お茶
途中で視点が変わります。
・・・眠かったので、変なこと書いてるかもしれません。矛盾してたら、お知らせください。
「物がもとに・・・」
「今、何したの?!」
「はい、≪修復≫しました!」
「修復?」
「あ、はい。スキル≪修復≫です。私、物をよく壊すので頻繁に使っていたらレベルがたくさん上がったんです。昔は小さなものしか直せなかったのですが、今では範囲も広がり効果も上がったんです」
「それはすごいですね」
「ねえねえ!モイラさんは武器とかも直せるの?」
「そうですね」
「すごい!」
「ありがとうございます」
本当にすごい。
あんなに悲惨だったキッチンがピッカピカになった。まるで新品みたいだ。
≪修復≫スキルが優秀すぎるね。この力があれば家を壊しても元通りにできちゃうかも。
・・・というか、壊し過ぎるから優秀になるまで使ったんだろうね。
「じゃあ、お茶淹れますね」
「あ、手伝います!」
「僕も手伝う!」
「いえ、お二人の手を煩わせるわけには・・・」
「モイラさん、危なっかしいんだもん」
「え!?」
「そうですよ。見てるこっちがひやひやします」
「モイラさんはそこに座ってて!」
「あの・・・」
これ以上、モイラさんに壊れ物を持ってほしくない。
いくら直せるとしても、物が壊れないことに越したことはないもんね。
大体、心臓に悪すぎる。
「お茶を淹れた経験なんてほとんどありませんが、食器は割りませんから。安心してください」
「モイラさんは飲める?」
「はい。飲めるように設計されています。ただ、エネルギーなどには回されず、内部で消えます」
「え、消えるの!?」
「はい。魔法でそうなるようになっています。消化と同じようなものです」
「そうなんだ・・・」
**
SIDE モイラ
私は機械メイドのモイラです。
機械メイドは主のために仕え、身の回りのお世話をします。
機械メイドは構造上、一人で全て回すことができます。護衛も食器洗いも洗濯も料理もすべて。
人件費の削減に!といううたい文句で販売された、「機械メイドE-3381型00214」が私です。
私が作られたころの機械メイド市場は、より人間らしくが売れ筋だったようで、様々な個性の機械メイドが作られた時代です。
作られるすべての機械メイドにそれぞれの個性があるのです。
それぞれにツンデレと呼ばれるものや天然などの個性が溢れていました。
その中で、私はドジという個性が与えられました。
ドジという個性はメイドという仕事に全く向いていませんでした。
最初にお仕えしたお屋敷では食器を割り、花瓶を割り、窓ガラスも割り・・・家じゅうの割れるものをすべて割ってしまいました。そして追い出されてしまいました。
次のお屋敷では、うっかりその家の家宝を壊してしまいました。
その次も、その次も・・・私は全ての家でドジをしてしまい、追い出されてしまいました。行くあてを無くし、『ダメイド』と呼ばれ、あはや破壊処分を受けるというところで今の主様に出会ったのです。
主様はとても素敵な方でした。
私が物を壊してしまっても、笑って次は気を付けるようにと言ってくださりました。
うっかりキッチンを爆発させてしまっても一緒に掃除をしてくださいました。
塩と砂糖を間違ってしまっても、おいしいよと全て食べてくださって、口直しにと料理を作ってくださいました。
・・・私がダメダメすぎて、主様の素敵さが際立ちますね。
主様は、毎日一日の終わりにお茶を淹れてくださいました。ハーブティーだったり、紅茶だったり。珍しいところで東方のほうの緑色のお茶まで。たくさんのお茶を淹れてくださいました。
主様が淹れるお茶は絶品でした。
作られた味覚の私ですら、そう感じたのです。
時がたち、人間の主様は神々のもとにお帰りになってしまいました。
そのあと、私は主様の最後の命令に従い、主様の待ち人をずっと待っていたのです。
とても静かで、長い時間でした。
どれだけ失敗しても、許しの声は聞こえてきませんでした。
いつの間にか、目から水がこぼれていました。
そして長い時が経ち、待ち人が現れました。
せめて、機械メイドらしくと振る舞ってみましたがすぐにボロが出てしまいました。
恥ずかしいです。
主様が残した手紙に、私のことが書かれていてとてもうれしいですが私でも家を壊したことはありません。
たくさんのものを壊してしまい、いつものように≪修復≫で直すと、とてもびっくりされておりました。
なんだか新鮮な反応のように感じられました。
主様のアドバイスに従って取ったスキルですが、たくさん使いましたのでかなりレベルが上がっていたようです。
待ち人にお茶を入れようとしたのですが、危なっかしいからと茶器を取られてしましました。
こうやって心配されるのは、主様がいたとき以来です。
なんだか胸がポカポカするような気がします。・・・気のせいかもしれませんが。
「お姉ちゃん、紅茶って何分くらい蒸すんだっけ?」
「え、蒸す?・・・ん~、5分?」
「そんなに長かったかなぁ?」
「もう、飲めればいいの!」
「・・・そうだね」
・・・なんだか、渋そうなお茶ができそうですね。
お二人にお茶を淹れた経験がないのは本当のようです。
「モイラさん、お茶を淹れましたよ」
「大丈夫?ぼーっとしてるよ?」
「いえ、大丈夫ですよ。・・・お茶、いただきますね」
「はい、どうぞ」
飲んだお茶は昔主様が淹れてくださったお茶と比べるのもおこがましいくらいひどい味でした。・・・まあ、分かっていたことですが。
「うわ、渋い!」
「やっぱり、5分は長すぎたんだよ」
「それだけで、こんなに渋くなるものなの?」
「なんか、前に本で読んだことあるよ」
「えー・・・」
いろいろとおかしいところがありますから、それだけを直してもまだ渋いはずです。
あと、茶こしを使ってください。カップが茶葉まみれです。味を直す以前の問題です。
「あ、モイラさん。おいしくないですよね」
「残したほうがいいよ、これ」
「確かに」
「いえ。大丈夫です」
「え?」
「おいしかったですから」
「え!?」
さっきより、胸がポカポカします。
紅茶を飲んだからでしょうか?
どうか、この胸のぬくもりが消えませんように。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。




