ノックから0.1秒で開くドア
ジリリリリ
「ふわあ・・・。朝?」
まぶしい。まだ眠いけど、起きなきゃ。眠たい目をこすって、目覚ましを止める。
ん~っと背伸びをするけど、あくびをしてしまう。
私、お布団の国の住民に戻りたいな。春の朝はまだ少し肌寒いからお布団に潜り込みたくなる。というか、私はいったいいつ寝たんだ・・・?記憶が朧げなんだけど。
えっと確か、そう。みんなで宿屋を取ったんだ。お金も時間もあるから一か月契約で。
前はみんなばらばらの宿屋だったけど、おんなじ宿に泊まれてうれしい。
もちろん部屋は違うけど、お泊り会してるみたいでドキドキする。
そのあと、各自部屋に入ってログアウトしたんだった。
ヘッドギアを外したとこまでは覚えてるんだけど・・・。これは多分すぐ寝たな。疲れてたし。ゲームの前にお風呂入っといて正解だった。
コンコン・・・ガチャ
「桜、起きてるか?」
「・・・起きてるけど、ノックしてすぐに入ってくるのやめてよね」
返事を待たずに入ってきたお兄ちゃんをじろりと睨む。ノックした意味ないじゃん。
私が着替えたらどうするんだ、まったく。
デリカシーがないんだから。
お兄ちゃんは私の睨みを受けてもへらへらしてるし。なんかむかつく。
「わりいわりい」
「・・・何か用なの?」
「朝ごはん作ったから、冷める前に食べさせようと思ってな」
「え、お兄ちゃんが作ったの?・・・大丈夫?」
「失礼な。一人暮らししてたんだからご飯くらい作れるからな!」
本当に食べれるものだといいな。
前に作ってくれたやつは、焦げ焦げですごく苦かったから。
お母さんもお父さんもいない日はお兄ちゃんがご飯を作ってくれた。
すごく苦くて食べれた物じゃなかったけど、手が傷だらけになりながら作ってくれたのが嬉しかった。だから頑張って食べた。でもやっぱり苦いご飯は嫌だったからお手伝いから料理を始めたんだっけ。失敗しながら頑張って作ったら美味しいって言ってくれるのが嬉しくて頑張ったなぁ。・・・まあ、お兄ちゃんはあの時以来家に帰ってきてないから、美味しく作れるようになった私の料理は食べてないんだけどね。
昔のことを思い出して、苦い気持ちになった。
「冷めないうちに食べんぞ」
「はいはい」
「ほら早く」
「・・・早くしてほしいのはこっちなんだけど」
「は?」
「お兄ちゃんがいたら着替えれないから早く出てってほしい」
「小さい頃は一緒にお風呂も入ったんだし気にすることなくね?」
「私は気にするの!早く出てけー!」
ぐだぐだ言うお兄ちゃんに枕を投げつける。
うぉっとお兄ちゃんは出ていった。
妹とはいえ、私は女の子なんだけど。例え、小さい頃に裸を見たことがあるとはいえ、もうすぐ高校生にもなるのに人前で着替えません。そんな破廉恥なことができるか!まったく、もう。
**
「おぉ・・・。見た目はすごくおいしそう」
「味も、おいしいからな」
「ほんとかな?」
朝ごはんはベーコンエッグとトースト。
見た目は焦げ焦げではない。まあ、ちょっとだけ焦げてるけど。
前に見た真っ黒なトーストではなく、一部が焦げたトースト。
これなら焦げをはがさなくても食べれるね。
「トーストってスイッチ入れるだけなのに、なんで焦げるんだろうな」
「温度と時間だよ・・・」
「どうやって調節するんだ?」
今までどうやってパンを焼いてたの、お兄ちゃん。
ちなみに味は苦くなかった。普通においしい朝ごはんだった。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、よろしくお願いします。温かく見守ってください。
 




