十人十色。
「本当にすみません・・・」
「そんなに謝らなくていいよ。モイラさんは気にしなくていいからね」
「そうだよ。ちょっとびっくりしただけだから!」
「でも・・・」
「ハナミズキがやり過ぎちゃっただけだからね?」
「え?」
弟よ、本当に自覚がないのかい?
これは教育が必要なのでは・・・?
ハナミズキがバカ兄の影響を受けてるなら、姉として私がちゃんと導かなくては。
あの兄だけは、ダメだ。
まずは、女の子との接し方を少女マンガを使って教えるとか?
なら、参考になる本を探さないと。
それにいくつかのパターンが必要になるね。
少なくとも10種類くらいかな。
「っ!!」
「どうかしました?」
「なんだか寒気が・・・」
「大丈夫ですか?毛布いります?」
「大丈夫。異世界からの旅人は風邪ひかないから」
「そうなんですね~」
「うん。・・・お姉ちゃん、思考の海から戻ってきて?そろそろ帰ろうよ」
「はっ!・・・そうだね。モイラさん、では」
「はい」
「お花、大事にするね!」
「ありがとうございます」
モイラさんに手を振って別れて、町に戻る。
なんだかとても長い間、あの家にいた気がする。
ちょっとの時間しかいなかったはずなんだけどね・
結局モイラさんには、カーネーションをもらった。鉢ごと。
さすがにそれはどうかと思ったが、モイラさんが譲らなかった。
結局、私たちが折れてもらうことになった。
モイラさん曰く、他にふさわしい人がいたらその人に譲ってほしいとのこと。
これって、聖霊にってことだよね。
他の花ももらったけど、カーネーションは皇子の事もあって意識してしまう。
「綺麗だね、お姉ちゃん」
「そうだね」
「渡したいね~」
「うん」
本当にね。
失敗したらどうしよう。
他の人に知らせた方が良かったかな。
そんなことを考えてしまう。
でも、知らせない方がいいってハナミズキが教えてくれた。
みんながみんな、同じ意思で動くことはないからって。
私の、聖霊を傷つけたくないって気持ちをみんなが思うわけではないもんね。
十人十色。みんな、違う人間だからね。当たり前だ。
きっと、聖霊のことを知らせなかったことで、きっと叩かれるかもしれないけど。
後悔しないように、頑張ろう。
「あ」
「ん?」
「ちょっと、待とうか。お姉ちゃん」
もう、ギルドは目前なのに?
町に帰ったら、ギルドに直行した。
あの家に行くときに倒した魔獣の素材を売るためだ。
「どうしたの?」
「なんか、ギルドでもめてるみたい。今行ったら、巻き込まれるかも」
「え、もめてる?何かあったの?」
「うん。それが・・・」
ハナミズキがそう言ったとき、ギルドの中から人が飛び出してきた。
まるで、投げられたみたいに。
「てめえ、マジでふざけんな!」
・・・一体、何事?
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。