格別においしいパン
カリンさんと一緒に街ぶらりを再開する。
でも、さっきの重たい空気は変えられず、お互いに黙ったまま。
雄弁は銀沈黙は金っていうけど、この沈黙はちょっぴりつらいです。
穢れた闇、薄れたルナリス様への信仰心、それから「あんなこと」。
どれも初めて知る話で気になることばかりだった。
なんかどれもこれもにもやもやして、すっきりとしない。絡まってしまった糸がほどけないみたいだった。
「・・・」
「・・・えい」
「ふえあ!?」
考え込んでいたら、ふいに眉間をツンってされた。
顔を上げると、にししと笑うカリンさんがいた。
「難しいことばっかり考えずに楽しいことを考えよう?今はまだ情報が足りないから、何もわからない。それでいいんじゃない?」
「・・・そうですね!」
何も考えないのが、決して悪いわけではないよね。
それに、私たちはこの街に来たばかりなんだもん。知らないことが多くて当たり前だよ。
大事なことを見逃さずないようにすればいい。そのために情報収集もしていかないとね。
「おっと、もう日が暮れてきたね。そろそろ宿屋に戻ろうか。晩御飯食べ損ねちゃあいやだからね」
「はい!」
パチンとウインクするカリンさんに元気よく返事を返す。
宿屋に向かって歩きながら沢山食べ歩きした事の話をしたら、よく食べるねって驚かれてしまった。太らないからいいんですよぉと返しながらのんびり歩く。カリンさんとの話はとても楽しくて弾んだ。
ああ、平和だなあ。この時間がもっと続いてほしいなあ。そんなことを考えてたら宿屋についてしまった。
「女将さん、晩御飯二人分ください!」
「あいよ。あいてる席に座ってちょっと待っててくれよ」
宿屋に着くころには外は真っ暗になっていた。宿屋の食堂には仕事終わりの人たちが沢山いて、お酒を飲んでる人もいた。この世界で生きているんだなって感じる光景だなとなんとなく思った。
「晩御飯、楽しみだね」
「はい!とってもいい匂いがします!」
「良く入るね・・・」
「えへへ」
「はいよ!おまちどうさま!」
リライトなんちゃらのシチューらしい。
また覚えれなかった。なんでこう、ややこしい名前をしてるんだろう。しかも長い。
兎とか熊とかそういうのでいいじゃんって思ってしまう。いや、もしかしたら実物は兎なのかもしれないけど。
「おいしい!」
「パンもふわふわでおいしいです!」
「シチューに合うね」
「いくらでも食べられちゃいます」
一緒に来たパンをぺろりと食べきってしまった。それぐらい美味しいパンだった。
毎日でも食べたいくらいおいしい。これは絶対に飽きない。
お代わりしたい。でも、さすがにおかわりしちゃったらドン引きされそう。
「女将さん、パンのおかわりってできる?」
「できるよ。ちょっと待っててね」
お代わりするくらいカリンさんもこのパン気に入ったんだ。私とカリンさんの味覚が似てるってことか。美味しいを共感できるのって嬉しいよね。
「おかわり頼んじゃったけど、ちょっと多いかもしれないんだ」
「え?」
「良かったら半分こしない?」
「っ!します!」
もしかして気づいてたのかな。
私がパンをおかわりしたいって。・・・やっぱりカリンさんいい人だなあ。
好きの気持ちがどんどん大きくなってく。
カリンさんに出会えてよかった。
読んでいただきありがとうございます。
のんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。




