8F挑戦
「…さて、8Fだ。ここからは一層慎重になろう。ジョーの判断で撤退の指示も出してくれ」
「了解です」
「俺たちも何度かチャレンジしているが、良い結果は残せていなくてな。リザードマンのパーティー、スティールバットの群れもそうだが、ホーンドラビットは特に注意だ。ホーンラビットの比じゃない速さで突っ込んでくる」
何度も行動指針を確認する。8Fからは難易度が全く違うのだ、ノーカーズ3人では攻略できなかったところに、俺が入ることでどう対応できるか。事前に出来うるすべての準備をしておきたい。
現在のステータスも確認しておこう。
【技能スキル】
火魔法 Lv.3
水魔法 Lv.2
風魔法 Lv.1
光魔法 Lv.2
剣術 Lv.3
隠密行動 Lv.2
鑑定 Lv.1
生命探知 Lv.2
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
25
火魔法と剣術が3になっているな。やはり戦闘で使いやすいスキルは上がりやすいのだろう。
スキルポイントも25に増えている。しかしそこそこ戦闘しているにも関わらず、ダンジョン突入から8しか増えていない。新種の敵もいくつか倒したこともあってもう少し増えているかと思ったのだけど…4人パーティーで経験値が減っている、的な感じ…?
罠探知が取れるようになっているから、取っておこうか。ここまで罠に引っ掛かったことはないが、ジョーが2つほど発見して解除していた。踏んだら落石、の罠だった。そこまで大きくないので、痛いだけだが。
【技能スキル】
火魔法 Lv.3
水魔法 Lv.2
風魔法 Lv.1
光魔法 Lv.1
剣術 Lv.3
隠密行動 Lv.2
鑑定 Lv.1
生命探知 Lv.2
罠探知 Lv.1
【固有スキル】
魔法適正
マニュアル化
異世界の常識
異世界言語
【スキルポイント】
5
よし。試しに使ってみるか。
…特に見つからないな。この階段近くに罠はないのだろう。
しかし生命探知の方で、大きな反応がある。近くに3匹のリザードマンがいる。
「3匹、リザードマン。右の通路の80mほど先」
「来たね。こいつらを倒せないようであれば、ここで引き返すよ。さぁ、行こう」
ファイアボールを打つか。リザードマンは若干火に耐性があるみたいで、ファイアボルトだと余り削れているように感じられなかった。攻撃魔法のバリエーションも増やさないとな。
ファイアボール待機。リザードマン3匹が接近してくる。
…遠くにいる奴、剣と盾を持ってる。ジョーも気付いたようだ。
「奥の個体が武装してる!バラン任せるよ!キンジとタイトは残り2匹を早めに始末してバランの援護を!」
「「「了解!」」」
残り20mを切るあたりで、ファイアボールを当てる為に俺がダッシュで接近、近くのリザードマンにぶち当てる!
ゴォォォォォォ!!
火柱が立つが、その奥からリザードマンが腕を振ってくる。やはり仕留め切れない。一旦後ろに下がると、横からタイトが槍で一突き!早速1匹を倒すことができた。
ヤバイと感じたのか、残り2匹がダッシュしてくる。
武装しているリザードマンが剣を振るってくるが、バランがしっかり盾でガードしている。もう1匹がバランに襲い掛かろうとしているが、そこにジョーの矢が飛んできて、更にタイトの突き、俺のファイアボルト3発が打ち込まれる。タイトが連続突きを披露し、2匹目も倒すことができた。
しかし、武装リザードマンはバランを押し気味だ。盾でガードしつつ反撃を繰り出そうとするが、背の差が80cmほどあること、盾も大楯ではなく小型のため、限界が近そうだ。
「バラン、いったん引いて!」
リザードマンが剣を振るうタイミングで、ジョーの矢がリザードマンの肩に突き刺さる。
一瞬動きが止まったところでバランが下がり、タイトが突き。しかし盾でいなされ、後ろに戻る。
そのタイミングで準備していたファイアボールを打つ!流石にこれは直撃したが、倒すまでには至らない。
続けて剣で足元を切る!上背があるから、足元はお留守だろうと思ったが、的中。右脚を斬りつけ、上体が傾いた。
そこに下がっていたバランが左脚を斧で叩き斬る。これも相当効いている。
とどめはやはりタイト。いつの間にかリザードマンの背後に陣取っており、前に倒れたところを滅多刺し。
「うん、お疲れ様。うまくやれたね!やっぱりキンジの力は凄い!3人だけじゃこんな無傷で切り抜けられないよ」
「だな、リザードマン3匹相手に無傷。前なら考えられない」
タイトもうんうんと頷いている。
「とはいえ、俺も1人ではまだ切り抜けられない。パーティーの力だろう」
「うん、でも改めて、本当にありがとう」
ノーカーズは8F攻略が進まないことに本当に悩んでいたみたいだ。ジョーも弓ではなくて別の武器で前に出たりとか、試行錯誤していたみたいだ。
「礼はまだ早い。攻略してからだな」
「そうだな、まだ初戦を切り抜けただけだ。この調子で次も進まないとな」
その後、深い階層でピンチに陥っても困るし、ある程度戦闘に慣れておくため、階段付近で何戦かリザードマン相手に行った。
スリーマンセルが多かった。1匹が武装しているパターン。弓持ちもいたが、遠距離から魔法とタイトが早めに仕留めるパターンがハマった。
武装なしの4匹パターンもあったが、魔法をこまめに繰り出す事で特に問題も起きなかった。
最後の1戦は中々にハードだった。主にバランが。
剣盾のリザードマンが2匹、弓のリザードマンが1匹の3匹構成だったのだ。
魔法で弓持ちを奇襲。ファイアボールを打ち、バランとタイトが他を引き付けている間に弓持ちを殲滅。弓持ちの場合は、近接戦闘が素手よりも楽だが、それでも瞬殺とはいかない。その間、タイトとバランで凌ぎ頑張っている。
弓を倒せば、後はタイトと殲滅するだけだ。
7Fに戻り開けた場所で、カレー2食目をいただく。
そういえば…時間感覚がないな。腹時計だけが頼りだ。
「今日はお疲れ様。8Fでもやっていけそうなことが分かったから、今回の目標は達成です。ダンジョン内で野営する意味もないから、ご飯を食べたら戻ろうか」
「おう、それがいいな」
「了解だぞ」
リザードマンは武装なしの4匹、武装込みなら3匹なら何とかなることが分かった。中々の収穫だろう。
ちなみに、ドロップは一度もしなかった。渋い。
その後休憩を挟みつつ、1Fまで戻り、外に出た。無事に初のダンジョンから生還したぞ。
「…まぶしっ。朝か」
入ったのが昼前くらいだったから、1日弱いたことになるのか。リレ○ト欲しいなぁと思う。
「今回は7Fまでも戦闘を結構していたから時間が掛かったけど、最低限の戦闘にすることで1階層15分程で突破できるはず。日帰りで8Fに行くこともできるね」
「次回からはそうしようか」
「そうだな。んじゃボーンに戻るか」
戦闘の反省を皆でしつつ、のんびりボーンまで戻ることにした。道中オークとかホーンラビットが探知に引っ掛かった時はサクッと倒しつつ、昼にボーンに戻ることができた。
ギルドに入り、バーの一角で朝食を食べつつ、ダンジョンの振り返りと分配を行う。…俺は宿屋で食べたいから、ここでは飲み物だけだ。
「魔石とドロップ品の分配をしないとな。この槍は形状的にタイトも使えないからギルドを通して売却する。魔石も含めて、事前に話した通り4等分とさせてもらう」
戦力的に俺が少し多めに…と最初提案されたのだが、料理を振舞ってもらい、準備もせず、ダンジョンのマッピングもしなくて済んだことを考えれば4等分でもお釣りが来る。美味いカレーを頂いたから材料費でも…と思ったけど、断られてしまったからな…。
魔石は魔力が充填されていて、魔力を使った家具に使われる。コンロとか。そのためギルドで買い取りをしている。品質の良いものは出力も高く、重要な機械に使われるため高価になっていく。もちろんリザードマン程度の魔石は、安い。討伐証明のようなものだな。
現状魔石を持っていても使い道がないため、全売却してもらった。将来的に魔道具などを作れるようになったら必要になるが…そこまで手を広げるべきではない気がする…。
「魔石を売却してきました。これがキンジの取り分です。槍のお金は後日お渡ししますね」
ゴブリン~リザードマンクラスだと、1つあたり2ベル~10ベル程度らしい。武装リザードマンが一番高い。
4等分とはいえ美味い食事を出してもらったので、端数はジョーに押し付けて、800ベルを貰った。…探知に引っ掛かった敵は積極的に倒したからな、1日の収入としては文句なしだろう。
「ああ、ありがとう。今日は有意義だった。また近いうちに行こう」
「「「もちろん(だぞ)!」」」
ノーカーズとはこれで別れ、『小鳥の囀り』に向かった。
「ただいま」
「おかえりなさい!無事でよかった!」
マリーちゃんが待ち構えてたかのように突進してきた。かわいい。
「ほら、ちゃんと戻ってきただろ。おかえり。朝ごはんは食べるかい?」
「はい、まだ食べていないので、頂きます」
さて、結果的に徹夜になってしまったので、今日の残りは積極的な狩りはできないな。
どうしようか。




