兄の帰省
目が覚めるといつもの天井。
ふああ、よく寝たあ。
春休みももう少し。こんなにゴロゴロできるのもあと少しなんだなあ。
しっかり堪能するぞ。
コンコン
「お姉ちゃん、起きてる?」
「瑞樹?起きてるよ」
「なら、下に降りれる?」
「うん・・・。あ、服着替えるからちょっと待って!」
「わかった。僕、先に降りてるよ~」
瑞樹が呼びに来るなんて、何かあったのかな?
急いで服を着替える。寝ぐせは・・・ないね。
変なところはないよね。
顔をパパっと洗ってリビングに向かう。
そこには
「げ・・・。お兄ちゃん」
「よう、久しぶりだな」
「なんで・・・」
なんでお兄ちゃんが帰ってきてるの?
お盆休みも正月休みも、仕事だからって帰ってこなかったくせに。
なんで、今更。
「しばらく会社休みなんだ」
「え」
「会社の創立100年記念だかなんだかで1週間休みになるんだ。それと、溜まってた有給休暇も消化しないといけないから、さらに10日くらいあるんだ。・・・せっかくだから、実家に帰ろうかなって」
まあ、お盆もお正月も帰ってこないんだから、有給休暇も溜まってるよね。
でも、三週間くらいもこの家にいるのか。
・・・どう接したらいいのか、わからない。
「そう、なんだ」
「もう、どうしてこんなに急なのかしら。こういうところはお父さんにそっくりねえ」
「ねえ、兄ちゃんは休みの間何するの?」
「そうだな・・・、ゲームかな」
「へえ、なんのゲーム?」
「それはだな・・・」
みんなが会話しているのに、入れない。
なんて声を掛けたらいいのかわからない。
どうして今まで帰ってこなかったの?どうしてあの時、あんなことを言ってたの?
どうして、何も言わずに出ていってしまったの?
頭の中がぐるぐる、ぐるぐる。
「なあ、桜。お前も・・・」
「私、部屋に戻ってるね。勉強しないと」
「あ、おい!」
お兄ちゃんが話しかけていたけど、無視して部屋に駆け込む。
せっかくパジャマから着替えたけど、布団の中に潜り込む。
お盆もお正月も帰ってこなかったのに。どうして今更帰ってくるの。
ずっとずっと私は・・・。お兄ちゃんに言いたいことがあったのに。謝りたかったのに。
家に帰ってきたら絶対言おうと思ってたのに。
いざ、お兄ちゃんの顔を見たら怖くて何も言えなかった。
絶対、怒ってるよね。
「はあ、どうしよう」
布団の中でぽつりと呟く。
こんなことしていたって意味はないのに。
お兄ちゃんに会うのが怖い。
布団の中でごろごろうじうじ考える。
お兄ちゃんが家にいる間、どうやってやり過ごそうか。
会わないようにはできないかな。同じ家の中だけど。
読んでいただきありがとうございます。
これからものんびり更新で頑張りますので、温かく見守ってください。よろしくお願いします。




