ハートの女王
ばら撒かれたたくさんのお菓子。
甘くておいしそうなお菓子。
あまりの光景に思わず絶句する。
お菓子作るのってすごく手間がかかるし大変なんだぞ、わかってるのか、と首をがくがく揺らしたくなる。思わず声をあげそうになる私の口を、そっと押さえる手がある。
…カリンさん。ふるふると首を振って私を止める。まだ様子見しようってことかな。
そうだ。感情に任せて行動するのは良くない。落ち着け私。
「お前たちは悪い子ね」
「そ、そんな…」
「私たちはまだ!!」
「お黙り」
少女はぴしゃりと言い切る。
その言葉に体をびくつかせ、言葉を発していたトランプ兵たちは怯えたように少女を見る。
トランプ兵たちは少女を“女王様”と呼んだ。
白兎、帽子屋、トランプ兵。ここまできて不思議の国のアリスで女王様といったら、ハートの女王だよね。
彼女はきっと、この世界におけるハートの女王的な存在になるわけだ。そしてハートの女王と言ったら…
「あたしの言うことを聞かない悪い子はいらないの」
「ひ…!!」
少女が手をあげる。親指をぐっと突き立て首の前に持ってきて…。そう。まるで首を切るように、動かした。
「お前たち、もういらないから死んでよ」
わお、物騒。
にっこり笑顔で告げる言葉じゃないよ。表情と言葉が全く合ってない…。
いらないと言われたトランプ兵が少女の言葉に怯えて逃げ出す。
それを少女は笑顔で見届ける。どこからともなく赤い扇子を取り出し広げる。そして逃げたトランプ兵にあっという間に追いつき、
「バイバイ」
「ひ…!」
すぱっと、トランプ兵の首を切った。
まるでナイフで紙を切るようにすぱっと。
あの扇子、すごく切れ味がいいなぁ。そして無慈悲。一瞬だよ、一瞬。
「さて、次は誰…。ん…?」
あ。
ばちりと目が合う。
お互い固まって、何をするということもなくただ見つめ合う。
「おいお前ら、気づかれないうちに移動するぞ」
少女に聞こえないようにと、小さな声でガンテツさんが指示を出す。
相手がどんな力を持ってるかわからないし、余計な戦闘はしないほうがいいもんね。
でもねガンテツさん。
「ガンテツさん、ガンテツさん」
「んあ?なんだ、早く移動を…」
「あのね、あれ」
怪訝なガンテツさんの視線をわたしの指さす方へ導く。
それに釣られてカリンさんやハナミズキたちもそちらをみる。
「…」
大きな目をまんまるくした少女と目が合う。
うん。隠密作戦はどうやらここまでのようだ。うっかり目が合っちゃったんだよね!
まるで運命的だね!ごめんなさい!
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。
よろしくお願いします。
ちょっぴり短い…
でもキリがいいから…




