はじまり
「あれ…ここは…?」
見渡す限りの白。
あれ、普通に自宅で寝ていたはずなのだけど。
そもそも立ってるし。
どこ、ここ?
「だれかー?いませんかー!?」
「お、気が付いたようですね」
一瞬光ったと思ったら、目の前に金髪碧眼超絶美人のお姉さまが現れた。
「あら、嬉しいこと」
心を読まれた?
「あぁ失礼、ついつい」
「ついついじゃないですよ。ここはどこ?あなたは誰?」
「そうですね、説明してあげましょうか。
ここは、私が作った、私だけの空間です。
私は世界を治める神のうちの一柱、エリスと申します」
神?え、何を言っているの?
「私としてはあまり気乗りがしないのですがね。
あなたは長く退屈な日々を過ごしている神々の遊びに巻き込まれたのです。
私たちがが地球上からそれぞれ選抜し、とある異世界[マザー]に転移させて、
観察しようなんてことになってしまったのです」
「え…じゃあ、俺は日本に帰れなくて、マザーとやらに行かなきゃ行けないんですか?」
まぁ別に、残してしまった家族や恋人がいるわけでもないけど…。
「はい、そうです。選抜するうえで、いなくなると影響が多そうな方は除外しています。
あなたは天涯孤独の身で、かつ能力も高かったので選ばせていただきました」
サラッと悲しいこと言われてるわ。
「そうですか?あのまま日本にいても、あなたの才能は埋もれるだけでした。
あなたも気付いていない優れた才能がいかんなく発揮できる、剣と魔法の世界、楽しめると思いますよ?」
まぁファンタジーな世界に憧れがなかったかと言えば、嘘になる。
ゲームは大好きだ。特にRPG。特に自由度の高いキャラビルドの出来るゲーム。
それを体験できるのであれば、とても楽しいだろう。
ただ、こういう世界は実力主義。ゲームでは描写しきれない残酷な現実も待ち受けているだろう。
リアルで命のやり取りなんて当然したことがない。せいぜい殴り合いの喧嘩程度だ。
「不安に思う気持ちはわかりますが、いずれ世界に順応できるはずです。
何より、もう後戻りはできないのですから、覚悟を決めて頂ければと」
「わかった。やれることはやろう。
ちなみに向こうの世界で何か目的はあったり…?
魔王とか、戦争とか。
「ありません。強いて言えば、ライバルたちより活躍してください」
安心した。魔王討伐なんて言われたらビビってしまうからな。
そういえば…
「何か特典とかないんですか?スキルプレゼント!とか」
ほら、こういう展開でありがちなやつですよ。
「ありますよ、流石に今まで地球で生きてきたあなたに、何も持たせず放り出すわけにいきませんから。
ただし、それがあれば最強になれるようなものは渡せません。
ここから選んでください」
何やら色んなウィンドウが出てきた。
SFである、何もない空間にディスプレイが出るような、アレだ。
どれどれ…。
所持ポイント 100
10 魔法適正
10 火魔法
10 水魔法
10 土魔法
10 風魔法
15 雷魔法
20 光魔法
30 闇魔法
10 剣術
10 短剣術
10 槍術
:
15 錬金術
15 薬師
15 鍛冶
20 隠密行動
:
20 調理
20 農耕
10 釣り
20 採掘
:
40 鑑定
:
40 召喚術
40 魔物使役
:
50 マニュアル化
:
「やばい、突っ込みどころがたくさんあるんだけどどうしよう」
「声に出てますよ、声に」
あ、びっくりしすぎて声に出てた。
いやホント、これはどこから突っ込み…質問をすればよいのか。
そして選ぶにしても数が多すぎて難しい。
「いくつか質問をしてもいいですか?」
「はい、どうぞ。ただしこれ以降、私が回答できるのは3回までと決まっています。
それをよく考えて質問してください」
神々の遊戯のルールか。
よく考えて質問をしなければ。
ここが運命の分かれ道だろう。
火魔法、剣術、薬師…
文字通り読んでわかるスキルも多い。慣れ親しんだゲームたちで幾度も見てきた。
そしてそれらは、分かりやすく役に立つであろうことも想像できる。
特に気になった、質問したいのはここらへんだ。
1.隠密行動
剣と魔法の世界、気付かれずに一撃必殺出来れば、きっと強い。
T〇Sでも隠密弓矢はお世話になったものだし。
気になるのは、20もポイントを使って、どの程度の効果があるのか。
…きっと抽象的な質問になる。そして回答も微妙だろう。
2.鑑定
40ポイントも使う。
ネット小説定番になりつつある鑑定の能力とほぼ同等であれば、取るべきだろう。
D〇3の商人が使う程度の能力であれば、必要なさそうだ。
ただ完全に未知の世界で信頼できる情報を得る手段を手に入れられるのだから、有用なのは間違いない。
3.魔法適正
火魔法などとは別にあるが、このスキル無しで火魔法を持っていた場合は、
火魔法を扱うことができるのだろうか。
できるが、威力は控えめになる、できない。
どちらも予想できる。
この世界で活躍する魔術師が、一般的に所持しているものなのかどうかで判断できる気がする。
4.マニュアル化
これはもう、全くわからない。
パワプ〇のサクセスモードのマニュアル・オートの違いであれば、マニュアル一択なのだが。
ポイント半分も使うのだ。こうであればいいな、で取るのは気が引ける。
悩む、悩むぞ。
3回しかチャンスはないんだ。
それにスキルのこと以外にも質問したいことは山ほどある。
恐らく同時に連れてこられている同郷の人たちのこと。
この世界に連れてこられた本当の目的。
そもそも言葉は通じるのか(言語系のスキルはなかった)。
うぅ、頭が痛い。