鐘の音
わらわらとトランプ兵が一か所に集まる。
数の有利を捨てた…だと!?
おもわず敵の動向を見守る。
集まったトランプはどんどん合体し、やがて一体のトランプ兵になった。
『どうだ!これが俺たちの必殺技、巨大トランプ兵だ!」
森の木々の背丈を優に超える身長。長い手足。
そして、ペラい身体!
大きくなってもぺらっぺら!弱点も変わってなさそうだね!
なんで大きくなったの…?
『俺たちは単体だと弱い!だけど、大きくなったら最強!』
…もしかしてこいつらバカなのかもしれない。
「えい」
【ファイアーボール】をぶつけてみる。
たやすく燃える巨体。
響く悲鳴。
『ギャー!!!』
うん。やっぱりお馬鹿さんたちだったか。
にっこりと笑ってしまう。
カリンさんがこちらを見て苦笑する。そんなに悪い顔してるかな。
ほっぺをむにむにしてみる。
「悪い顔してるね」
「そうかな」
「お姉ちゃん、見して」
「もうしてないもん!」
ハナミズキがのぞき込んでくるけど、もう悪い顔してないもん。
見ても意味ないもんね。
トランプ兵たちはなんでだー!?とか叫んでるけど、大きくなっても弱点は同じだし、なんなら大きくなったことで的が大きくて狙いやすくなってるのが原因だと思うな。
さあ、もう一撃加えようとしたタイミングで鐘がなる。教会の鐘の音みたいな。
「鐘…?」
「お城から聞こえるよ」
時間を知らせる鐘…かな。ちょうど三時だし。
一時間前にはなってなかったから、一定時間おきになってるのかな。
毎時間はならないけど、三時間おきになってるとかね。
『お茶会だ』
「え?」
『お茶会の時間だ』
燃えて騒いでいたはずのトランプ兵が急に騒ぐのをやめて呟く。
お茶会の時間?
それって、帽子屋のお茶会のことを指してるのかな。
『お茶会に遅れたら女王様がお怒りだ!』
そう言って、トランプ兵は巨大化を解いた。
急げ急げと走り出す。向かうは大きなお城。
ハートの女王の住まう城。
急げ急げ。急がないと、首を斬られるぞ。
遅刻をすると、女王様の機嫌を損ねるぞ。
またまた首を斬られるぞ。
そう歌うように話しながらトランプ兵はお城に向かっていった。
あっという間の出来事で惚けてしまっていた。
「…私たちも行こう!」
「おう!」
目を合わせうなずき合う。
行き先はもちろんハートの女王のお城。
さあ、行こう!
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。
よろしくお願いします。
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ちょっと短い。キリが良かったので…。




