穢れた闇
しばらく街を歩いてみて思ったことは、なんか賑やか。
・・・なんか馬鹿っぽいな。でも本当にそう。多分、始まりの街より街の規模が大きいのだと思う。だから人が多く感じるんだろうね。それに、屋台のご飯も知らない料理がいっぱいある。街の特色みたいで面白い。串焼きとかでも味が全然違う。始まりの街が醤油系のたれなら、柑橘系のたれって感じ。さっぱりとして美味しい。
いろんなものを買い食いしながらぶらぶら歩いてみる。え?さっきお昼食べただろって?
この世界だといくら食べても太らないからいいんですぅ。
「おじさん、これください!」
「あいよ!お嬢ちゃん、うちのはうまいから覚悟しな~」
「楽しみです!」
串焼きをさらに買う。たれのしみ込んだお肉が焼けるいい匂い。たまりませんなぁ。
ふと見上げると大きな教会。ぶらぶら歩いていたら、いつの間にか教会まで来ていたようだ。この街でも教会は大きい。そして綺麗。でもなんか始まりの街とは少し違う気が・・・?気のせいかな。
「お嬢ちゃん、教会に用があるのかい?」
「いえ、綺麗だなあって」
「そうだろ?自慢の教会だ」
「始まりの街とは少し違う気がします」
「お嬢ちゃん、鋭いねえ。ほい、できたよ」
おじさんの説明によると、この街は他の女神様も信仰されてるけど、<太陽の女神>シャイン様への信仰が特に厚いんだそう。なので、シャイン様をモチーフにした神殿なんだそうだ。なので、始まりの街とは神殿のデザインが違うらしい。
「そうなんれふね」
「ああ。・・・うまいか?」
「おいしいです!・・・シャイン様への信仰があるなら、その双子のルナリス様の信仰も厚いんですか?」
「それは・・・」
「・・・?」
「おじさん、私にも串焼きちょうだい」
「お、おう」
言葉を詰まらせたおじさんに首をかしげていたら、後ろから注文が入る。
邪魔になってたかもと思って後ろを振り返ったら、綺麗なご尊顔が。
「カ、カリンさん!?」
「ふふ。こっちの世界で二日ぶり、かな?」
「どうして、ここに?」
「チェリーちゃんに会いたくて」
うわああ、カリンさんに私に会いたくてって言われちゃった。
今日はついてるなあ。美人なリティアさんと仲良くなれて、ラクトさんっていう美形さんにも出会えた。そして、綺麗なカリンさんにも会えた。最高かよ。
「ねえ、おじさん。さっきの話、私にも教えてほしいな」
「さっきの・・・?」
「ルナリス様のこと」
「・・・・分かったよ」
ルナリス様への信仰は昔は厚かったけれど、今はそうでもないとのこと。
なんでも、間違った認識が広がってしまったから信仰しない人が増えてきているのだそう。
「間違った認識?」
「・・・穢れた闇だよ。それがルナリス様に関連してるって思ってるやつが多い。そんなことはあるはずがないのに」
「穢れた闇って?」
「魔獣を狂暴化させたり、人体に悪影響を及ぼしたりするんだ。とにかくそれはいいもんじゃねえよ」
穢れた闇。
もしかして、聖霊様のも穢れた闇が関連していたのかな。だってあの黒い靄って体に悪そうだったし。そして穢れた闇は、ルナリス様の闇とは別物らしい。ルナリス様の闇はどちらかというと安らぎの闇って感じだしね。
「ただでさえ、ルナリス様への信仰が薄れてきてたのに。あんなことが起こってしまったからな」
「あんなこと?」
「それは・・・」
おじさんはそれ以上何も言わなかった。
これ以上聞いても何も答えてくれなさそうな気がした。
それはカリンさんも同じようだったようで、私たちはその場をあとにした。
なんかいろいろ気になるなあ。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。




