7話:肝試しは夏にすべき遊びですよ
「花音今日こそ俺とデートしてくれるかっ!?」
「無理です」
今日も絶賛、デートのお誘いを受けまくる。
俺が本当に女だったら、きっと嬉しいんだろうなぁ………
1週間前、俺はこの世界にやって来た。乙女ゲームのヒロイン“花音”になり、夢じゃないと分かった今、この世界を満喫することにした。
そして昨日この土地の端に行ってみたわけだが、どうやら見えない壁がありその先に進む事は出来なかった。
普通のゲームと一緒なんすね……
「花音~!」
聞き慣れたこの声…
「翔かっ!!」
そう言って振り返る。
「あったり~」
そんな声とともに俺に向かって突っ込んで来る。
バランスを崩し、後ろに倒れこんでしまった。上に乗っかった翔は隙あらばと、ある部分を触ってきた。
「ちょっ!どこ触ってんだ、このエロガキっ!」
突っ込んできて俺、いや花音のおっぱいを触ってきたのだ。
………まあ、人のこと言えねぇけど…
「はぁ、もー翔!僕のこと置いてかないでよ~」
「ごめんって!
………花音のおっぱい最高だった」
「……さ、触ったの!?」
「何赤くなってんだよ~翼!
そーだ!花音!今夜肝試ししようぜ!!」
あの双子達からの提案だった。
正直これに出たら確実に俺はまた一つ何かを失うだろう……
「ご、ごめん。私はちょっと……」
ダンという大きな音と共に弟・翼の足が道を塞ぐ。
「僕たち、君の事をわざわざ考えて作ったんだよ??
断るとか…あり得ないから」
えぇぇぇ!?
今、人変わったよね…!?
君のこと、ピュアホワイトだと思ってたんだけど!?
「はい……出ます………出させてください…」
「よかったぁ~!翔!花音もきてるって~!!」
そういえば、翼って二重人格だっけ…
裏の性格が出てこないよう努力せねば……
俺的にこの“ブラック翼”は無理だ…っ!!
「花音が出るなら俺も出るよ」
そう言ってやってきたのは早乙女先輩。
……何処からやってきた??
「えー、ストーカー先輩か~、翼どうする??」
「僕はどっちでもいいよ。
……この機会にストーカーをぶちのめす事も出来そうだから♪」
翔の問いに対して、笑顔で凄い事をいう翼。
先輩も時々家に出現するが単純な性格だし、それ以上に奴の方が面倒なのかもしれない。
「まあ、私は先輩がいても構わないよ。
ただ……
後ろから抱きつくなぁぁっ!!!」
先輩を投げ飛ばすと、壁にひびが入った。
「君は照れ屋さんなんだから」
そう言いながらむくりと起き上がる先輩。
何度投げても起き上がる先輩の姿を見て、俺はゾンビを思い出した。
………少しばかり背筋が凍った。
そして今夜肝試しをする事になったのだ。
この、11月のクッソ寒い中で。
「い、いつまで待たせる気だぁぁぁ……」
集合場所である旧校舎についてから1時間。
誰一人として来ない。
……クソ寒いです。
ていうかなんで俺だけこんな格好しなきゃいけないんだよ!
風邪引かせる気かっ!!
俺が着ているのは露出度の高いミニワンピ。
ブラック翼に言われ、奴の威圧感によって断れなかった訳だ(殺されるかと思った)
それにしても、これ胸出過ぎじゃね?
サイズなんかデカイし、パンツは見えそうだし、これ走ったりしたらはだけて胸は丸見え………
いや、むしろ
「それを狙ったのか?」
そんな時だった。
俺の携帯電話がシンとした旧校舎の前で鳴り響く。
「はい、もしもし。橘ですが」
電話をかけてきたのは翔だった。
『ごめん、今取り込んでて。1時間ぐらい待ってて~』
「え?」
マ、マジかよっ!!
こんな格好で1時間!?
どんな放置プレイだ!!
『まー花音頑張って~………プッ』
人を小馬鹿にしたような笑い声と共に電話が切れた。
……ぜってー計画的だろ。
もー帰ろうかな~
そんな事を考えていたら、後ろからガサッという音が聞こえる。
嘘!?本物の幽霊…!?
ヤバイ、ヤバイ!
何だっけ、悪霊退治の呪文!
ノーマクサマンダ………
人影が段々と近づいてきて、死を感じた瞬間、流石に男の俺でも涙目になっていた。
「あれ?花音もう来てたの?
……ってどうしたのっ!!」
心配して駆け寄って来る幽霊の正体。
その人影は先輩だった_____
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