はじまり 2
頭が痛いが、スキル振りを決めないといけない。
ゲームでキャラメイクする時は、必ず完成形のビルドを考えるものだ。
俺は、[マザー]に降り立って、何をしたい?
そもそも何が出来る世界なのか?
剣と魔法の世界だ。魔物退治はもちろんあるだろう。
身の振り方や情勢によっては戦争に駆り出されたりもあるだろう。
個人的に、生産職はあまり好きではないのだ。戦闘職万歳。
ゲームのシステム次第だがサブキャラや、サブスキルとして嗜む程度だ。
魔王討伐ミッションはないとは言ったが、戦闘職として生きていくのだから、
そのうち強敵との戦いも出てくるだろう。
しかしゲームではなく、現実。
死にやすいビルドで、何度もチャレンジして…というわけにはいかない。
作戦は最初から最後まで、「いのちをだいじに」だ…。
さて、どうするか…。
「すごい悩んでいるね…。ここにいる間は時間は進まないから、
気のすむまで悩んで、後悔の無いようにしてね」
「ありがとう、それは助かるよ」
時計がないので―スマホも時計も身に着けていなかった―時間は分からないが、相当な時間悩んでいたようだ。
だが、いつだってビルドを考えているときが一番楽しかった。今回も一緒で、時間なんて忘れて考え込んでいたようだ。
ロマンビルドを考えて、ピースが埋まって、いける!ってなったときは最高に楽しいもんだ。
「そうだ、ロマン。魔法。やっぱり、魔法使いたい!」
「地球には魔法を使える人間はほとんどいないですからね、憧れる気持ちは分かります」
女神さまもいってる。やっぱり魔法は使ってみたい。
しかし、ほとんどってなんだ?気になるけど、聞いたら質問になっちゃうんだろうな。
「これくらいでしたら、3回にカウントせずに教えて差し上げますよ。
地球でいわゆる超能力者と名乗っている9割はマジシャンですが、1割は魔法を使っていました。
サーカスや大道芸、マジックなどに、バレない程度に混ぜ込んでいる方がいましたよ」
…知らなかった…。
しかし、これで魔法を使ったビルドにすることが固まった。
魔法剣士ってロマンがあるよね。
さて、3回の質問についてだ。
鑑定やマニュアル化、魔法適正の件は、やはり気になる。
ただ、まずは後天的にスキルを取得・成長できるのか、は必ず聞いた方がいいだろう。
Yes/Noで一瞬で終わってしまう質問の仕方は避けねばなるまい。
と、なると…
「1回目の質問だ。
今回選ばなかったスキルも、後天的に取得して成長させていきたいと考えているのだが、マニュアル化というスキルを取得することで、任意のスキルを取得できるのだろうか?」
「1回としてはかなりグレーゾーンですが…いいところに目を付けていますね、良いでしょう。
まず、マニュアル化の取得有無にかかわらず、後天的なスキルの取得は可能です。
この世界では、才能に左右はされますが…、例えば剣の稽古を続けることで剣術スキルを取得することが可能です。ただし、その道のりは簡単ではありません。
マニュアル化はそれを文字通りマニュアル化します。
魔物の討伐や稽古、訓練、あらゆる経験を経験値としてため込み、スキルの取得・成長に使用することができます。
各スキルの取得レートについては明かせません。
またリスト内にあるスキルの一部はマニュアル化の有無に関わらず取得できません。
その人の器を超えるスキルは取得できないというわけです」
「なるほど…ありがとう、参考になった」
本当に参考になった。
マニュアル化は、ぜひ取得したい。
そしてマザーに降り立ったら、安全な拠点を確保し、経験点を稼ぐ手段を確立したい。
マニュアル化を取得した場合、残り50ポイントになってしまう。
先ほどの回答で、剣術スキルは後天的に取得可能だが、厳しい道のりとのことだった。
当然剣や戦闘の経験などないので、これらのスキルを皆無でマザーに降り立ち、
即魔物にエンカウントとなってしまえば、戦うことなどできず散っていくのだろう。
となると、鑑定は魅力的だが諦め、残りで戦闘関連のスキルに振るべきだ。
剣と槍、どちらかを取得しよう。
オーソドックスで憧れがある剣、間合いで有利を取れそうな槍。
戦うイメージの付きやすい剣でいいかな。
魔法も使いたい。魔法適正ってなんか先天的な雰囲気がするから取っておきたい。
属性はアニメやゲームだと、火<水、というイメージだけど、
実際は火で蒸発させれそうだし、攻撃力が高そうな火にしよう。土も応用利きそうだけど。
一旦まとめよう。
スキルポイント100を所持していて、
マニュアル化 50
剣術 10
魔法適正 10
火魔法 10
残りは2か。
マニュアル化を取っているのもあるけど、渋い気がする。
世の中チートなんてものはないんだね。
隠密行動が気になっている。
気付かれなければ殺し合いにならないのだから、弱いわけがない。
面倒ごとに巻き込まれないようにするためにもあった方が便利だ。
それ以外だと、属性を2つ増やす、または光魔法を取る。
治癒関連のイメージが強い光魔法はあると便利なことは間違いない。
そして残りの質問は、世界の常識や、自分の強さ…これも常識に含まれるか。
これ次第で取るスキルも変わる。
とにかく情報は命。いのちだいじに。
そのために、どのような形で質問するべきか。
この条件で降り立った場合の自分の実力はどのあたりになる?
地球との常識の違いを教えてくれ?
うーむ…。
「2回目の質問をさせてもらう。
これから降り立つ[マザー]についてだが、地球との違いを教えてもらえないか。
日本で生活してきた俺と、現地人の常識の違いで、トラブルが起きてしまうと、
確実にトラブルに巻き込まれるような気がしてだな」
「なるほど。そのような質問は神陣営も想定していました。
今回転移する方は、全員が日本人というわけではありませんし、
当然マザーでは日本語でも英語でもない、独自の言語が使われています。
そこの部分で不便が生じてはつまらない…もちろん我々が、ですが、
そのため皆さんに[異世界言語]というスキルを付与します。
ポイントは頂きませんし、選んだ後にお知らせする流れでした。
そして、今回のような質問が来た場合にですが、
[異世界常識]というスキルを付与させていただきます。
ポイントは0、マザーで暮らす一般冒険者程度の常識を身に着けます。
例えば食事面で、このマズそうな黒パンは…、とあなたが考えた際、
「この黒パンはマザーでは一般的な食べ物として食されています」
と、脳内に流れてくるようになります。
実際、使ってみるとわかると思います。便利ですよ」
これは、ありがたい!
大正解の2つ目の質問だった。
「ありがとうございます!今、もう使えますか?」
「はい、付与完了しましたので、使ってみてください」
しかも、今から使える。
どれどれ、早速つかってみようじゃないか。