大事なのは
「機嫌なおしてよ~」
「むう」
「ほっぺたぷくっとさせてないで、いくよ。そんな顔してもかわいいだけだから」
むうっとしながら、森の中で白兎を探す。見える限りにはいない。この辺にいた白兎は全部捕まえたかな。
ふと、顔を上げると視界の先が明るい。
「あ!もしかして、森を抜けるのかな!」
湖の周りはピンクの森。歩いても歩いてもそうだから、ここには森しかないのかと思ってしまうほど。光の方へ進んで、その先を見る。
「わ…ぁ…!!」
そこに広がった景色に思わず声を上げる。
一面に広がるカラフルな森。草原も見える。きらきらした川も流れている。点々と存在する建物。
そして遠目に見える大きなお城。
ここはいつものゲームとはまた違う世界なんだと実感する。
「すごいわね。森が虹色…。派手ね」
「うん…」
現実ではありえない光景にぼんやりしてしまう。
ピンクの森もたいがいだと思ってたけど、黄色とか紫色の森とか見ると口がぽっかりあいてしまう。正直言うと、紫の森は結構毒々しい。毒の森とかじゃないといいな。
ふわふわな雲も、ピンクでお菓子みたいな形をして浮かんでる。綿あめだったりしないかな。
「さすがに食べれないと思うよ」
「え」
「あ、お姉ちゃんいた!」
「お、こんなところにいたのかお前ら」
「合流できたね」
さらっと考えてたことをあてられてびっくりした。そんなに分かりやすいかな。
…みんなに心を読まれるからポーカーフェイスを身につけたい。ミステリアスな女の人になりたい。
まあ、そうこうしてるうちにハナミズキたちと合流した。みんな見える景色に息をのんでいた。ゲームの中とは思えないくらいすごいよね。
「さて、これからどうするかな」
「ヴァイスさん、これからって?」
「このあたりの白兎は大方捕まえただろう?きっと他のプレイヤーだって同じころだ」
「うん」
「これからの行動の選択はみんな同じ。新たなエリアに移動する。そこから取る行動は変わってくるだろうけど大体二つに分かれるはず」
「…まだ捕まってない白兎を捕まえるか、プレイヤーを襲うか、だね」
「そう」
今まではイベントの序章に過ぎなかったって事か。
これからがイベントの本番。プレイヤー同士で争っていかないとイベントの上位に入れないだろうし。
対人戦の経験は無に等しい…。足手まといにならないように最善を尽くすしかない。
「みんなはどこにいきたい?」
「う~ん」
「紫色の森とかはどうだ?」
「毒とかないといいけどね」
「ほう…?そういうハナミズキはどこがいいんだ?」
「黄色の森かな」
「結局森じゃねぇか」
みんなは森に行きたいのか。まあ、白兎なら森に居そうだよね。
森、森か。私は…。
「どうしたの、お姉ちゃん。そわそわして」
「あ、いや」
「チェリーはどこに行きたいんだ?」
「私は、その…お城がいいな」
お城、白兎がいるかどうかわからないけど、一目見た時から惹かれてやまない。
生きてるうちに、お城に行ってみたかったんだよね。日本のお城じゃなくて洋風のお城。
あんな立派なお城があるんだし、折角だから行ってみたい。
「お城かぁ」
「白兎がいるかどうかは分からないけど…」
「いいんじゃねぇか?」
「そうだね。お城に行くまでにどこかの森を経由すれば白兎も何匹かは捕まえれるだろ」
「…いいの?」
思いっきり私のわがままなのに、いいのかな。
寄り道のせいで、イベントの順位とか落ちるかもだし。それでギスギスして、この縁がなくなるのはいやだし…。
「当たり前だろ」
「もちろんいいに決まってるよ」
「お姉ちゃんは行きたいんでしょ」
「お城の冒険、楽しそうね!」
楽しそうにみんなが笑う。
ずっとうだうだ考えてたことがさらさらと消えていく感覚。
「あ、まさかチェリー。イベントの順位が下がるとか気にしてるのか?」
「え、順位自体はあんまり…。でも、順位のせいでギスギスするのがやだなぁって」
「なら大丈夫だろ」
「僕はあんまり気にしないからね」
「僕も!」
「大事なのは結果より過程。その経験が自分にどんな影響を与えたか。…チェリー」
「なぁに?」
「後悔しないようにするんでしょ?」
「…うん!」
「それに、イベントは楽しむものだよ!…さぁ、お城で冒険するぞー!」
「「「おー!!」」」
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。
よろしくお願いします。
6/11
なかなか難産。しかも会話文が多い。人が多くなって一気に会話すると…。改善していきます。
そして、更新空いてしまった…。
最近ずっと忙しいのと続きの肉付けがうまくいかないのです。気長にお待ちください。
あらすじと作者ページ変更しましたー!
 




