決戦前
やっとだぁ!
やること全部済まして、横になってログイン!
見慣れた天井だ。<豚の丸焼き亭>で借りてる部屋だ。
いよいよこの日がやってきた。
外に出ると、街がなんだかピリピリしてる気がする。
「ちょっとお待ち」
「ターシャさん」
「これを持っておゆき」
ターシャさんから渡されたのはお弁当。
「いつでもいいから、戦闘前に食べるんだよ」
「分かりました。ありがとうございます」
「頼んだよ」
ターシャさんと別れて、街を歩く。
そして、思い出す。集合場所の約束してない。どうしよう!
あ、フレンドチャットがあるね。便利な世の中だ。
えっと、『今、どこにいますか』っと。
いやぁ、うっかりしてたね。焦ってたこともあるし、ポーション作成で完全に忘れてた。
気をつけないと。
「装備の更新したぜ」
「ポーションないわ―」
「魔物っていつ来るんだ?」
「街の人も一緒に戦うのかぁ」
「邪魔しないでほしいなぁ」
ざわざわと今回のワールドクエストで浮足立っているプレイヤーたち。
まあ、住民たちと違って、プレイヤーにとってはイベントだもの。覚悟が違う。
大切な人を失うわけではなく、住む家を失うわけでもない。遊ぶ場所が無くなるだけだから。そして、気づくのかもしれない。住民たちもまた、この世界に生きている人たちだと。
自分たちと同じ、世界に生きる人々だと。もちろん、考えが変わらない人も居るだろうし、こういう考えをそもそもしないひともいるんだろうな。
プレイヤーたちにこのイベントがどんな影響を与えるかは置いといて、失敗できないからね。一回ぽっきりだもの。
そうこうしてたら、ヴァイスさんとガンテツさん達とも連絡が取れたので、北の門の外で合流する。
ちょっと門番さんに訝しまれたけど、気にしない気にしない。
「チェリー」
「ヴァイスさん、おはようございます。今日はよろしくお願いします」
「よろしくね」
「おいこら、チェリー。集合場所決めるの忘れるなんて、どういうつもりだ?」
「すみません、ガンテツさん!うっかりしてました。次はもうしません!」
「まったく、気をつけろよ」
「はい・・・」
面目ない。
誘ったのは私なのに。すみませんでした。
「お姉ちゃんって本当に、うっかりさんだね」
「ぐはっ!」
ハナミズキによる致命的な一撃。
決戦前なのに、再起不能はやめてくだせぇ。
「おら、ごちゃごちゃ話してないでさっさと行くぞ。時間がねえ」
「はい!」
ガンテツさんに言われて、森を見る。なんか、前来た時より怖く感じる。
でも、聖霊様を止めないといけない。皇子様の思いを伝えないと。
この悲しい怒りを鎮めないと。
さあ、行こう。聖霊様のもとへ。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。