ソロダンジョン
ノーカーズとの臨時パーティーを組み、徹夜でダンジョンの8Fまでアタックし帰還した翌日。
ノーカーズは休暇日とのことで、ソロで軽くダンジョンに潜ることにした。
その為に残日の晩はすぐに寝て、日の出とともに起床、朝食を食べ昼用の保存食を買い、出発した。
南の洞窟に着いた。
マッピングは自分ではしていないが、大量に分かれ道がある訳でも無いため、なるべく記憶しながら潜っていきたい。
「メモ用にスマホが欲しい」
そう。この世界では紙とペンは割と高価なものである。紙は品質次第では安く手に入るが、ボールペンや鉛筆などという便利なものはなく、大体が筆で書いている。そのため持ち歩けるペンを持っていない。
日本ではスマートフォンでメモして、クラウド上に保存すれば別端末やPCからでも閲覧修正が出来たが、当然そんな便利機能はない。魔法も素晴らしいが、時々高度な文明が恋しくなる。
ダンジョンの1Fから3Fは適当に敵を倒しながら踏破する。道もそこまで複雑じゃないし、ソロだと行進速度がパーティーより早くなるため、サクサクだ。
4Fからはオークも出てくるため、探知で引っ掛かった敵はなるべく全て倒していく。
罠探知も常に展開して、細かい罠は全て回避…ではなか敢えて遠くから起動させて観察したりしてみた。
5Fに着いた。オークやソロのリザードマンをサンダーエンハンスやパラライズ、アイスボルトを確かめながら蹂躙する。サンダーエンハンスは別格だ。オークやリザードマンにもしっかり通用する。
これで斬りかかり、怯んだところにタイトやバランが仕留めればサクサク狩れそうだ。雷魔法を使えることを隠すのであれば使えないが…有用すぎて迷うところだ。
6Fに着いた。腹時計的にもまだ昼前、順調だ。探知ができて、隠密からの遠距離攻撃も可能、となれば苦戦する要素がないなと思う。しかし、一つ気になる反応がある。
「オークらしき反応が5つ。今いる道は一直線。オークの反応は右側の壁の5m奥あたり。そして6Fにそんな場所はなかったはず…。隠し通路でもあるのか?」
罠探知、生命探知をフルに使ってみる…が、特に何も分からず。
辺りを見渡しても、特に何もないただの一直線の通路。
試しに何度か壁を叩いてみても、都合良く隠し通路が見つかることもない。
「うーん、諦めるか?それか単純に回り道した先にいるだけか?」
よく考えれば隠し部屋があると決まった訳でもない。しかし、隠し部屋と言えば宝箱。レアアイテム。欲しい。少しだけ粘ろう。
壁に見えて実は通れます、とかないかな。
小さめのウォーターボルトをたくさん用意して、壁に打ちまくってみよう。水が弾けなかったり反応があればそこが怪しい。とりあえず20発ほど打ってみよう。
…来た!最後の1発が、当たったはずなのに水が弾けずに壁に吸い込まれていったぞ。
その箇所の前まで移動する。もう1発ウォーターボルトを打つが、同じ現象が起きる。
「…壁はあるように見えるけど、幻…的な感じか?」
少し勇気を出して触れてみよう。
手を伸ばす。壁に触れるあたりで、壁に見えた幻が解けて通路が現れた!
「よし!!!」
現れた隠し通路は幅2mくらいしかない。探知では曲がり角を曲がるった10m先にオークの群れがいる。
曲がり角の前でファイアボールを2つ準備。
角を曲がるとオークがいた。奥の2匹は武装している。とりあえず手前の2匹にファイアボールを発射!不意打ちで倒すことが出来た。
続いてエアエッジを2発。3匹目のオークを斬り裂き倒した。
残りの2匹が接近してきたが、サンダーエンハンスをかけて2匹を斬り裂き、問題なく殲滅できた。
ドロップは、なし。鉄の槍は運が良かったんだな。魔石を回収して、次の角を曲がる。生命探知に反応はないが、罠探知は反応があったため、そこは回避して進む。
「宝箱だ!!!」
やはり隠し通路の先には宝箱があった!
これぞダンジョンの醍醐味だ!
宝箱に罠探知は…反応なし。開けてみよう。
「…なんだこれ。ミサンガ?」
そこそこ大きい宝箱の中にあったのは、小さなミサンガらしきものだった。バランス悪い。
鑑定スキルを使ってみよう。
――
魔力増強のミサンガ
付けると魔力が上昇する。
――
うん。かなりいい代物だった!どの程度上がるのかわからないけど、これは嬉しい。
付けていても邪魔にならないアクセサリー、良いと思います。
そして変なアイテムじゃなくて良かった、というのと鑑定スキルで判別できるというのがすごく助かる。
この後7Fまで行き、オーク、リザードマン、ホーンドラビット、スティールバットなどを倒して魔石を集めた。ソロでもかなりの効率で狩りを行うことができた。ミサンガのおかげか、節約しながらの戦闘だったからか、魔力の枯渇は起きなかった。
またオークリーダーと対峙した時から、更に身体能力が向上している。その場からのバックステップで2mくらいは跳べるし、1時間くらい走っても平気になっている。
暫く7Fで狩りをした後、撤退した。ダンジョンを出たときはほぼ日没の時間となっていた。そのままギルドに向かい、魔石の売却を行おう。
「この量を1人でですか?!昨日ノーカーズとダンジョンから帰ってきたばかりだというのに…無茶しないでくださいね?」
受付嬢さんに心配されてしまった。冒険者は隔日で働くことが多いらしく、稼いだ次の日はパーッと飲んで休んで次の日の英気を養う、というのが普通らしい。
「魔石、全部で100個ほどありますね。強いランクの魔石はありませんが、それでもソロで1日これだけ集める人はあまりいないですよ。420ベルですね」
オークが主で、単価の高いリザードマンはソロでしかいないエリアだったため、ノーカーズと潜った時よりは儲けは少なかった。
とはいえ『小鳥の囀り』は1泊25ベル。10泊以上出来るし、贅沢しすぎなければおいしいものも食べられる。
日本円換算してみると、今のままでも日給4万円と考えるとかなりの高給取りではないか…?いや月15日出勤と考えて60万円。装備の更新などでどんどん消えていくし、年金もないから貯金のことを考えると、心もとないか…。
「キンジさんは常時依頼ばかり受けていらっしゃいますので、まだ昇格できませんが、ギルドの依頼の達成実績がいくつかあれば、Dランク昇格もすぐかと思います。ダンジョンを主戦場にする冒険者はランクに拘らない方も多いですが、高ランクの冒険者はそれだけで信用がありますので、他の都市に行った際には有利ですよ。ご検討ください」
「ありがとうございます。なるほど、考えておきます」
確かに自分のステータス向上のために狩りばかりしていたので、依頼をほぼ受けていなかったな…。
ダンジョンに行って分かったが、魔石はものすごく軽いので、100個くらいならかさばるけど鞄に入れて移動も苦じゃないのだ。この傾向は強まる気がしていた。
しかし、ボーンに一生留まるつもりもない。どうせなら王都も行ってみたいし、他国も行ってみたい。ギルドランクは世界共通なので、高ランクになっておくメリットも大きそうだ。
依頼などで時間を拘束されたり高ランクになるデメリットもあるので、Aランクなんかは目指すつもりはないが…。もう少しダンジョンに潜って鍛えた後、ランク上げに依頼を受けてみようか。
『小鳥の囀り』に帰ってきた。夕食を食べようと思ったら、女将さんが
「ノーカーズのバランから言伝を預かっているよ。明日、ダンジョンにまた行こう、8時にギルド集合、持ち物は前回と同じでいいってさ」
「ありがとうございます。いただきます」
よし、明日はノーカーズとダンジョン攻略だな。9Fも行けるなら行ってみたいな。10Fはボス部屋だけだから、流石に行かないだろう。
事前情報では、9Fはそこまで8Fと変わらないが、リザードマンの群れの数が少し増えているらしい。火に耐性があるやつらだが、サンダーエンハンスやエアエッジ、アイスボルトも自在に使えるようになったから、さらに有利に戦えるだろう。
部屋に戻る。ソロでのダンジョンも意外といいものだと思った。が、日帰りだと9Fまで行って帰るのは大変そうだ。徹夜は覚悟しないといけない。それが魔石はかさばるから、そっちの理由でも日帰りの方が良さそうだ。
現在のステータスを確認しておこう。
【技能スキル】
火魔法 Lv.3
水魔法 Lv.3
風魔法 Lv.2
雷魔法 Lv.2
光魔法 Lv.2
剣術 Lv.3
隠密行動 Lv.3
鑑定 Lv.2
生命探知 Lv.2
罠探知 Lv.2
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
25
色々上がっている。今日はいつも使っていた火ではなく、水風雷を使うようにしていたため、それらが上がっている。…まぁ風と雷はもともとが1だったため、上がりやすいのもあるだろうが。
鑑定が2になっているのも嬉しい。ミサンガを鑑定したからだろうか。
罠探知も地味にあがっているな。こちらは実感は特になかった。
鑑定を試してみよう。鉄の剣、今鑑定するとどうなるだろうか。
――
鉄の剣 +10
状態が良い。一般的な鉄の剣よりとても質が良い。魔力伝導も優れている。
――
表記がだいぶ変わっている。そして「+10」とはまたゲーム的な…。
ひょっとして神様が打っていたりしますか、これ…。そうだとしたら、本当に大切にしなきゃいけない代物かもしれない。鉄の剣と侮るなかれ、ですな。
またサンダーエンハンスが簡単にできたのは、「魔力電動にも優れている」のおかげなのだろう。
寝る前に、スキルを取得しておこう。
25 土魔法
45 闇魔法
ちょうど25あるから、土魔法を取得だ。
【技能スキル】
火魔法 Lv.3
水魔法 Lv.3
風魔法 Lv.2
土魔法 Lv.1
雷魔法 Lv.2
光魔法 Lv.2
剣術 Lv.3
隠密行動 Lv.3
鑑定 Lv.2
生命探知 Lv.2
罠探知 Lv.2
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
0
よし。あとは闇魔法だけだな。50ポイントは少し長いが、2週間くらいあれば貯まるだろう。
この程度の期間で属性が増えるのだから、異世界人だからなのか、マニュアル化なのか、相当俺は恵まれているだろう。
この調子でどんどん稼いで行こう。
―――――――――――――――――――――――――――
現在のステータス
【技能スキル】
火魔法 Lv.3
水魔法 Lv.3
風魔法 Lv.2
土魔法 Lv.1
雷魔法 Lv.2
光魔法 Lv.2
剣術 Lv.3
隠密行動 Lv.3
鑑定 Lv.2
生命探知 Lv.2
罠探知 Lv.2
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
0
【装備】
鉄の剣 +10
鉄の軽鎧
革の帽子
革のブーツ
魔力増強のミサンガ




