ポーションを渡そう!
前あげていた話をまとめたものです、
話を一話にまとめるために少し文を変更しましたが、本文に影響はありません。
【大量生産】は大量に生産するとより効果にボーナスが入るパッシブのアーツだ。
すっごく便利。しかもスキル経験値微増。パッシブってところがもう、最高にいい。まあ、ボーナスって言ってもちょっとだけだけど。
「・・・さて、これをポーションにするか」
ハナミズキが、取ってきた薬草の山が二つ。
どれだけ取ってきたの?しかもまた、取りに行ってるからね。
まだまだたくさんあるなぁ(白目)
モギモギ草とそうじゃないのと仕分けするところからかぁ。
「!!」(ファイト!マスター!)
「うん・・・。ありがとう、ヒスイ」
やるっきゃない。
**
「お姉ちゃんすごい!」
「すごいでしょーおねえちゃんがんばったんだよー」
「・・・大丈夫?」
これが大丈夫に見えるなら、ハナミズキもきっと疲れてるね。
わたし、とってもつかれたの。
だって、たくさん作って山を減らしても減らしてもハナミズキが【広域採取】で取ってくるペースに追い付かないんだもん。作っても作っても山が減らない。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「いいよ、私も渡す人いるし。それに、経験値結構入ったからね」
そう、ポーションをたくさん作ってたら経験値が入ってスキルレベルだけじゃなくて、種族レベルも上がったのだ。生産メインじゃない私は、生産でレベルが上がりにくいはずなのに二つも上がった。それだけたくさん作ったということだ。
「ログアウトする前に渡しに行こうか」
「うん」
「私は、住民の人は四人知り合いがいるよ。ハナミズキはどれくらいいるの?」
「うーん、数えたことはないかな。でも、たくさん!」
「一人何本くらいで分けようかな。・・・五本くらい?」
「それくらいかなぁ」
「冒険者ギルドと警備隊に渡すよね。あと、私たちが使う分も残しておかないと」
「じゃあ、僕たちの分は一人当たり十本あれば十分だよ。最悪、回復魔法で回復すればいいし。・・・冒険者ギルドと警備隊の分はこれぐらいかな」
「じゃあ、私が持ってくね」
「りょーかーい」
たくさん作ったからこそできる荒業。
それじゃ、まずはリーナさんに持っていこうか。
**
図書館、図書館。
「あら?」
「あ、リーナさん。こんばんは!」
「こんばんは、チェリーさん。どうかなさいました?図書館に御用でしたか?図書館はしばらく休館ですよ」
「え、そうなんですか!?」
「ええ。街の一大事ですから。図書館にいたら、魔獣が入ってきてしまったとき危険ですからね」
確かに。会えない可能性もあったのか。
たまたまでも会えてラッキーだったね。
「私、リーナさんに用があって」
「私にですか?何でしょうか?」
「これを受け取ってほしくて」
「これは・・・ポーションですか!?しかも高品質!どうしてこれを私に?」
「えっと、リーナさんにはお世話になったので。・・・それに、住民の方は私たち異世界からの旅人のように何度も甦らないですから」
「確かに、私たちはあなた方のように世界からの祝福は持っていません。でも、こんな高品質のポーションは最前線で戦うあなたたちが持っておくべきです」
「大丈夫です!たくさん作りましたから。受け取ってください」
「・・・分かりました。大切に使います」
「いえ、じゃんじゃん使ってくださいね。万が一が起こるなんて嫌ですから」
「はい」
「では、私はこれで」
「チェリーさん、ありがとうございます。・・・お気をつけて」
「はい!」
さあ、あと三人!
次は、ターシャさんのところに行こうか。リーナさんみたいに避難するかもしれないからね。
**
「ターシャさん!」
「おや、チェリーじゃないか。どうしたんだい?こんな時間に」
「夜分遅くにすみません」
「構わないけど、何かあったかい?」
「ターシャさんにポーションをお渡ししたくて」
インベントリから、ポーションを5本取り出す。
それを見て、ターシャさんが目を見開く。
「こりゃ驚いた。この時期にポーションだなんて」
「受け取ってください」
「いいのかい?お前さんは戦うんだろう?そっちの方が必要になるじゃないか」
「大丈夫です。たくさん作りましたから、私たちの分はちゃんと取ってあります。それに、他の人に渡せるだけのポーションがあります」
「・・・ありがとう、チェリー」
「いえいえ。ターシャさん、気を付けてください。・・・この騒動が終わったら、またおいしいご飯を食べさせてくださいね」
「任せな!」
ターシャさん、かっこいいです。
姉貴、って呼びたくなっちゃう。お姉ちゃんじゃなくて、姉貴だよ。
なんか違うのよ。あふれ出る魅力にやられそう。ぽーっとしてしまう。
・・・つ、次に行こう!
**
わ、夜の神殿って、結構綺麗かも。
昼の神殿もきれいだけど、夜の神殿は神秘性を増してるというか。
でも、あかりが少ないせいかなんだか不気味。
前も見づらいし、ぼやーっとしててお化けとか出てきそう・・・。
は、はやくリヒトさんを見つけないと。もしかして、もう寝ちゃってるかな。
「リ、リヒトさん・・・。いますか?」
小声で、呼んでみる。
・・・聞こえないよね。そう、当たり前の事でした。
仕方ない、ちょっと徘徊して見かけなかったら、誰かあった人に預けようかな。
あ、神殿用のポーションを用意してなかった。
ギルドとかの分から、出そうか。
そう、廊下を歩いてるのにメニュー画面を見てた私が悪いのか。
「チェリーさん」
ぬーっと出てきたリヒトさんが悪いのか分からないほど
「うにゃあああああああ!!!」
驚いてしまった。あの状況で驚かない人なんていないよ、絶対!!
**
「すみません、驚かせるつもりはなかったのですが」
「びっくりしました・・・」
私は今、おんぶされてる。
もう一度言う。おんぶされてます。
なぜかというと腰を抜かしたからだ。驚きすぎて、腰を抜かすとか!恋愛漫画じゃあるまいし・・・。
もっとさぁ、好きな人とかにドキドキしすぎて腰が抜けちゃったとかそういうのを想像してたのに、この状況はなんだかなぁって思うの。少女漫画の読み過ぎかなぁ。
まあ、この状況もすっごくドキドキするよ。男の人におんぶされるなんてさ。
まるで、少女漫画のワンシーンみたいじゃない?これはこれでありかも・・・?
「チェリーさん、すっごく心臓がドキドキしてます」
ドキリ。
もしかして、意識してるのばれた?
どうしよう、なんて答えればいいのかな。どきどき。
意識してるのかって聞かれたらどうしよう!
取りあえず、同意?同意かな?
「まだ、びっくりしてます?」
「そそそそ、そうなんですよー!・・・え?」
「まさか、そんなに驚かせてしまうなんて、すみません。次からはちゃんと気をつけますね」
「いえ、そんな・・・」
なんか、違う!
想像と違ってちょっとがっかり。まあ、神官さんだものね、色恋に疎くて当然でした。
・・・って、テンパってここに来た趣旨を思いっきり忘れてたよ。
「はい、着きましたよ」
「ここは、礼拝堂・・・。綺麗」
ステンドグラスにやわらかい月の光が差し込んで、礼拝堂を優しく彩っていた。
昼とはまた違う光景に目を奪われてしまった。
「綺麗ですよね」
「はい。・・・あ、そうだ。リヒトさんに渡すものがあって」
「なんでしょうか?」
「これです」
インベントリからポーションを出して、リヒトさんに渡す。
「こんなにたくさんいいんですか?」
「はい。こっちはアルさんの分ですけど」
「ありがとうございます。・・・よく見たら、MPポーションまでありますけど」
「あ、怪我人を治療することもあるかなって思いまして」
「助かります」
「リヒトさん、いつもありがとうございます。また、魔力操作の訓練に付き合ってください」
「・・・私で良ければ、いくらでも」
ああ、リヒトさん。いい人だあ。
ぼーっとしてた私が悪いのに、腰が抜けた私をおんぶしてくれて、こんなきれいな光景を見せてくれるなんて。
神官さんじゃなかったら、きっとモテモテだね!
「じゃあ、私はこれで!」
「他の場所にも行かれるのですか」
「あとは、冒険者ギルドと、警備隊の所です」
「夜道にはお気をつけて。みなさん、気が立っていらっしゃるでしょうから」
「分かりました」
ちょっと怖いかも。何も問題が起こらないといいなぁ。
・・・あ、今なんかフラグが立った気がする!
**
「おい。それは、そこじゃねえって言っただろうが!」
「そんなこと言ってません!」
「今言った!」
「どこに置くんですか?!」
戦場だ。街の中だけど。
言い争う声が聞こえてくるのは冒険者ギルドだ。
あと、中には警備隊の人がいます。そう、ポーションを渡すチャンスです。
だけど、一向に中に入れません。なぜかって?
怖いからです。こんな怒号が飛び交う中入る勇気は私にはありません。
邪魔にならないよう、陰から覗いてるけど。
入らないと渡せない。どうしようか。
「あ?なんだあ、嬢ちゃん。ここは、子どもの来るところじゃねえぞ?」
ひい、声を掛けられた!どうしよう、知らない人だ!
しかも顔、超怖い。どうして、顔に大きな切り傷があるのぉ。
ポーションや回復魔法がある世界なのにぃ。
背が高いよぉ。威圧感はんぱない。
小さいとこういう時すっごく大変。首痛くなるし。
「えっと、あの、その」
「なんだぁ?」
「おいおい、怖がってんじゃんか」
「はぁ?んなわけねえだろ。どこが怖いんだよ」
「全部だよ全部。お前、顔怖いし。背高いし。そんくらい小さい子だと、お前巨人だから」
「な、そうなのか!?じゃあ、俺を見てガキどもが良く泣くのは・・・」
「お前が怖いからだろ」
「なん、だと!?」
あ、私この人大丈夫かも。全く怖くなくなった。
むしろ、この人結構かわいい。
怖がっちゃって申し訳ない。
「あの」
「な、なんだ?」
「私、アルさんと警備隊の方に用があって」
「なんだ。俺、警備隊だし聞くよ」
この人、警備隊だったのか。あ、よく見たら制服着てた。それにしても警備隊に全然見えない。
ごろつきかと思っちゃった。・・・きっと、顔で苦労してきたんだろうな。本人無自覚だろうだけど。
「これを、皆さんで使ってください」
「?・・・!これ!」
「たくさん作ったので受け取ってください」
「いいのか、こんなに?」
「はい。・・・私が作ったってあんまり言わないでくださいね」
「なんでだ?」
「注目されるのは嫌だし、それに・・・異世界からの旅人達になんていわれるか分かりませんから」
「?・・・まあ、分かった。アルさんたちには伝えるけどな」
「分かりました。ありがとうございます。・・・お気をつけて」
また、この人とお話しできたらいいな。
そのためにも特殊クエストを達成しないと。
不安しかない。でも、やるっきゃない。
皇子様の思いをつなげないと。ハッピーエンドが一番だもの。
他のプレイヤーたちに恨まれようと。どう思われても構わない。
後悔だけはしたくないからね。
読んでいただきありがとうございました。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。