も豪華な装飾がされている。レアなものが入っていればいいのだけど。
鑑定しても、「宝箱」としか表示されない。罠探知も反応していない。大丈夫か…?
「すみません、興奮しちゃって…」
「まぁいいか、罠もないようだし…」
「あけるぞ!いいな!あけるぞ!!」
ジョーは少し反省していたが、バランとタイトは手を取り合って興奮している。そのまま勢いで宝箱をオープン。中に入っていたのは…。
「なんだこれ。宝珠…?」
鑑定してみよう。
――
スキルの宝珠『水魔法』
――
まじか…!こんなところで、スキルの宝珠を見かけるとは!しかも需要のありそうな水魔法!
ただ俺はいらないが、ノーカーズとしては使いたいだろうな…みんな魔法に憧れがあるみたいだし…。
そして売ったらいくらになるのだろうか…。
「キンジ、これが何か分かったのですか?」
俺の様子を見て、ジョーが聞いてきた。
「これはスキルの宝珠だ。恐らく水魔法を取得できる」
「「「えーーー!!!」」」
「これ…どうしましょうか。売ったら金貨数十枚はいきますよ…」
「売って4等分にするか、ノーカーズの誰かが使うか、だな」
「いやいや、でも使ったらキンジの取り分がなくなってしまいます。でも使いたい気持ちも…」
そうだよな。売って4等分、それが一番問題が起きない。
でも一生使えないと思っていた魔法を使えるチャンスを目の前にして、みんな興奮している。
そんな時、だった。
ゴゴゴゴゴゴゴッッ!!!!!
いきなりダンジョンが揺れ始めた!あたりを見渡すが、特に何も変わりは…!?
急に罠探知が反応し始めた!しかも強い反応。周囲一帯に!どういうことだ!?罠探知の指すエリアは…大広間全体。これはまずい。
来た通路以外の3方向の壁が上がり、4方向に通路ができた。そして来た通路以外から、魔物の群れが流れ込んできた。
ゴブリン、オーク、リザードマンの混成軍だ。まずいと思ってストーンウォールをしようと思ったが、地面が土ではなく金属だったために不発。
「まずいぞ!このままだと飲み込まれる!早く来た通路に逃げ込むぞ!」
「逃げろー!!」
幸い隠しエリアに来た通路からは魔物が出てきていなかった。そこを目指して、走る。
しかしそれに気づかないわけがない。特に素早いリザードマンが回り込んで来ている。
…隠し部屋での死闘が、始まった。
―――――――――――――――――――――――――――
現在のステータス
【技能スキル】
火魔法 Lv.4
水魔法 Lv.3
風魔法 Lv.2
土魔法 Lv.2
雷魔法 Lv.3
光魔法 Lv.2
剣術 Lv.4
隠密行動 Lv.3
鑑定 Lv.2
生命探知 Lv.2
罠探知 Lv.2
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
48
【装備】
鉄の剣 +10
鉄の軽鎧
革の帽子
革のブーツ
魔力増強のミサンガ




