始まり
「ピーーッ!!!」
本郷選手ー!!ゴール!!!
日本追加点ーッ!!!
決めたのは 本郷 新
アシストは初招集、星宮 蒼だーっ!
「ピピピピピピピピピピ」
春の日差しが窓から注ぎ込まれてくる。
いつもとは少し違う朝。
「何だ。夢かぁ。」
でも僕は.........
「おはよう母さん!」
いつもは、起こしてもらってる。
でも今日からは自分で起きなきゃ。
4年も使ったランドセルが少し汚れてきた今日この頃。
もうすぐ学校の始業式が始まる。今日から5年生だ。
僕は、春休みにサッカーを始めた。
きっかけは何気ないこと、
友達の、大鳳 兜に誘われたから。
きっかけなんて、そんなものだ。
そして昨日、初めての試合があった。
初めて味わう感覚。
楽しい!楽しい!楽しい!サッカーって、楽しい!
初めて試合のグラウンドに立った感覚。
試合でボールをけった感触。
無我夢中で、ただサッカーをしたい!
そんな気持ちだった。
「キーンコーンカーンコーン」
学校が終わるチャイムの音は僕にとって
サッカーが始まる音
僕が住んでるのは北海道の田舎町。人口も少ないし、
子供の数も少なくなってきている。
僕が通ってるのは、ゆきんこサッカースクール。
北海道の地元クラブだ。
「あおー!!!サッカー行こ〜!!」
春休みも聞いた声。だけど、学校で聞く久々の声。
同じサッカースクールに通う同級生の北羽 白サッカースクール唯一の女の子だ。
まだ、少しだけ白い雪が道に残る春、空は雲ひとつない快晴。かろうじて雪がなくなってきたゆきんこサッカースクールのグラウンドに僕は立った。
よーし、
今日も練習だっ!!
いつも通り僕たちは練習に励んだ。
「おつかれさまでしたっ!!」
今日の練習があっという間に終わってしまった。
今日の大まかなメニューは個人課題で、
僕は、ドリブルとミドルシュートを念入りに練習した。
僕は身長が小さいが、すばしっこいのが取り柄なので
ドリブルや、足元のテクニックを磨いて、大きい相手でも通用するよう、がんばっている。
そして、MFの位置からのミドルシュートも期待していると犬橋監督にも言われたので、色んな角度からキーパーの頭上をこすようなシュートを練習している。
僕みたいにみんな自分の課題に一生懸命取り組んでる。
このチームは、6年生がキャプテンの
波澤奏也くん1人しかおらず、
僕達5年生が主体で試合に出ることになる。
だが、僕達5年生は中々強いメンバーが揃っているので
僕も負けてられない。絶対に試合に出て活躍するんだ!
「よーし!居残り練するやつ集まれー!!」
暮れゆく夕日の方向から奏也くんの声がした。
僕ももう一度気合いを入れ直し、居残り式の自主練へ向かう。
奏也くんにとって、次が最後の大会。
何がなんでも全道に行って、優勝したいと言うのが、
いつの間にか奏也くんの口癖になっていた。
奏也くんがこんなにも全道大会にこだわるのは訳がある。
それは僕がまだサッカースクールに入る前の試合。
ゆきんこサッカースクールは、地区予選を順調に勝ち進み
初の全道大会に進出した。だが、結果は1回戦負け。
奏也くんは、5年生ながらレギュラーとして活躍し、
勝利に貢献してきた。だが、全道大会初戦、
0ー0で後半を終了し、試合は延長戦に。
それでも決着はつかず、試合はPK戦へもつれ込んだ。
1ー0 1ー1 2ー1 2ー2 .........
両者譲らない戦い。
接戦の末、スコアは 6ー5 、次決めなければ負けてしまう。
そして、キッカーは波澤 奏也。
この初めての大舞台で、緊張する中、
「ピーッ!」
笛がなる。1歩、また1歩、ボールに足が向かう。
そして蹴る。
「カンッッ!」
ボールは高く上がり、バーに当たる。
外した。。。。
その夜、奏也は来年も全道大会に来て、リベンジする事を強く誓った。
僕はまだ奏也くんについて行くので精一杯だけど、
練習して練習してもっともっと上手くなって、
一緒に全道大会の舞台に立つんだ!
「よし、居残り練も終わりだ。今日はもう帰ろう!」
練習も終わり、帰り支度をして帰路につく。
明後日からは1泊2日の札幌遠征がある。
札幌のサッカーチームと練習試合だ。
大会に向けて、僕もVer. UP しないといけない。
「よし!頑張ろう!!」