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BLUE・STORY  作者: 森田しょう
◆EPISODEⅢ ――穿たれた空と、終わりのない旅路――
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第五部⑰ ~それを僕は希う~


 彼は全ての審判を後世に委ねることにした。

 そのために、セレスティアルと天空都市群、星の遺産を封印することにしたのだ。


 星の遺産へ通じるための鍵――“三種の神器”を作成。

 レナの遺体を元素と分子に分け、元素のみを凝縮させたもの……“聖玉マナ”。

 皇室に伝わる家宝の一つ……“聖杯グラール”。

 かつて神聖イグドラ帝国が開発した、科学の結晶……“聖剣エクスカリバー”。


 聖玉マナを覚醒させるための鍵――十二のエレメンタル――“永遠の巫女計画”。

 かつてフェイウス卿により開発された元素を核としてサリアの肉体に埋め込む。

 エレメンタルは遺伝子情報と混ざり合い、彼女の血を受け継ぐことによってそのエレメンタルに覚醒するように仕組まれた。


 全ての計画を記した禁書をアムナリアに渡し、南の二大陸で生きるよう命令した。


 そして……ユリウスの遺体を使い、セレスティアルを強制的に制御し、本来のタイムリミットである約2000年後に設定した。それを“約束の刻”として後世に遺した。




「どこかで、また会えるわよね?」

「……わかりません。でも、生きていれば、もしかしたら……」

 アムナリアの言葉に、シリウスは苦笑した。

 アムナリアはシリウスの言葉に従い、禁書を持って南の大陸へ渡った。彼女を慕い、多くの天空人も付き従ったらしい。



「いつか、会えるんでしょ?」

「…………」

 地上で別れる間際、車いす上のサリアは問いかけるも、シリウスは何も言わなかった。というよりも、何も言えなかったのだ。

「必ず、会いに来て」

 サリアはシリウスの手を握りしめた。彼女の暖かさが、はっきりと伝わってくるのがわかる。

「いつまでも待ってる。ずっと、ずっと……」

「サリア……」

 花緑青色の瞳。何度も僕を立ち上がらせ、僕の背中を押してくれた彼女の声。溢れ出しそうな感情を押し殺し、シリウスは小さく微笑んだ。

「いつか、また会えるよ。一度は会いに行く。必ず」

 シリウスもまた、サリアの手を強く握りしめた。どうか、どうか――と祈るように。


「……約束だよ? 約束だからね……」


 サリアも溢れそうな想いを押し殺し、笑顔でそう言った。

「うん、わかったよ。約束する」

「絶対だからね。約束破ったら、承知しないから」

「……うん。大丈夫だよ。絶対に」

「……じゃあね、シリウス」

「うん。サリアも、元気で。バルザック、サリアを……頼んだよ」

「ああ」

「じゃあ……さようなら、シリウス。元気でね」

「サリアの方こそ」

「ありがとう、シリウス。それじゃ……バイバイ」


 サリアとバルザックが見えなくなるまで、シリウスは二人の背を見続けた。彼らが全く見えなくなったところで、空を仰ぎ見た。


 サリア。

 サリア……サリア。


 僕を本当の意味で助けてくれていたのは、君だったのに。

 君の気持ちに気付いていたのに、僕は何もできなかった。何もしようとしなかった。


 サリア、サリア。

 ごめん、ごめんなさい。


 君をたくさん傷付けた。

 僕に君の傍にいる資格なんて、ない。


 でも……それでも、希うよ。

 君が笑顔でいることを。たったそれだけを。



 シリウスは涙を拭い、前を見据えた。


 地上に捨てられた時と、同じ空の色だ――と思った。ああ、僕はもう一度歩みを始める。


 でも、それは逃げるための旅路だ。

 あらゆる現実から、目を背けるための。



 シリウスはジュリアスを抱き、歩みを始める。

 それは彼自身の贖罪でもあり、逃亡だった。











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