予想外の事に追い付くのは難しい
目を潰されるのではないかというくらいの光が、室内に満ちた。
圧迫感を与えてくる風が止んだ。
目を開くと──魔女が光る帯に拘束されていた。
「お前は──」
辛うじて、という風に、魔女が声を発した。
魔女が、憎々しげに見ている方向がある。ドアの方だ。
セラが座り込んだまま見ると、ドア口には、誰かが立っていた。
白いローブを身につけ、今、白いフードが外れる。
「僕は、元は大魔法使いと呼ばれた者だ」
銀色の髪、深緑色の目をした青年だった。
その青年のみに目を奪われたが、彼の後ろには白い服装の者が何人もいるようだった。
彼らは、いや、今大魔法使いと言ったか?
「セラ、大丈夫か?」
「エリオス……あれ」
「うん」
エリオスが支えてくれるままに、セラは立ち上がりながらも見ている方から目が離せない。
『ぎりぎりで来やがったぁ』
足元を、ふわふわとした毛並みが撫でた。
猫だ。
やはり下にも視線は落とせないが、その状態で問う。
「ギル、あの人たち……」
『リンドワールの魔法使いだ。で、あの先頭に立ってる奴が、「リンドワールの大魔法使い」だ』
リンドワールの魔法使い。彼らが、来た。
突然現れた青年を凝視していると、綺麗な横顔をした青年がこちらに気がついた。
にこり、と微笑む。
そして、すぐに視線を戻す。
「魔女、アルヴィアーナよ、お前に『塔』への同行を命じる」
「──魔法使いたちが! 誰が行くものですか!」
「来てもらう。本来ならば、僕たちとてお前たちを何の理由もなく拘束したくはない」
「何を今更! これまでお前たちが、お前たち人間が、私たちにしてきた仕打ちを忘れたと言うの!?」
「ずっと昔のことは、昔の人間にと言いたい。少なくともここ二百年は、理由なくお前たちを取り締まることはしていない。──だが、今回お前たちが企んでいることはもう知っている」
青年は、細い腕を挙げた。
背後にいる者たちが、手にした杖のようなものを掲げた。杖の上部に埋め込まれている石が光る。
「ゆえに、同行を命じる」
魔女が再び反抗の口を開く暇はなかった。
光の帯が魔女の全身に巻き付き、ちらとも肌が見えず、衣服も見えないほどに塗りつぶした。
「魔女アルヴィアーナの捕縛を完了」
青年は、手を下ろした。
そして、今度こそこちらを見た。
「いきなりどたばた、家に侵入など申し訳ない。どうか、勝手な入国などについて申し開きさせていただけないだろうか?」
大層申し訳なさそうに、下手に、大魔法使いたる青年は申し出てきた。




