公式イベント
ストック終了です。
二話…( ^ω^)
「公式イベント?」
四月に入って、もうすぐ新学期が始まるという日の昼、突然告げられた言葉を思わず聞き返す。公式イベントって何?
「公式イベントは運営が主催でするイベントだな」
「へぇ。…ワールドクエストとは何が違うの?」
「ワールドクエストが物語の進行上、プレイヤー全体に発生するクエストでその結果が物語に影響してくるけど、公式イベントはアナザーストーリーみたいな感じかな」
「ふぅん」
もぐもぐとパスタを食べながら二人の話を聞く。パスタ美味しい。
仲直りしてからお兄ちゃんがお昼ご飯を作ってくれる。
パスタにレトルトのソースをかけたものがほとんど。…ちょっとお兄ちゃんの普段の食生活が心配になってくる。コンビニ弁当とか惣菜ばっかり食べてないよね?
ちなみに今日はお母さんはいない。お友達と遊んでくるわねって言ってた。
なので、私とお兄ちゃん、瑞樹の三人でお昼ご飯を食べてる。
「その公式イベントがどうしたの?」
「一緒に参加したくってな」
「そういえば前もなんか言ってたよね。…いいよ」
「良かった。後はお前だけだったからさ」
「え?」
「ヴァイスさんやガンテツたちはもう僕たちから誘ったんだ!あとはお姉ちゃんだけだったんだ」
そうだったのか。
でもそっか、またヴァイスさんたちと一緒にやれるのか。嬉しいな。
「公式イベントっていつなの?」
「明後日だな」
「もうすぐだね」
私が知らなかっただけで、ちょっと前から告知がされていたらしい。
情報感度が鈍すぎるな。お知らせはログインごとに確認する癖を付けないとな…。
「始まる前にパーティーを組んでおくぞ」
「なんで?」
「公式イベントでは人数が多いから、サーバーを分けるんだと。パーティーを組んでないとサーバーがばらばらに振り分けられることもあるからな」
そうなんだ…。
別行動が多いから一旦パーティーを解散させたんだよね。
フレンドチャットで会話できるし。困らないから。
いろんな人と野良で組んでみたり生産活動をしたりした。キャラの性能を使いこなせてる気はしないけど。
「お姉ちゃんは今、レベルどんな感じ?」
「えっとね。…これだよ」
携帯端末で見てみる。ゲームにログインはできないけどデータを見るくらいなら携帯端末でできる。便利だよね。
差し出した携帯端末を瑞樹がのぞき込む。
名前:チェリー
種族:大天使 女 Lv21
HP:3100
MP:1550
SP:20
相変わらずキャラ性能がえぐい…。
宝の持ち腐れとはこのこと。トップの人たちをちらっと見たことあるけど、あれは人間じゃないと思う。反射神経がえぐいし、挙動がすごかった。
SPはスキルを取るのにも、スキルのレベル上げにも使えるって知ったから上がりにくい≪鑑定≫とかに使ってみた。
「やっぱり大天使はすごいな」
「使いこなせてないけどね」
ヴァイスさんたちにキャラのことを伝えた。
凄く驚かれたけど、使いこなせてないのを伝えたら納得された。なんか納得いかない。
ちなみに種族のことを知ったガンテツさんが大興奮だった。興奮しすぎて強制ログアウトを食らってしばらく帰ってこなかった。
「ねえお姉ちゃん」
「うん?」
「お姉ちゃんの痛覚設定どうなってるの?!グロ設定は好みによるから置いとくけど、痛覚設定がリアル準拠!?え、100%?!」
お兄ちゃんも驚いて画面をのぞき込む。
そんなにおかしいことなのか。すごく痛いし、痛すぎてやってられないけど。魔法で治せるから何とも思ってなかった。MPには困ったことないから…。贅沢に魔法を使ってたんだよね。
「痛いでしょ?」
「すごく痛いよ」
「…なんでリアル準拠なの?」
「だって、あの世界の人たちと同じ感覚でいたいんだもん」
別にマゾとかそういうのじゃないけど、実感するの。この世界で生きているなって。
あの世界の人たちは痛覚設定なんてできない。100%の痛みを感じて生きてる。
だから私も同じ感覚で痛かった。痛みを共有できる気がしたから。
「お姉ちゃん…」
「でも下げようかな」
「いやそういう理由なら下げないほうが…」
「だってすっごく痛いんだもん」
「当たり前だろ…」
お兄ちゃんに何言ってんだって目で見られた。
大体、紙で指を切った時めっちゃ痛いって思うのに切られたり殴られたりしたら痛すぎるに決まってるじゃん。
「なんで下げないんだよ…」
「…忘れてた」
「はぁ?」
「後でやろう、後でやろうって後回しにしてたら、怪我することも少なくなってて頭から抜け落ちちゃった」
反省はしてる。
だからそんな残念なものを見るような目で私を見ないで…。
ちなみに、痛覚設定は50%に変更した。「めっちゃ痛い」から「凄く痛い」になった。
それに感動してたらまた残念なものを見る目で見られたけど気付かないふりをした。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。
よろしくお願いします。
気長にお待ち下さい。
あと、投稿してない間も読んでくださる方がいて、とてもうれしかったです。




