呼び方
全然進まない!
「モイラさん、お邪魔しました」
「いえ。また、いらしてください。・・・主様も喜びます」
「分かりました」
「絶対にいらしてください。ちゃんとしたお茶の淹れかたをお教えしたいです」
「?・・・分かりました。絶対に来ます」
やけに押しが強い気がする。気のせいかな?
でも、お茶の淹れかたを教えてくれるのはありがたいなぁ。
モイラさん、おいしいって言ってたけどすっごく微妙そうな顔でお茶を飲んでたもんね。
あのお茶、私が飲んでもおいしく感じなかったもん。
おいしいお茶を飲みなれてるモイラさんからしたらきっとすっごく未知の味だっただろうね。
「あの、もしお二人がよろしかったら・・・」
「はい?」
「私の事はモイラと呼び捨ててください」
「えっと・・・」
「あと、私に対する敬語をなくしていただければ、と思います」
「でも・・・」
「分かったよ、モイラ!」
ハナミズキ。順応が早いよ、早すぎる!
びっくりするくらい早い。
私なんて、まだ心の準備ができてないのに!
「お姉ちゃん?」
「ちょっと、待って。心の準備が・・・」
「人の名前を呼ぶのに、心の準備って何?」
「だって、こんなきれいな人に対して、敬語抜きで呼び捨てとか・・・。ドキドキするじゃん!」
「お姉ちゃん。思春期の男子じゃあるまいし」
ハナミズキの順応が早すぎるんだよ。
私だって呼びたいよ。
思春期の男子であるハナミズキにそんなこと言われるとなんか悲しくなる。
「ほら、お姉ちゃん」
「うう・・・。モ、モ、モモモモモ!」
「もが多いよ」
「モ、モイ、モイラ」
「はい」
「こ、これからよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
ドキドキしすぎて心臓が痛い。
ほわぁ、緊張したなぁ。
「あ、もしお時間よろしければ」
「うん?」
「お花を持って帰られませんか?」
「え?お花って」
「主様が育てられていた花があります。花は私が手入れしていましたので、今でも咲いています」
「今も?すごいね」
「何本かもらってください」
「いいの?」
「はい。主様もたくさんの方に見ていただけるほうが喜ばれると思います」
「分かった、もらうね」
こちらです、と案内された先に広がっていたのは、想像していた花壇とかではなかった。
もはや花畑だった。
すごい。綺麗。
「モイラ、すごいね」
「モイラ、すごい。こんなに広い土地を手入れしてたの!?」
「はい。・・・あまりやることが無かったもので」
現実世界でも見たことある花や、全然知らない花も咲いていた。
この世界のオリジナルかな?
なかには現実じゃ絶対ないよね、って花もある。
・・・なんか、てらてらしてうにうにしてるのがついてるんだけど。
あれって、まさか触手?
近寄りたくない花だね。
「お姉ちゃん!」
「どうしたの?」
「こっち来て!こっち!」
ハナミズキに呼ばれた所に行く。
はしゃいじゃってかわいいなぁ。私の弟は天使だね。
「これ見て、これ」
「なになに?・・・あ、これは」
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。