モイラさんは超がつくほど、ドジっこ
「うぅ・・・ぐすん」
しばらくして、やっとモイラさんが泣き止んだ。
私たちは最初呆然としてしまって何もすることができなかったが、何とか正気に戻って慰めた。だが、心の中には疑問が残ったままだ。
・・・この人、本当に機械のメイドさんなんだよね?全然そんな風に見えないよ。
「すみません・・・お恥ずかしいところをお見せしてしまって」
「いいえ、全く気にしてませんよ」
本音はすっごく気になるんだけど。
さっきまでの機械みたいな話し方はどうしたんだろう?
人間としゃべってるみたいに感じるよ。
「私は機械メイドなのに鈍臭くて、主様にもご迷惑ばかりかけてきました。他の子は全て完璧にこなせるのに、私だけ・・・」
「そ、そうなんですね」
「私は何をするにしても全然ダメで。水を運ぼうとしたら床にぶちまけたり、掃除をしようとしたら物を壊し余計に散らかしてしまったり。私、本当になんにも出来ないんです」
「・・・・」
「うわぁ・・・それはすごいね」
「お料理をしようとしたら、キッチンを爆発させちゃうし、よくこけちゃいます」
この人すっごくドジなんだなぁ。
それにしても機械メイドってこんなに個性があるのか。
他の子とも会ってみたいな。
「私がダメダメだったので、今の主様の前のお屋敷でも、前の前のお屋敷でも、怒られてばかりで・・・。主様に出会わなかったら、私はきっと処分されてました」
「・・・そう、なんですね」
「・・・すみません。お客様にこんな話をしてしまって」
「いいえ。・・・ずいぶんと苦労をされてきたんですね」
「あ、いえ。苦労といいますか、私のダメっぷりが引き起こしたことなので、自業自得です。今の主様に捨てられなかったのが不思議なんですよね」
「でも、私はモイラさんは素敵だと思います」
「僕もそう思う!」
「え?でも・・・」
「モイラさんは、そのドジなところが素敵といいますか・・・」
「僕、こんなにドジな人初めて見た!でも、そこがかわいい!」
「か、かわいい!?・・・主様以外に言ってくれたのはチェリー様たちが初めてです。・・・えへへ、嬉しいです」
確かに、生活に支障が出るくらいのドジだけど。
一人で生きるのも、誰かと生きるのも大変な性質だけど。
それでも、私はドジなところがとっても可愛らしいと思う。
「モイラさん。きっと異世界からの旅人達にモテるよ!」
「へ、モ、モテる!?」
「うん!絶対!」
確かに。モテると思うな。
だって、黒髪メガネ。泣きぼくろ。メイドさん。機械。そして、ボンッ・キュッ・ボンッ!な体形。
私が虚しくなるだけだから見ないようにしてたけど、いい体してるよ。本当に。
あれ?なんかハナミズキ、モイラさんに近くない?
「モイラさんかわいいから、自信を持って?僕は、モイラさんが笑ったら素敵だと思うな!」
「ふええ・・・」
「モイラさん!?モイラさん!?お姉ちゃん、どうしよう!モイラさんが!モイラさんが!」
あ、モイラさんがダウンした。
ハナミズキの言葉に顔を真っ赤にして、倒れてしまった。
頭から湯気が出てる。
た、確かに。あんなに至近距離でかわいいなんて言われたら、照れちゃうかも。
あぁ。ハナミズキ、なんて恐ろしい子!
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。